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始業式

 夏休み最後の日、夕方にフィンが戻って来た。

「いやぁ本当にごめんな、社長」

「だから社長って何?」

 戻って早々、フィンと冬美也達が光喜の部屋に集まっている。

 冬美也は仕事で一体何処にいたのか問いただすと意外な言葉に口が辛くなった。

「で、お前は一体何処に行ってたんだお前は」

「異世界でお仕事してました」

「そのまま管理者にやられてろ」

「酷い! 冬美也酷いわ! 社長!」

 光喜もフィンに辛い。

「俺もお灸吸われておけばよかったのに」

「酷い社長! 私と一晩共にしたのは遊びだったの!」

「自分で言ってて虚しくないかフィン」

 止め刺されて、もう切り替えに入るフィンだが、1番気になる事を口にした。

「とまぁ、この位にして、衣鶴さんは帰って、総一さんはいつもの単身赴任用のマンションに帰ったのは分かる、分かるんだけど、どうして優紀君がいる?」

 そうなのだ、優紀がまだいるのだ。

 優紀は嫌そうな顔で理由を話す。

「……学校が嫌だ、ビザギリギリまでいる」

 アメリカの州にもよるが、まだ1週間はあるだろうに最初から行きたがっていない。

 フィンも冬美也みたいな天才とまで行かないが、器用な方だと思っていたが、どうやらいざこざが起きたようで、家にも帰りたくないと言った感じだ。

「カーストで言えば優紀なら上位だと思うんだけど?」

「アジア系を馬鹿にする連中が一気に増えるし、中国系とも揉めて居場所無い」

 流石に冬美也も弟の心情を考えるとやはり帰すに帰せない。

 しかも父、総一も必ず毎日居るわけもなく、冬美也ならバイトがあっても戻って来れるともあり、住みたいと頼まれた流れで預かる事になった。

「との事だ、暫くはオレの住んでいるマンションで暮らしたいって言ってて……親父もずっとは居れないから」

 昔の話だろうフィンが茶化しツッコミを入れる。

「ここは翼園じゃないわ」

「ディダも遊び来てもらうからそれで」

 結局、ディダに頼むのかとフィンも呆れていた。

 冬美也から聞いた話だとディダとマルスは、昔児童養護施設で働いており、現在は後輩が引き継ぎエクソシストとして働いている。

 今はケガも治っているが暫く療養するよう言い渡されているらしく、暫く暇でマルスは暇な時にアルバイトをしているらしいが、経済的に大丈夫なのだろうかと心配してしまう。

 それを思い出しながら、そういえばビザは最大何日かを光喜はネットでビザは何日までか検索し、大雑把に逆算して言う。

「後、大体80日位か?」

 2ヶ月半いるのかと思っていたが、優紀は絶対帰りたくない意思が強く、再度戻って来る気だ。

「一度戻ってまた来る」

「ウチはそこまで金持ちじゃないぞ、優紀」

「でも、家の近くにそいつら住んでてたまに嫌がらせしてくるから……母さんが知り合いに頼むからって言うけど、警察じゃないんだからさ」

「あー、家に居ても近くを彷徨かれて迷惑してたのね」

 フィンも優紀が近所迷惑になってしまっている為、アメリカに帰りたくない理由を諭し、今はゆっくり休ませた方が良いと感じる程だ。

 かなり逼迫している気がした。

「でも、精神が安定しない時に無理な事をしたら危ないし、暫くはゆっくりさせたら?」

「そのつもりだ、なんなら白澤先生――」

「あそこ、なんかざわざわ動いていてヤダ」

「やっぱりあそこってなんかいる所なんだ」

 冬美也はすかさずフォローするがフォローになっていない。

「いなくはない!」

「それ、俺からしてもどっちよ?」

 その後は面倒だからと結局晩御飯を買って食べ、皆解散した。


 次の日――。

 朝早く起きたせいか、大分眠いが、学院の始業式だ。

 久々の私立聖十字架学院高等部の夏の制服に腕を通す。

 準備を済ませ、外を出ると隣はやけに賑やかで、案の定今起きて大騒ぎ。

「だからなんでスマホの充電してないんだよ!」

「そっちこそ、スマホ電源落とすなよ!」

「良いから早く学校行かないと遅刻だよ!」

「お、おう」

「もう行くから、今日神父来るから外1人で出歩くなよ」

「分かってるよ、いってらっしゃい」

 なんか、本当に仲良い兄弟だなと思いながら、さっさと行こうとして捕まりました。

「行くな! 一緒に地獄に行こうぜ!」

「えー絶対嫌だ!」

「オレら飯食いそびれた」

「その前に制服直せよ!」

 素晴らしい位には酷い有り様と答えよう。


「まぁ、久しいな光喜、冬美也、フィン、とりあえず、ギリギリだぞ」

 教室で小説を読んでいたザフラが涼しげに言った。

「はぁはぁ! コイツらに捕まって死にかけた!」

「いや、おま、さすが、元陸上部……!」

「腹、脇腹、くっそ痛い!」

 合宿でもだったが、光喜は今でもランニングを続けている上、体に走るコツを持っているのだろう。

 追いつくのが非常に辛い。

 ザフラは笑いながら、ここの学院の年間日程を取り出し、こんな話をする。

「そういえば、ここ、長距離マラソン大会あるそうだが?」

 光喜、冬美也、フィン、顔を合わせて皆言っていることはバラバラなのに内容は一緒だ。

「出たくない!」

「その日に休む!」

「俺もパス!」

「いや全員休もうとするな」


 始業式、体育館で校長の話を聞きながらも眠たそうな顔で必死に聞くが、もうフィンに至ってはそのまま眠っている。

 まぁ、ここは座って聞くスタイルなので非常に有難いと言えば有難い。

 軽く中学時代に立ったままの全体朝礼で何人倒れても、文化だと言い張り続けて校長代わるまで続いたなと思い出す。

 長い始業式、漸く終わったと皆、バラバラな整列で教室へと帰って行く。

「夏休み、仕事で全て潰れた……」

「何言ってんだよ、俺の親戚家に居たくせに」

 光喜がフィンに言っていると、ザフラが夏休み何をしていたかを話す。

「お前達はずっと仕事だったんだろ? こっちは、絵画展後はずっと母国に居たが、なんか進展などあったか?」

「オレは……特に無しだ」

「おい、なんで暗くなるんだ?」

「察してあげて下さい」

 どうして光喜がそういうのか分からないが、とりあえず前にloinで過激派の矛ではという話の後、アミーナがわざわざ調べてくれたのを教えた。

「そうだ、loinで過激派が最近イビト狩りしている話。アミーナが一度その矛の過激派について調べてくれたんだが」

「クライヴだろ? 本人直々に俺の前に来た」

 すでに会っていたのかと一瞬笑ってしまうが、これはもうこの辺にいるのは確実かとザフラは考え教えられるものを教えていく。

「そう、もう会ったのかなら話が早い、力に愛されし者でアースがセッシャー」

「他には?」

「昔何度かアダム達とやり合って最終的に番人デリート達に殴れて死んだ。どっかの地中に埋めたらしいが最近ここに戻って来たって所だな」

「地中に埋められても復活って、ゾンビかよ……いや、ゾンビ?」

「光喜が自信なくすと、アミーナ達も落ち込むからやめろ」

「いや、ごめん、ついね」

「で、実は色々調べていく内にその昔に守られたイビトがこの近くに住んでいるそうだ」

「住んでいるの?」

 少しだけ興味が沸いた時、冬美也がいやそうにその名を言った。

「……嘉村(かむら)真理(まり)だろ?」

「そうだな、お前ならその名前位出来てもおかしくはない」

 ザフラも分かっていてその名前を伏せていたが、冬美也ならすぐに分かっていても驚きもしないが、光喜がからすれば確かに同じ苗字だから困惑してしまったのだろう。

「嘉村って、確か?」

 これは言っていいのか分からないが、もう半分は喋ってしまっているようなもので、冬美也は渋々説明した。

「嘉村って苗字は一緒だが、理美は嘉村は嘉村でも、別の家に養子縁組に入ったんだ」

 フィンも輪に入るも、最後の方で光喜とザフラが引いてしまう。

「理美ちゃんって、あの後ほら、嘉村グループの嘉村友吉の養子として迎えられたって俺あっちに入ってから聞いて驚いたよ」

 その微妙な空気に対し、冬美也とフィンが棒読みで話し合い始め、なんかどうでも良くなってきてしまった。

「そうだよなー、こっちは本気で心配してたのになー」

「ごめんなー、こっちにも野望があってなー」

 ここで教室にたどり着く。

 あまり興味はなかったが、授業を一時限毎受けていると段々何か違和感を感じる。

 ずっと頭に巡る何かに必死に答えを見出す。

 そして確認しなくては行けない、いや、これは不味いのではと気が付き、どんどん光喜の顔色が青ざめていった。

 ホームルームが終わった直後、冬美也だけ捕まえて廊下へと走っていく。


 人気の無い、物置場所となった階段下、そこでありったけの声で光喜は冬美也に問う。

「普通に聞き流しちゃったけど!」

「あっ、うん、そうだよな、お前が1番正しい反応だ」

「どどどど……!」

「どういう意味と言われてもなぁ……」

 ジャンヌとアミーナがわざわざ探しに来てくれたが、正直な話、冬美也とだけ話し合いたい。

「いたいた、どうしたんだお前らと言うか、光喜どうした?」

「ザフラ様から冬美也を連れてどっか行ったって聞いて探させていただきました」

 こんな人気のない場所、アミーナの愛されし者の力なら見つけられて当然だろう。

 酷く困り果てた顔の光喜をよそに、冬美也がジャンヌとアミーナに言った。

「オレがミスって喋ってしまった、理美の実母の秘密」

「あー、すいません、ザフラ様に口滑らせたせいで」

 なるほどと、ジャンヌは納得し昔の話は聞いた位であまり知らないので、ここらで改めて話を聞こうと場所を提案した。

「生前の自分は故郷に居たから知らんが、かなり騒いだらしいし、よしっ! 久々に狭間のバーにでも行くか!」

「まぁ、あそこなら思う存分話しても時間は大丈夫ですしね」

「俺は冬美也に!」

「分かった、分かったから落ち着け」

「ついでだ、皆呼んで作戦会議と洒落込もうか!」

 光喜をよそに、勝手気ままに決まってしまう。

 

「で、来たは良いけど、ここは普通の人来ちゃダメなんじゃ?」

 ここら歌舞伎町の裏路地、表路地は賑やかに対して静かでゴミも散乱、よく見ると何人か動かず蹲っている。

 なんか他のと雰囲気が違い過ぎて怖い。

 今回は光喜、冬美也、ジャンヌにアミーナそして珍しくザフラも一緒だ。

 アミーナは一切気にしてないので逆に頼もしくもある。

「いやぁ、GPSで場所送られて来たのここです」

「だからって、また今度で――」

「お前が寝れるのは夜だけ体質なら別段問題ない」

 冬美也に言われて大人しく突き進んでいると、いきなりフィンが話しかけきた。

「何やってんのお前ら?」

「うぉう! なんだよ、フィンかよ」

 フィンだけ別行動だった為、知らなかったようだが、服装が黒のスーツを着込んでてなんか怖い。

「なんだよってこれから仕事だから着替えて仕事場に向かう途中、でお前らは?」

 ジャンヌは本当に怖いものがないのか、普通に答えると、なんだかんだフィンも一緒に狭間のバーに行く事になりそうだ。

「皆と久々に狭間のバーで飲み会だ!」

「未成年が酒飲むな、それなら俺も行く軽く連絡入れるわ」

 連絡してすぐに張り切っているようで、大丈夫なのか聞けばそうでもなかった。

「行けそうなの?」

「なんか怒ってるけど、とりあえずそのまま切っといた!」

『それめっちゃダメなやつ!』

 光喜が心の叫びなんて誰も気付くはずも、いや分かっていて放置しする。

 特にジャンヌとアミーナは場所が今一分からないので、この近辺に詳しいだろうフィンに尋ねた。

「フィン、この辺だと思うんだけど、どうだ? あっているか?」

「そこ? またけったいな場所選んだなぁキャシーさんは、てかアミーナ先輩力使えば?」

 どうして使わないのかと思っていたが、アミーナの目配せとその口ぶりで既に何者かがついてきているのだ。

「確かに使おうと思えば使えますが、何分誰が見ているか分かりませんので」

「……なるほど、理解した、こっちだよ」

 フィンの様子と一瞬だけ男の姿が見えたので光喜が小声で聞くとフィンはあまりいいものではないのを伝える。

「あれ何?」

「今日、ザフラもついて来てるでしょ?」

「そうだけどどうして? ボディーガード?」

「それならそこまで気にしないよ、人数もあるし、そのまままっすぐ行って、キャシーさんに話してちょっと移動願いしてみよう」

「可能なの?」

「多分、不可能ではない、結構あっちこっち店出してるから」

 そう言って、フィンに合わせて、皆一斉に走り出す。

 古びたビルの狭い隙間に皆一列に入り、奥に行くとようやく狭間のバーが見えた。

 勢いよく流れるように入ろうとした瞬間、急に扉が開き誰かが吹っ飛んできたのだ。

 慌てて皆屈むと後ろから追ってきた男にぶつかった。

 店から出てきたのは、キャサリンもとい山田五郎だ。

「二度と来るんじゃない、来たときは海の底にいると思え」

 皆、そろそろと店に行くと同時にジャンヌが尋ねると怒った声でキャサリンは言った。

「山田五郎だ! どうした?」

「ちょっと聞いて! アイツら酷いのよ! ここの店を侮辱するわ、時間軸を世界に合わせろとか! まずは中に入って、皆来てるから」

 促されると、皆、騒然としたまま動かず固まっているではないか。

 よく見れば、誰かを取り押さえたまま動かないディダの姿まであった。

「何があったんです?」

「不届き者、多分そこにいるお嬢様をご誘拐する気だったんだよ、時間設定弄ったのに理美ちゃんが気付いて止めようとした時に丁度キャサリンさんが他の人の接待中に気付いてこうなったんだ」

 まさか、ザフラを誘拐しようとしたグループだろう連中が先回りしてここにいて、何かしようとしたらしく、今丁度とっ捕まえたり、追い出している最中のようだ。

 別席で坂本がその連中と思わしき男を捕まえており、連れて行きながら言う。

「で、今回はどういう風の吹き回しなのかしらクライヴ?」

 奥から血だらけの1人を掴み引きずりながら現れたのはクライヴだった。

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