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電話

 日向は続けざまに伝える。

「良いかよく聞け、アイツは過激派の矛の中で最も倫理観が通らない男だ」

 一体どういう事なのか聞くがなんとなく、あの噂が出回った辺りで想像がついてしまう。

「どういう……」

「ジャンヌから聞いた、この辺りに保護されたイビトがいるが、矛は基本盾に保護されたイビトに手を出さない」

 最初の時、理美が言っていた言葉を思い出す。

 この領域に入れば保護をすると、だがなんだかそれに対しても抵抗が光喜にはあった。

「分かります。でもたまに思うんです、なんかゲームみたいな感覚で縄張り入るまでというか」

 そう、まるでゲームのようだ。

 人の命とか動物であってもこうあって良い物だろうか。

 日向は光喜に言う。

「分かるよ、でもあの時のは覚えてるだろ?」

「はい、あの時殺されかけた分理解はしてますが」

「あれはな、精神的に危ない奴も少なからずいる言わば根が理性を支えていたとも考えられる」

「よく分からないですけども」

「そうだな、自分もよく分からないが、冬美也なら分かるだろう」

 ここに来て冬美也の話が出て来た。

「冬美也、そういえば飛行機ごと異世界に行ったって」

「うん、アイツは耐えられた、いや寧ろ周りが狂っていくのをまじかで見て、狂うに狂えず必死に制御出来たと言った方が正しいだろう」

 自分は聞いていたが、日向も聞いていたのに驚いた。

「話を聞いたんですか?」

「一応な、アイツもかなり疲弊してたが、海でのサバイバルの方が幾分かマシと言っていた」

 そう言われてしまうとやはり普通に異世界に行こうとする輩は分からない。

 ふと思い出す、あの時1人だけ止まってぼうっと立ったまま宙を浮く瞬間、冬美也が慌てて引っ張って連れて行くのにも意味があったのだ。

「もしかして、急に突っ立って動かなくなったイビトが居たけど、あれが――」

「そうだな、あれならまだ自身がどうなったか分からずに終われたならまだましだろうが、見る側は暫く食い気は無くなるな」

 全て納得した上で、当時の自分なら絶対もう外になんて出なかっただろう。

「あー冬美也が止めてなかったら俺、引き篭もり継続してたかも」

「そりゃ出たくはなるよな。でも、これはまだ良い方だ。中途半端に理性が頓挫して本能のまま暴走して殺害、強盗、強姦、本当にやりたい放題で普通の人間が取り押さえるなんて無理だ」

 よくある異世界行くネタを思い出しながら、現実を突き付けられた光喜としては悲しくも怖くなる。

「……現実って恐ろしい」

 日向は盾の現状をよく知っている為、ゲーム感覚で領域なんて作ってはおらず、寧ろ作らなければ万が一もあるからこそで、あのルールが出来た。

「まぁ、このまま放置されてしまう事もあるから正直食って欲しいよ。だから下手に助けられない分見定める為の期間が欲しいんだ、盾は1番シビアな立ち位置だって分かったろ?」

 理解は出来るがずっと気になっていた事をついぶつけると、日向も昔は光喜と一緒だった。

「なんとなくは、でもなんで食べる為に異世界同士で共有するんですか? そんなのが無ければアースだって」

「ただの何度も生き返る不思議な存在なら別に、でも役割は持っている。アースは分かっている。風神と会話してた時の話をしてやろう」

 これに関してはアースに直接ぶつけ、日向なりに答えが出来、光喜にも教える。

「どんな?」

「君と同じ疑問を常に持っていた。だが普通の人間は田畑を耕し、食を取る。その田畑から出来た物は売ったり物々交換したり、なんなら昔は年貢として納めたり、世界同士が共有するのと一緒だ。生命が文化を耕し、人口、動物が増えた時にそれを共有し合い、生命を維持する。人間と一緒だと」

 人間のように世界もまた文化を耕し人口を増やし、共有し合うなんとも言えないが納得も出来る言葉だ。

「人間と……か」

 世界にも話せる力があれば、もう少し理解出来るか納得出来ない理不尽なのが来るかは分からないが、日向は話を戻す。

「そう、もし話せれば良いんだが、よくない死に方をすると番人が産まれるし、世界の小さな生命は意外と貪欲だ特に理性があればな。で話を戻すぞ、過激派は盾にも矛にもいるが、盾は隔離型だから放っておけ、だけど1番放ってはおけないのは矛だ。我々矛でも過激派は一線を越えている」

 光喜くらすればあまり変わらないのに何故危機感を抱くのか分からない。

「イビトを殺すのは変わらずなのにどうして?」

「ジャンヌから聞いているだろう?」

「えぇ、まぁ、でもちょっとしか触れてなかったし、あの後はもう別の話で盛り上がって終わっちゃってたし」

「本人も他の連中にも怖がられては行けないと思って話を逸らしたんだろう。保護されたイビトは一時隔離後、食されなければこの世界に慣れてもらう訓練を受け、自立してもらっている。目立つ行動さえしなければ基本自由だが、過激派はそこを狙って殺す下手すれば隔離中でもお構い無しだ」

 その話で冬美也の話を思い出した。

 ある程度落ちた時に隠れ家を襲いに来た事を……。

「ちょっと思い出したんですけど、改めて冬美也に聞こうと思います」

 一瞬どうしてと言おうとしたが、よくよく考えれば、光喜がまだ管理者の仕事に関して良いように思っていない時期に、冬美也が異世界に堕ちた話をしてくれたんだったと思い出す。

 どの世界にもあぁ言う輩が居るのだと理解していれば大丈夫だろうと思うのとクライヴがどういった愛されし者かとセッシャーも理解してくれればと願い教えた。

「どう、あぁそうか冬美也は一度異世界に堕ちてしまった身で過激派にも出会ってる、聞いてみなさい。ただクライヴは気を付けなさい、アイツは力に愛されし者、純粋な力をどこまでも引き出す、脳がイカれていると言われてもおかしくない。それだけじゃない、セッシャーもアース同士になると攻撃してくるから攻撃されていると集中を欠かれこちらも思うように力を出せない事が分かっている」

「分かりました、万が一出会ったら管理者同士で連絡しますね、おやすみなさい」

「あぁすまなかった、おやすみ」

 そうして電話を切った。

 いきなり扉が開いて飛び上がってしまう。

「光喜」

「うわぁ! ごめん!」

 急に開けてしまったのは自分だと冬美也は謝るも、やはり電話が気になっていたようだ。

「いや、こっちこそごめん、さっきの電話は?」

 光喜はあの変な人について軽く話す。

「日向さん、あの時変な人居たでしょ? あの人関連での話で結局色々話し込んじゃって、意味あったのかなぁ、一応クライヴは過激派で力に愛されし者、アースのセッシャーって言うウサギ耳の2本足で立つ猫っぽい奴が同じアースに攻撃しかけるから気を付けてって」

 過激派は何処にでもいる、分かっての事で冬美也は一度堕ちている身だからこそ、一定数の管理者がしっかり理解しているだけでなく絶対に分かり合えないのも分かっている。

 ふと、そう言えばこんな話を思い出し、光喜に話した。

「異世界に堕ちた人間を良く思っていないのは勿論そうだろう。召喚って言葉は良いが従者関係で聖女だの勇者だの結局は奴隷契約であって、良い思いするのは召喚士だけって理美が言ってたな」

「理美ちゃんが? またなんで?」

 もう話ても良いだろうと冬美也は言う。

「アイツが助けてくれたから」

「……? えっ?」

「まぁ正確にはデリートがオレを探す理美に付き合ってくれて、その都度異世界での実際の関係とか色々聞いたらしい」

 あの番人デリートって結構良い人なのではと思って言うと意外と違う印象が生まれた。

「へぇ、あの番人って本当に良い人なんだね」

「違う、アイツはそんなんじゃない、理美だから丸くなっているだけで、基本かなりキツイ性格だ。何度殺気だけで殺されかけたか……」

「それってまるで、お父さんの娘はやらんオーラじゃない?」

 その言葉に固まる冬美也は必死に元に戻り、色々あったからこその捻り出した言葉がこれだ。

「……あーうん、そうだよねぇはい」

 光喜は昔を知らない。

 そして今の冬美也の状況から判断するしかない。

「どんまい」

 何故かこれしか出ませんでした。


 朝、結局寝付けず、2人で色々話し込んでは遊んでを繰り返した為、2人でソファーで座ったまま寝落ちした。

「……くびが……痛い」

 あちこち痛いし、冬美也は横になっているが、狭くて丸まっている。

 光喜は判断した。

「落ちてしまえ」

 冬美也をソファーから落としてやった。

「ふぐっ……! いってぇ……朝?」

 あまり良い姿勢で寝ておらず、2人して首や頭、腰などが痛く左右上下を揺らす。

 丁度その時、インターホンが鳴る。

 どうせうちの親だと冬美也は言うがインターホンカメラに写っていたのは理美だ。

「おはようございます。如月先輩すいません、衣鶴さんから聞いたら冬美也はここだって」

「いや、おはよう、今開けるから待って」

 光喜が慌てて開けに行こうとしたら、誤って冬美也とぶつかってしまい、お互いすっ転んだ。

「ちょっと! なんでそこに――痛ってぇぇ」

「まじ頭打った」

 その後すぐに2人でと持ったが、不用心な事が起きた。

 光喜の目の前でニュートンが仕方がないなと勝手に鍵を開けたのだ。

 声を出す前に理美が開けてしまう。

 お陰でお互い倒れた拍子であられのない態勢となり、見た理美はどう反応すれば良いのか分からず、とりあえず記念撮影しようとスマホを取り出す。

「如月先輩、不用心ですよ、鍵掛かってない……あぁー写メ撮って良いですか?」

「なんでだよ!」

 冬美也はすぐに止めに入り、変な画像を他に流さずに済んだ。


「色々買い込んでおいたけど、本当に何も無いんだね」

 一応許可を貰って、冷蔵庫の中身を確認する理美に対して光喜は親戚の家にいる為、下手に食品を買い込まなかったのを伝える。

「昨日まで親戚の家だったからね」

 理美はなるほどと言いながら、自身で買って来たであろう荷物を広げながら料理を始めた。

 料理の手捌きはとても良く、適当とは違う明らかに飾り付けにも抜けがない。

 失礼になるが、本当に出来が良いのでつい言ってしまう。

「理美ちゃんって料理出来るんだ」

 それに対しての答えがこれだ。

「一応、飲食業にも携わってるので」

 あまりの衝撃的な言葉に驚いた。

『んっ?』

「嘉村家の方針で、勉学苦手なら実践で補え、最初から仕事のイロハを本番で補わせるんだと」

「本人も料理出来るって凄い」

「いやいや、レパートリーは同じよ」

「同じなのはオレらの飯だけだ」

 いつもは野菜炒めで終わる冬美也とフィンのレパートリーだそうです。

 一人暮らしな分、殆ど1人用の食器しかないが、理美

はそれも踏まえてわざわざ簡易的な紙やプラスチック容器に料理を取り分けていく。

 並ばれる料理がしっかりした朝の洋食だ。

 オムレツにコンソメスープ、付け合わせのサラダ、他にもあっさりだが短時間でこうも作れるのかと感心してしまう。

「おぉ! 凄い、本来ならただのコンビニ飯だったのに」

 理美は光喜に今までの経緯を話す。

 しかし目が逸れている。

 あまりになんとも言えないと言う顔だ。

「ほっとくと、どんどん栄養素あるからって携帯バランス食ばっかりになっていく2人を見てたので」

 光喜も面倒な時携帯バランス食で誤魔化す時もあり、正直申し訳なさが立つ。

 流石に抜き打ちで咲から連絡が来て、誤魔化したが結局突撃晩御飯状態でやって来られた事があり、手抜きはするが携帯バランス食に移行すると言うのは避けるようになった。

 冬美也の言い訳も光喜からすれば理解が出来る。

「だってよ、結局何食うかって考えたら面倒になって来て最終形態まで」

 勿論理美だって分かっての言葉であるが、面倒ならカップ麺とかに行かないのか分からないのだ。

「カップ麺とか分かるけど、どうして携帯バランス食or携帯栄養ゼリーに化けたのか知りたいよ」

 ここで冬美也の即答には光喜も突っ込むしかない。

「3分すら面倒になった!」

「最悪な内容だぞそれ」

 これ以上突っ込まれても困る冬美也だったが、どうしてここに来たのか冬美也が問うと理美はせっかく来たのだから一緒に観光巡りするのかと思って、一応旅行雑誌も買ってきていた。

「ところで理美はどうしてわざわざ? デートでも無いのに?」

「いや、家族と一緒に観光案内しないのかなって?」

「無理! 普通に観光出来れば良いけど、あの人らが行きたい所が変!」

 思春期真っ只中だなと光喜と理美は思いながらも、どう変なのか分からなかったが、次に冬美也が答えた時に理解する。

「何処だよそこ?」

「上野の東京博物館とかでしょ? それとも千葉の舞浜?」

「寄生虫博物館」

 流石にまだ幼い優紀が可哀想で堪らなかった。

「……優紀君がかわいそうだろう」

「せめて優紀君だけでももっと別の所連れて行ったら?」

 冬美也も確かにそこは可哀想だと自分も思って、歳の離れた弟を何処へ連れて行けば良いのかと考えながら、とりあえず動物園へと考えloinで伝える事にした。

「なら動物園とか? ちょっとloinで聞いてみる」

 いきなりの事だったが、優紀も流石に寄生虫博物館に行かなくて済むと思ってたのか、意気揚々と行くと言ったらしく、こうして弟優紀を連れて皆で動物園へと行く事になった。

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