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異世界子供を救う会

 あれから3日が立つ。

 それ以降、クライヴの動きも分からないが、イビト関連の話は全く入って来なくなった。

 ただその代わりに別の事件で学院は盛り上がる。

「えっ? あの歌舞伎町の近くで廃ビルの一室が襲撃されたって?」

「廃ビルってまだ動いてたって聞いたよ?」

「違うよ、ヤ○ザが薬取引してたらしくってヤ○ザ同士の争いが――」

 ネットニュースにもなってはいるが、近隣から廃ビルで騒ぐ声の苦情で警察が見回りした際に某現場を発見、争った形跡もある事から殺人事件として捜査中との事だ。

 しかし、内容はそれだけで、しかも歌舞伎町な為、余計に反社会の話で盛り上がっているのだろう。

 光喜的にはあまり関わる気も無いが、フィンは面倒な顔で呟いた。

「あー……やばいな、この辺東堂組や勝元組が争い中の立地だから騒ぐな暫く」

「やだ、意外な情報網が信用出来すぎて怖い!」

「おぉ怖がれ怖がれ」

 光喜の反応に笑うがフィンの目は笑っていない。

「なんかこれ、日にち的にオレ達が狭間のバーに居た時と同じなんじゃ……」

 フィンもそこは否定する気もない。

 更にはあそこの廃ビルにはある噂があった。

「多分なぁ、でもたまに一般人もちょくちょく入って来るって噂があった場所でもあって、前にあの辺通った時も丁度、子連れの親子が出て来たんだよ。で、管理会社にそれとなく連絡したけど、やっぱりあそこは使われていないしもうすぐ壊す予定でもあったんだ」

 それは暴力団や反社会的勢力が出入りしているとかはなく、一般の人間が出入り、しかもフィンが実際に見て管理会社にまで連絡をしているのだから、ほぼ事実だろう。

 ザフラが聞き耳を立てていたが、ずっと気になって輪に入って来た。

「どんな話をしているのだ? 我にも話せ」

 急に輪に入って来たザフラにフィンはスマホでネットニュースを見せながら経緯をも教える。

「んー? これ、この事件がほら俺らが狭間のバーに行った日かもしれない近場だったし、実際使われていない筈の廃ビルに一般人が出入りしてたって話だよ」

「……何人死んだんだ?」

 ザフラも対外だがフィンも対外でもう知らなくても人が生きていけるのだから一々言わないでほしい。

「そこ? 人数までは書いていないし、警察に知り合いなんて……いるかなぁ」

「やめろ! 知らないままでいたい!」

「冗談だよ、4課とか色々面倒だから」

 フィンが言ったのは多分捜査4課の事で主に暴力団が絡む事件捜査担当だ。

「でも、アミーナ辺りなら色々見てくれるぞ?」

 こちらが拒否をしてもいいのだろうが、きっと拒否してもすぐに皆が見たいと言って結果見る羽目になる。

 光喜は学んだ。

 何も言わない方が良いと――。


 部室、勉同の活動と言う名の集まりで、案の定この話になりアミーナは言った。

「良いですよ、やりましょう」

「ほらやっぱり! 結局こうなるんだ!」

 あの頃と違い、敵意もなければ仲が良くなっておりジャンヌはとても意気揚々だ。

「光喜は見たくないのか、ボクは見たい!」

「1番止めて欲しい人が率先してるし!」

 冬美也に至ってはこれ見よがしに悪い意味で面白がっている。

「気持ちは分かるが、一度突っ走られてどこで滑り落ちるか分からんから、どこまで滑り落ちるか見ものだな」

「冬美也が1番えげつない事言い出してるし!」

「とまぁ冗談はさておいて、実際ザフラ様も死体の件について気になっているようですので、軽くハッキング致しましたところ」

 アミーナがおもむろにノートパソコンをカバンから取り出し、まるで調理の途中から出来たてほやほやの料理を出してくる感覚で出てきた為、もうどう突っ込めばいいか分からないしハッキング時点でアウト過ぎて、光喜は心以外もう動かなくなってしまった。

『冗談通り越して犯罪に手を染めてらっしゃるわ、この人』

「今日は、光喜が突っ込み担当なのか、普段の突っ込み担当?」

 ジャンヌに言われ、最初突っ込んでやろうかと思ったが、今現在の光喜を見て返って冷静な冬美也は今回の件についてもあまり突っ込みたくもないし関わる気も起きない。

「オレ? 多分、関わりたくないだろな、オレだって正直関わりたくないし」

「いや気にしろ冬美也も」

 そうこうしている間にアミーナがノートパソコンから得た情報を開示する。

「死体の数体は2人、しかしそれ以上に暴れまわり、壁や床の状態の損傷も激しい場所も幾つか存在し、この様子だと連れ去りも視野に入れての調査出そうですが、どうやらパソコン機器もあるものの本体も酷い有り様で修復不可能だそうです」

 回りの様子や光喜の面白い行動を見て楽しんでいたフィンがある事部分に着目した。

「ねぇ、壁や床の損傷が激しいのって誰かが死んで、食われたって事じゃないの?」

「――!?」

「……一度、見てみれば分かるでしょうが、壊れていてはその中身までは」

「やはり知るに愛されし者の力とかあれば?」

「知る? 見るじゃなく?」

「見るは虫食いに食われていない部分だけ見れますが、知るの場合は虫食いが食べた部分の知りたい情報を見る事が可能です」

 それならその知るに愛されし者の管理者に会おうと提案するも、アミーナとジャンヌは無謀な考えだなと否定的だ。

「ならその人か、動物に」

「理美様でも不可能でしょうね」

「えっ?」

「知るに愛されし者は木だ、ボクも一度会ったがあれは巨木だぞ? 理美だって無理だ」

「オーノー!」

 光喜は近場から見れば可能だと踏んでいたのにこうももどかしさが残るとは、しかし意外な方からの情報が入った。

 丁度、管理者限定のloinグループに通知が入る。

「おっ、坂本さん経由から面白い情報が入ったぞ」

「何々? 画像だ」

「異世界子供を救う会? フィン知っているか?」

「……それで救えてるかって疑問のある団体だな」

「この意味の分からない団体って何?」

「なんて言えば、ぶっちゃけて要注意団体だな。異世界で保護した子供達を別の異世界で養子縁組を結ぶ団体だ。最近、ちょっと嫌な方法で裏技が開発されてからこの団体結構活発に動くようになったんだ」

「嫌な方法?」

「どんな方法で?」

「血液透析、血液を総入れ替えする事で異世界に馴染ませる」

 この瞬間、面倒だが確実に世界から目をくらますだけでなく異世界に馴染めさせるのが可能なのかと皆が驚く。

 アミーナと言えば、食われる心配が一気に減るどころかほぼゼロになるのかと聞けば、フィンも近い血液型であればほぼ可能らしいがこれにも異世界でも知っている者なら社会問題の1つを上げた。

「……なるほど、その様な方法なら、食われる心配が無いと?」

「そう、だから近い血液型ならほぼ可能だから、医療発展している世界なら血液透析が可能。でもこれさ、最近裏社会でも連れ去り、血液透析してから臓器売買とかする社会問題にすらならないから横行してるんだ」

 フィンを見れば、どんな方法でも金になるならなんだってやる連中がもっと幅を広げてどんどん悪化の一途を辿っているのが辛いのか、苦悩の表情だ。

 ジャンヌもこうなると、呆れてものが言えない顔でフィンをこちらに誘うも、即答で断られてしまう。

「人間はどこまでもどん欲だな、フィンもうこちらに来たらどうなんだ?」

「嫌だね、でもこればかりはねぇ。異世界に来てしまったイビトは人権が無いように言いながら、こうやって網目を搔い潜ってひどい奴も居る。下手するとイビトなんだから管理者なら目を瞑る野郎も中に居るせいで、特に10代前半のとりわけ幼い子供のイビトが最近増えてきている」

「……きっとあれのせいもあるな」

 あの異世界子供を救う会は子供を異世界でも生かす形で銘打って画期的なものとし、声を上げたか、噂だったのが検証し本当だった事から、そういうのが横行するようになったかは分からないが、なんとも皮肉なものだと感じた。

「俺もそれのせいは分かっている、で、出て来た所を管理者より先に捕まえて血液透析して臓器売買に使うってのも結構横行し始めていてる。とりあえず、話を戻すけど、一応この異世界子供を救う会には理念があって、ここに迷い込むイビトの幼い子供も含め不幸な子供を保護後、経済発展、世界の状況で子供の養子縁組を斡旋、他には理想に合う子供を保護している子供から探し出して養子縁組するんだ。勿論血液透析してからだけどね」

 ただ、血液をどうやって入手しているのかと考えると、やはり医療機関に潜伏しているのかとつい考えると冬美也が血液の重要性を伝える。

「だからって、輸血用の血を安易に渡す連中はアホだろ! 血液が無いと生きていけない子供達や今も必要とする人だっているのに、自分達のやっているのは欺瞞だと分かっていないのか!」

 フィンも勿論同意だ。

「俺も思うから、あんま話したくなかった」

 アミーナは色々含め、この関連に深く関わりそうな人物は誰かと考える中、ジャンヌはクライヴがその後どうなったかを知らない。

「と言う事は、大人のイビトも含め複数の人間が、不当にもここで活動しており」

「運悪く……そうか、クライヴはいつ居なくなった?」

 フィンは一と一緒に連れて行こうとして逃げられた事を告げると全て話が通る。

「一ちゃんと無理矢理店連れて行く途中で逃げられた」

「と言う事は、その後クライヴに襲われた可能性があると……あっちもそう思っているようだ」

 ジャンヌがスマホを覗けば、坂本から更に情報が入っており、クライヴがその周辺を歩いていたの事、更にはこのビルに入って行ったと言う情報により関わったのが濃厚だ。

「でも、ここの住人殺しちゃうのは……」

 普通に考えれば異常だろうが、過激派故に世界の秩序の為ならイビトを守ろうとする者も殺害するのは至極当然なのだろう。

 ジャンヌもクライヴを捕まえるにしてもあのぶち壊し方からして素手では不可能と判断され、そもそも逮捕すら出来ないのがはっきり言っての悩みだ。

「手を組んでいる或いは保護している連中も同罪とする奴だ。それにアイツ派手にぶちかますから、人間1人がやれる許容範囲を超えている分、犯人として捕まらん」

 こうなると異世界から連れてこられた子供達が心配になる。

 万が一それが名簿リストだとすれば、子供でも容赦しないのが明白だ。

 光喜としてはやはり壊れたパソコン本体から得られないだろうかと悩む。

「尚のこと危険じゃないか、データに何が入ってたのか知りたいなぁ」

 巨木の元へ運ぶにしても今は証拠として押収しているだろうからそもそも無理だろう。

 一切この話に入って来なかったザフラが急に入って来た。

 この期に及んでずっと父親であるカーミルと今までの話を教えていたようで、どういう訳か冬美也に触れるよう伝えてきたのだ。

「ずっと聞いていたが、父様に一通りの話を送ったからどうせなら、冬美也を連れて壊れたパソコン本体に触れさせれば良いんじゃないかと?」

 流石に意味が分からない。

「はっ?」

「冬美也にそんな能力が?」

 光喜の高鳴る期待を裏切るように、フィンがすぐに否定した。

「あー冬美也って体が金属系で変形出来るけど、中身は見れないぞ?」

 ジャンヌも知っているからこその加勢で、光喜が段々しょぼしょぼになっていく。

「そうそう、アイツそういう系なだけでそもそもそんな能力が無いぞ?」

「でも、父様は絶対に冬美也ならって」

 それでも押してくるカーミルは何なんだと冬美也ですら呆れた。

「しつこいな、相変わらず」

「と言うか、そもそも入れないからな警察署に」

「なくとも、科捜研ですよきっと」

 これ以上話も進まなくなり、今回はお開きとなった。

 

 それをバイト先で休憩中、卑弥呼に話すと意外な言葉が返って来たのだ。

「――と一連の話なんですが」

「ならさせればいいじゃない?」

 そもそも壊れたパソコン本体は押収されているのにまた同じことをと思っていたがどうやらそうでもない。

「無理でしょ? そもそも証拠品として押収してるだろうし」

「そうなんだけど、無くても何を見たかまでを見れば良いのよ。その場の過去を覗けば」

 過去を覗くこれ如何に、だが確かにそれさえ出来れば、一々パソコン本体にこだわる必要はないのだが、卑弥呼は見られるのかと言えば出来ないそうだ。

「出来れば良いですけど、光照先輩は出来るんですか?」

「出来ないけど、出来る奴なら冬美也」

 またしても冬美也を推しにどうしたものかと思っていたが、卑弥呼は見えていないのに、光喜が見ている筈と教えてくれる。

「謎の冬美也推し! でも皆否定してましたし本人も」

「でも、何かヒントとなる部位を見ているはずよあなたなら」

 最初そんな事を言われてもと思っていたが、そういえば一度だけ狩人の襲撃で疑似空間内をカーミル達と歩き、フロントまでの道のりが壊れ、通れないとなった時に急に冬美也の額を触れたのを思い出す。

「えぇ……あっカーミル国王、建物把握出来なかったのに、冬美也に触れたらいきなり道順覚えて皆と合流した」

「なら、本人見えてなくても、後はアミーナに見せれば良いのよ」

「てか、よく分かりましたね、それも占い? 言っていない筈なのに」

 卑弥呼はただ光喜の思考を読んだだけと言うが、それはそれで怖い。

「詰まっているっぽいし、助言なら出来るわよ。現場の過去は見られないけど、思考は読み取れるのよ」

「こわっ! でもありがとうございます」

「どういたしまして、怖くないからただの施行を読み取るだけだから」

 小鳥遊がそろそろ休憩は終わりだと言いに来て、この後で冬美也達に話そう、そう思いながら仕事に戻る。

 この後、冬美也と相談しようとloinではなく直接仕事が終わってから会いに行く事にした。

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