表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/91

はぐれ神とは

 深夜、皆が寝静まっている時、光喜だけではない、ここの部屋にいる全員のスマホが鳴った。

 まだ眠たい目を擦り、スマホを覗く。


 はじめちゃん

[すまん、こんな夜更けに、今からこのloinで来た連中だけ、食堂に来てくれ]


 一体どういう内容なのか分からないが、渋々起き上がると、スマホが鳴ったのが気付いていないのか他2人はまだ寝ていた。

 覗いてしまった身、起こすべきか否かを考える。

「寝よ……」

「おい、起きろ、流石に起きろ」

 寝る事を選ぶ光喜に対して、ニュートンは突っ込んだ。

 そして、見回りしていたのであろう大型犬になったマコが扉を開けずにヌルッと入って来て冬美也を揺らしながら起こす。

「冬美也様、起きてください、召集です」

「ん……んー……なに?」

「召集です。loinとやらに送ったと一さんが言っておりましたが、まだ眠っているだろうと起こしに来ました」

「そう、ならゼフォウは?」

「それなら――」

 眠たそうな冬美也の問いにマコが言おうとした直後、フィンのいる天井から落ちてくる土鬼の姿を2人は目撃した。


「よう、すまんな。管理者組or異能者組」

 食堂で大人達にもうアミーナとザフラ、ジャンヌと卑弥呼とフィリアそして理美が既に集まっていた。

「眠いー、寝たいー寝る」

「この時間でしか集まらないので緊急召集ですから起きてください」

 既に眠ろうとする理美を必死に起こす琴がいた。

「いえ、それよりどうして今……」

「それは……と言うか、大丈夫か? ゼフォウ?」

「スカイハイしたアザラシで死にかけた、三途の川の向こうでこっち来んなと手を振りながら昔一緒にいた仲間達が言っていたから何とか戻れた……!」

 フィンが酷く弱って少々生死も彷徨っていたのだが、何とか生き延びて今に至る。

 冬美也は軽く欠伸を出しながらも、集まった理由は穏喜志堂なのかと尋ねた。

「で、今回の召集って穏喜志堂?」

 話が早くて助かると一が話す。

「そうそう、各国でも問題視されて何ヵ国かはカルト集団として認定されて逮捕者も出ている程だ」

「なら普通、SNSとか特にエビッターとかにも載りそうなんだけど?」

「実際載っていた、けど載せた奴が突然蒸発した」

 ここで日向達と居た時に噂の事をフィンが思い出した。

「蒸発って、昨日言っていた噂の状線か?」

「噂?」

「いや、TV取材班が情報漏洩して、親族全員信者化して言った本人だけ行方不明なんだ」

 日向の話を聞き、驚く中でジャンヌが更に水島に付いて言う。

「それに、水島舞里が穏喜志堂の幹部か部下ではある」

「ん? 信者なくて?」

 理美も水島関連で噂であったのを思い出す。

「信者って噂はあったよね。だから、内心知っている人はスポンサーとか絶対にしないけど、政治家の金剛岩助だっけ? あの人も信者だって話で何かその紋章を付けてたよ。そのせいか分からないけど、最近色んなスポンサー付いてテレビや動画も多くなったって颯太兄が言ってた」

 流石に噂程度ではあったが、この時点で繋がりもあったのが分かり、下手すれば回りも無碍に出来なかったのだろう。

「正直、こうなると手出しが難しくなってくるなぁ……」

 一としてはあまりこうなると手出し出来ないとかではなく、あまり関わりたくないと言った口だ。

「政治関連にまで口が出るのはあまりな、と言うことは、前々からあちらも準備して選挙にも当選したと言うべきか?」

 実際、金剛岩助と言う男は穏喜志堂が作った党等は存在しない。

 寧ろ有名所の党に所属している。

「多分なぁ、一応デカい党からの推薦もあったし、最初からそんなの無かったって言う話もあるから、後からって言いたいが……」

 ディダが言いながら入って来た。

「はぐれ神を使って来た時点で既に黒だ」

 流石に怪我したディダがやって来て、理美はもう動いて大丈夫なのか心配したが、やはり本調子ではない。

「あれ? もう大丈夫なの?」

「大丈夫じゃないけど、一応話さないと僕とマルスは齧った程度の知識しかないけど、土鬼に対しては知り合いだからね」

 ふと、そういえばマルスが詳しいと思って冬美也が話を振ると、マルスから意外な名前が返って来た。

「と言うか、そういえばマルスは詳しいよな?」

「……うん、土鬼の契りを交わしたのは総十って人」

「総十って、確か森沢木人って人が話していたような?」

 理美の質問に、どう答えたものかと考えるも、さらっとマルスは別の2人の名前を出す。

「その人ってどんな人だったの?」

「んっ? 坂本と鶴野辺りがよく知っている筈だけど?」

 日向もその2人なのかと意外な言葉となる。

「あれっ? そっちの方か?」

 流石にディダもコレに関して言った。

「だって、僕ら昔は海外、ヨーロッパ辺りが主な生活区だったし、刀が錆び付いたり欠けたら直しに日本に行く位だったから」

 マルスはこれを話すべきかと悩みながら言うも、ディダがガッツリ話してしまう。

「ちょっとした理由で足伸ばしたら、出会ったというか、ディダが大怪我しちゃって、ドバッとねぇ……」

「そうそう、ドバッとねぇガッツリ斬られました。あの後、僕は覚えてないけど絆達に助けられたよねぇ」

「ねぇじゃないですよ! 俺もそのせいで死にかけたんですけど!」

 皆がドン引きするなかバートンだけ、冷静に突っ込んだ。

「親子喧嘩してないで、話を戻しなさい。今は必要最低限の情報しかない。それにこれは遊びでは無いのは1番分かっているのは貴方でしょうが」

 光喜がどうしてバートンが2人に対して言うのかつい聞いてしまうと、返ってディダが壮大に咽せてしまう。

「親子って……?」

「ゲホゲホ! 僕より、先も出たけどマルスが1番だよ。あの2人よりは確かに浅いけど、実情知っているのは彼だ」

 実際マルスもそこまで詳しくは無いが、土鬼の契りを交わしたのは間違いなく総十と言うのは理解していた。

「まぁ、そうなりますよね。総十って人は多分、穏喜志堂と何らかの繋がり、いやどちらかと言えば復讐心があったみたいで、その際に契りを交わしたって言ってたのがこの土鬼です」

 光喜も最初の頃驚いてはいたが、理美やフィンよりも冬美也に1番懐いているのが見ていて分かっていたので、どうしてなんだろうと不思議と思っていた。

「でも、不思議ですよね。どうしてか冬美也とかに懐いてるし、なんででしょうね?」

 それに関しては意外とディダもマルスも容姿が本当に似ていたらしく、口にした途端に総一に怒られてしまった事も思い出す。

「あっ、それきっと総一さんと総十さん親子なんじゃないかと、僕も最初、見た時言っちゃったんだよね」

「それ、俺もしました! でめっちゃ不服顔になってましたね」

 冬美也は何となく分かってはいたが、どうもマコですら間違えてしまい怒らせてしまい、どうしてなのか聞いても絶対に口を開かなかったのを伝え皆が悩んだ。

「なんでオレを見るんだ? 無理だぞ、聞いたって、コイツらだって間違えちゃってめちゃくちゃ親父怒らせたって話しかしらないぞ⁉︎」

 もしも、土鬼の契りが冬美也の身内なら尚のこと、穏喜志堂の関して何らか分かる筈なのに何処にいるのかもまして、死んでいるかも分からない相手に聞いてもと思った時だ。

 理美はバートンにある事をお願いする。

「あっ! そうだ、デじゃなくてバートン先生、メリュウ貸して!」

「どうしてですか?」

 そう、どう言うわけかメリュウと土鬼は意思創通が可能だ。

「いや、もぎゅたんの話意思疎通出来るんだよメリュウが」

「そんなのも出来るんだ?」

「如月先輩、実はメリュウも何となくって言ってるけど、結構意思疎通出来てるから話せるよ、ねっ? もぎゅたん!」

 しかし、その話になると途端土鬼がそっぽを向く。

 どうやらあまり触れられたくない話がある様だ。

「これ、もうオレとその総十が身内じゃね?」

 露骨な反応に、もう聞くよりも分かる雰囲気ではあるが、確信を得る為にとりあえずバートンは理美にメリュウを返した。

「あー、一応返しますので、意思疎通お願いします」

「お、おう」

 とりあえず返してもらったメリュウを出現させ、土鬼に話し掛けさせる。

「ふんふん、うんうん」

 理美がどう言う話かと尋ねると意外な返答が返って来た。

「どうなの?」

「総十の話はしたくはないし、総十には誰にも自分の事を話すなって言われてるからダメだと」

 やはりと言うべきかあの態度では当たり前だろう。

「あの反応からすればねぇ、ならはぐれ神に付いてなら言える?」

 光喜は自然と自分から言ってしまったが、良いのかなと回りを見ると意外と皆も別に構わないとばかりになっていたので、安心した。

「ふんふん、色んな神様が居て、妖も魔もそれぞれ役目があって、それが当たり前で、でも(あぶ)れ者も居て、それがはぐれもの、はぐれ神と言われる危うい存在。君らみたいに、理由を与えられる存在とは違う」

「あやふやって事でしょうね。どんな存在にも役割と言うモノがあります。ただ人間のように一気に人口が増えれば、それだけはみ出てしまい役割を持たずに普通もままならない(あぶ)れ者と一緒でしょう」

 バートンの話に、光喜がどういう訳か変な反応をする。

「ニートとか引き篭もりとか?」

 一度やってしまった後悔もあるのは分かるが、実際立ち直っているので落ち着いて欲しいと冬美也が促す。

「いや、お前は立ち直ってるから、そんな暗いオーラ出すな」

 面倒な連中だなと呆れ顔になりつつも、メリュウはそのまま土鬼の通訳を続けた。

「ほー、で、そのはぐれ神にはある利点として契約、契りを交わした者と力を授けたり、逆に使ってもらったり、しかも交わした者は半永久的な不老を手に入れるんだな」

 一は面白い話だなと思いながら話を返す。

「成る程、管理者と真逆な存在だな。こっちはその力を貰う愛されし者となって、世界の為に働き、老化して死ぬと言うより、元の姿になるから半永久的な不死になる」

 光喜はその話ならS国にも1人居てもおかしく無いのではと振ってみたが、意外と居なかったし、もしも居たとしても、悪魔として葬り去られているのではとザフラに返されてしまった。

「あっ、本当だ。考えてみればそうかも、ザフラとかはそういうはぐれ神を持った人とか居そうだけど?」

「残念だが、我の所には居ない。もしそんなの居たら悪魔とされてるだろう? 一応、宗教上ではそういう部類として葬るし、不老の状態はあまり好まれない」

 それに関してフィンも意外そうな意見だったので、ザフラとしての考えを含めた上で話をした。

「意外、ザフラちゃんの所、管理者と異能者には寛大なのに、はぐれ神にはあまりそういうのしないの」

「フィン、例え迎えていたとして、管理者みたいに再生期間の数年、間が空く分には他の連中はそこまで言わないが、不老に関しては噂が経てば国が襲われる可能性が高くなるんだ。噂は毛一本でもあれば手繰り寄せたい連中も多い。だからきっとそういうのは招き入れない」

「わたくしも長年支えている身ですが、今まで見た事はありませんし、もし万が一居たとしても、きっと良い結果は無かった思います」

 アミーナの話を聞いた後、メリュウは穏喜志堂について土鬼に尋ねた。

「……とまぁ、皆それぞれの意見あるけども、オレ様良い加減、穏喜志堂とは何か教えてくれ」

「もも、もぎゅぎゅぎゅぎゅ……」

「穏喜志堂は平安時代の頃から既にある組織で、時代を変わる、動くのを恐れた哀れな貴族達が結成させたのが陰鬼(おんき)士道(しどう)だよって陰気な鬼って書いて陰鬼で士道はその道の先導する士で、今は武道とかそっちら辺に使われてたけど、武道と言う言葉が無かった時代に使われていた言葉」

 皆、思ったよりも相当昔からあり、知っていたかと一が琴に聞くも始めてと言って横に頭を振り、日向に至ってはずっと無言だ。

 冬美也が何故新興宗教になっていたのか聞く。

「穏喜志堂はどうして新興宗教になった?」

「変わって動いた時代は日本だけじゃない、世界そのもの、だから一度リセットを含め、後退させる為に鬼が必要だってさ、そして宗教として活動してたのは別に最近じゃない、江戸辺りで、表に出て来たのが最近ってだけ、後話すの疲れたから寝るってさ」

 土鬼が大きな欠伸をするので、本当に眠いのだろう小さな目も半分になっている。

 そして最後に再度冬美也が問うが、土鬼は頭を横に振った。

「最後に一つ、どうして総十と一緒じゃない?」

「先も言ったけど、総十に関しては言いたくない、じゃおやすみ……って本当に寝た!」

 メリュウが驚くのも無理からぬ事で、本当に土鬼は寝ているのだ。

 こうなると唯一の情報源も途絶えてしまい、とりあえず穏喜志堂が何を考えてるのか、どうしたのかは簡素ではあるが十分な情報とも言える。

 理美が再度バートンにクリスタルを返すと、もう眠たいのか欠伸が出てしまう。

「あー、オレらもう寝ていい?」

 もう冬美也もだが、子供達はもう眠たそうだ。

 今回は急遽の召集だった分、実際頭も回っていないのもいる。

 一はここで区切りを付ける事にして、解散を指示した。

「そうだなぁ、また何かあったら呼ぶから、もう寝て良いよ」

 卑弥呼が時間を見るなり驚いてしまう。

「てか、もう朝の4時じゃん! これ寝てもすぐ起こされない?」

 そう、もう4時、若干外から朝日が昇り始めている。

 フィリアはゼフォウ達を見ながらこう言う。

「光喜達は羨ましいな、3人揃って寝坊が出来るんだから」

 確かに、他の女子メンバーには他の子達と一緒もいる為、寝坊がまず出来ない。

 だが、男子のこの3人は一緒の部屋な為、外部が起こすまで眠っていても大丈夫とも言えた。

「良いだろう、絶対昼まで寝てやる」

「なら今度は私がスカイハイして、香りもキッツイのお見舞いしてあげる」

 フィリアの一言に、ゼフォウがびびってしまう。

「ええぇ⁉︎」

 皆それぞれ戻ろうとした時、大人は皆更に用事があるのだろう、誰も動こうとしない。

 光喜はどうして動かないのかと言おうとした時、先に一が指示をした。

「ほな、他の管理者達に連絡したいから、大人組は残って、後ジャンヌとアミーナも」

 ザフラも残ろうとしたが一が止める。

「はっ? どうして? それなら――」

「いやいや、今回は世界って言っていたから一応海外にも知人の多そなメンバーで連絡取り合いたいからねぇ、ねっ? 日向もそうでしょ?」

「……あっあぁ」

 なんとも歯切れの悪い返し方をする日向をよそに、高校生組と理美は部屋へと戻った。

 皆が戻ったのを確認した一は改めて日向とマルスに問う。

「で、日向はどこまで総十を知ってる? そんでマルスも知っている事あるなら全部話せ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ