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ちょっとした騒動

 お開きとなったので、皆その場で解散だ。

「あー、酷い目にあった」

 光喜はあの後めちゃくちゃな目に遭ったが、なんとか日向に助けてもらえたので助かった。

 泣いてしまった当人も謝罪ししてくれたが、どうして泣けたのか理美も分からないままだ。

 きっと心の叫びに気付けたのだろう。

 光喜的にはただの経験した話をしただけで、まだ理美が救われた訳ではないと分かっている。

 同時に冬美也との関係が崩れないか心配で仕方がなかった。

 泣いていた本人はスッキリした顔で言う。

「結局、デリートはもう別の異世界に行くからって帰っちゃったし」

「ザフラとアミーナも危ないからって運転手を呼んでから帰ったしな」

 ザフラ達も坂本達も皆帰りは別々だ。

「アダム神父も本当は一緒に送り届けようとしたんだけど、酔っ払った坂本運ぶの大変だからって日向とジャンヌも一緒になって帰っちゃったしね、僕が送るから」

 大人代表でディダが光喜達を送る事になった。

 ただ冬美也は心配がある。

「でも、優紀は?」

 そこはちゃんとマルスに頼み、面倒をお願いしていると自信を持っていたが、別方向を見た時だ。

「大丈夫だよ、呼ばれた際、マルスに面倒みてもらってるか……ら?」

 視界に何かが入り目に止まった。

「ディダ?」

「何か居たんです?」

 光喜達が尋ねると、頭を振りながらもディダは答える。

「いや、昔の腐れ縁と言うべきか、何というべきが……いたんだよね、横切ってったんだよ今」

「流石に帰らないと」

 追いかける気はさらさらなく、ディダ的に会う気はない様だ。

「大丈夫だよ、もし本人でもこっちが困るし、シカトだシカト」

 こんなディダを見て、理美が珍しそうに言う。

「珍しいディダがこの調子なの」

「そうなの? 最初の頃はマジやばい人だったから分からない」

 光喜からすると、最初に出会った時の印象が強すぎた為、未だにやばい人扱いに冬美也は吹き出し、理美も第一印象がこれだった。

「ぶふっ……! オレ達は普段昼行燈な感じだったからあまり気にしてなかったな」

「そうだね、最初会った頃は四六時中グラサン掛けた怪しい人だったし」

 意外と皆の第一印象が絶妙に合った感じに、笑ってしまうが、当人は嬉しくない話に怒る。

「聞こえてるよ!」

 そう言いながらも、警察に見られたら間違いなくディダの方が職質受けそうで、早く裏路地の歌舞伎町から抜ける所で、今度は光喜の方が足を止めてしまう。

「今度は光喜か?」

「い、いや、今マルスと優紀君が見えた」

「はっ⁉︎」

 流石の冬美也も足が止まった。

 ディダは機械音痴な為、基本的には他任せな部分がある。

 今回もアダムが連絡を入れる際はマルスに、マルスに連絡をお願いする際には冬美也にしてもらっていた。

「僕は、スマホ使えないし、あの時帰る連絡をお願いした時家に居るって……?」

「オレも連絡した時にそう言ってたが?」

「でもさ、loinだから嘘つきやすいよね。ここはloinと同時に電話鳴らしちゃおうよ」

 理美の案で冬美也がloinで再度連絡を入れると同時に理美がマルスのスマホに電話を入れる。

 loinはすぐに来たが、電話になかなか出てくれない。

「これ、黒だね」

「だな」

 光喜としては優紀を放って置けないが、理美も中等部、このままにしては不味いだろう。

「今日はたまたま休みだったから良いけど、理美ちゃんは帰さないと」

 一度戻してからにと冬美也が言う前に、理美がそそくさ動き、目がキラキラしていた。

「いや、これは行ってみよう」

「好奇心が勝った猫!」


「で、お前がこっち方面に行ったって言うが、完璧にやばいエリアだココ!」

 冬美也の言う通り、ホスト、ホステスの何でもある繁華街に来てしまい、客引きまで存在する大人ではない子供が来ては行けない場所だ。

「でもさ、本当に優紀君だったの? マルスだけとか?」

「いや、マルスだけなら分かるけど、明らかに子供が優紀君の容姿だったから間違いないよ」

「なんでマルスが? それなら優紀を残して――」

 そうマルスに用事が出来ればこちらに連絡を残してくれれば、すぐに帰るのにどうしてそうしないと疑問になる冬美也に対し、言い方が不味かったと改めてきちんと説明した。

「逆、優紀君が走っていてマルスが追いかけてた感じ」

 生返事に近い、えっの声を出し、とりあえず再度今度はマルスだけでなく、優紀にも同時に連絡を始める。

「一度優紀に連絡する」

「なら、私マルスにしてみる」

 また連絡しようとする2人にディダが辺りを見渡せば、パトロール中の警察が歩いているのが見えた。

「遊ばないの、やばいなんか奥から警察が……」

 これは怒られるなと確信した時だ。

「光喜、あっちにフィンが居た、行くぞ」

「わぁ! 待って!」

 結局、ニュートンに連れられビル群の隙間へと行けば、フィンと優紀とマルスも居たのは良かったが、他にも強面の男性達も居て息が止まる。

 これは終わったと光喜は絶望するも、フィンがその他に話をしてこちらに向かって言う。

「丁度いい処に! 社長、優紀連れて帰ってくれる? 近くに神父いるでしょ?」

「いるけど、多分職質に捕まった可能性があるんで行きとうないです」

 そんな話をしていると、赤毛の男性が1人こっちにやって来た。

「何、アイツもいんの?」

「いるよ、でも職質に捕まった可能性もあるし、学院で騒動されても……」

 本当なら皆ここに来ていてもおかしくなければ、下手すれば警察もここに来てもおかしくない。

 しかし、意外と元気な声が聞こえ、皆驚いた。

「何が?」

「うぉう! 嬢ちゃん誰?」

 赤毛の男性は理美を見て驚く中、他にもちゃんと無事にこちらに来ているのでホッとしたがどうやって職質から逃げたのだろうかと驚いてしまう。

「良かった無事で!」

 勿論マルスも驚き、こっちに来た。

「理美ちゃん、冬美也君に、神父も居たの!?」

「居たのじゃないよ。マルスと優紀君、どうしてここに?」

 ディダはかなり低い声で怒りを抑えているのが自分達でも分かる位だ。

 ただ赤毛の男性はディダに自分達を帰すよう促すも、ディダは知り合いだと分かって眉間に皺を寄せた。

「それそっちの言い分、子供らは一旦帰らせろディダ」

「げぇぇぇ!」

「凄い、いやな顔してる……!」

 光喜も冬美也も色々な表情をするディダに冷静に驚いていると、赤毛の男性がこれは知らないかと笑って、自己紹介を始める。

「自分、マルスの父、エブラです、よろし――!」

 が、息子マルスにぶん殴られてしまった。

「よろしくすんな! くそ親父」

 ここまでなると、光喜も戸惑うが冬美也と優紀は物凄くなんか分かると真顔でマルスの気持ちを察していた。

「それよりも! あんたらの知り合いが暴れたせいで!」

 フィンが話を戻している内容が、そのエブラの知り合いらしく、その為に集まっていたようだ。

 エブラも理解した上で自身の身内であることを明かす。

「分かってる分かってる! あれは俺の兄貴」

 今度は顔を青ざめさせる程、今日のディダは本当に様々な表情を見せてくれる。

「どっち!?」

「安心しろ次男の方だ。まさか暴れるなんて思いもしなかったし、理由がなんだっけ?」

「主人を蔑ろにしたとかなんとか、弁償して貰うからな。出来なきゃその主人って奴に――」

 話を聞いていて、何か矛盾を感じる。

 そのエブラの兄に当たる次男が暴れた理由だ。

「あの、まだ話が見えないんだけど?」

「んっ? 今情報収集の為に店やってんだけど、その坊主の店がビル内一緒で、騒ぎが聞こえたから見に行ったら、ドゥラの兄貴がぼっこぼこにしてんの」

「なるほどで――」

「じゃぁなんで優紀がここにいる?」

 まさにそこだ。

 しかも明らかに優紀が先に走っていたのを見ているこちらからすると、もうこの辺で大体見当がついてしまっている。

「……この人、ぼくの知り合いで連絡あったので迎えに来ました」

 全員、納得ともうどうしようもない表情へと変貌していった。

 そして一体どんな内容で蔑ろにしたのか知りたい冬美也はフィンに尋ねるも、流石に明け渡す事は不可能だ。

「すまん、理解した。でどんな客?」

「ごめーん、お前に明け渡すと総一さんに直行するからちょっとそこは俺が聞くんで、君らは帰って、後エブラさん」

「分かってる、今回は俺が出すし、暫く払った金額の弁償代をドゥラの兄貴に支払わせる」

 結局、それで話が纏まり、子供に支払いを求める気は毛頭なかった。

 最後に残った疑問を光喜は聞く。

「で、どうやって職質を?」

「〇ッタスマイル役に立つよね!」

 理美が言っているのは、きっとそれは緩い聖人達のギャグ漫画の話だ。

 ニュートンもその辺で力を使って難を逃れたのだろうと察した。

「あぁ、全ての生き物に愛されし者はこういうのに便利だよなぁ」

 話も纏まったので、とりあえず帰ったら優紀は説教という話で終わり、皆、帰ることになった。

 

 帰り道、ようやく住宅街へと入り、一々職質も受けないような場所へと移って皆ホッとしたがどうしてドゥラに会わず帰ってしまったのかと思ったが、優紀が早々に答えてくれた。

「ドゥラって人どんな人か会いたかったけど、会わなくて良かったの?」

「……あんな性格の奴会わせたら、余計拗れるから無理! 本当は放置する気だったけど、にいちゃんの友達のやってる店壊したって聞いて、これもうやばいから一度会いに行くしかないってなって飛び出したんだ、マルスさんには悪いことしたのは分かってるけど、会わせたくなかった……!」

 優紀としては迎えに行くのも嫌だったろう、相当な苦渋の決断で向かったようだ。

 その話を聞いたディダはとても納得していた。

『物凄く分かる』

「でも、俺も帰らせたんだろ? 父さん」

 マルスの疑問はディダでも分かってしまうし、優紀も分かっていた。

『あっちも会わせたくなかったんだろうなぁ』

「あの人凄く面倒くさいから」

 光喜でもどうやって出会ったのか疑問に思っているのを冬美也が聞いてくれたが、またしても修羅場がやって来てしまう。

「処で、どうやって会ったんだそのドゥラって奴に? しかも主人って言わせるって?」

「アイツが勝手に言ってるんだよ! にいちゃんが日本に留学してすぐに会ったんだよ、肝試しと評してぼくは学校に放置され――あっやべ!」

 真っ当な出会い方をしていない、それだけはこちらでも理解し、冬美也に至っては殺意が溢れ出て、引いてしまうほどだ。

「おい、置いていった奴全員名前を言え、社会的にぶっ殺してやる!」

 理美はそんな冬美也を見て笑っているだけで、加勢も宥めもしない。

 下手に入ると後々面倒なのが今の自分でも分かる。

 それでも光喜としては知り合いのエブラだったからってシカトに入るのは分かるが、こうなるなら会えばよかったのにと言うと、意外な言葉に光喜を驚かせた。

「エブラさんなら、ディダ神父もこうなる前に会えばよかったのに」

「ううん、エブラなら無視なんてしないよ、殴りには行くけど」

「殴るんだ、じゃあ誰を?」

「彼の方に迷惑掛けたくないから、僕から無視を決め込んだんだけど、確かアイツからは死んだって聞いてたんだ」

「死んだ?」

 死んだ人間が歩いている、それはイビトなのかも分からないまま家路へと入る。


 その頃、一方では――。

 クライヴがある廃屋ビルで暴れまわる。

 やられた人間達はもう息もしていない。

 しかし、1人だけ息をなんとかしているのがいた。

 その1人の喉を掴み上げ問い質す。

「何故、イビトを招き入れる? あいつらはいずれ破壊する可能性もあるのにだ?」

「わ、我々は不幸に遭った子供達を幸せにする為の慈善団体だ! 異世界でもこの世界でも平等――!」

「お前らはただ世界の秩序を壊す、愚かな集団だ!」

 クライヴがその1人に止めを刺す。

 同時に、セッシャーがその組織が使っているパソコンに触り、調べている。

「あったよ、イビトのリストが」

 その中には例の子供が混じっていた。


 繁華街ではそんな状態なんて分からない。

 まして高々それだけの事に誰も気になんて留めないのだ。

 勿論、1つのビル屋上にフレアが佇んでいる事にも――。

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