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通電後

 いきなり爆発が起き、魔水が水島を守りながら爆風と共に外へと逃げ出す。

「おい! 魔水! まだだ、まだアイツを連れ出してない! それに外の雨なら――」

 雨さえあれば幾らでも強くなれると水島が魔水に指示しようとした時だ。

 胸元にある和紙が話し掛ける。

「帰って来い、この空間ではこちらが勝ち目が無い」

「なんで⁉︎ まさか、擬似空間って言う気じゃ」

 ここで水島はこの空間の異様さに気が付いた。

 人質を取るのも出来ただろうが、見つけるには自身で作った結界が先程結界が破られ、こうなると下手な動きが出来ない、なら水になって最初は探ろうと思っていたが、いくら待っても戻って来ない地下組を放置し、まずは邪魔な連中から片付けて行こうと作戦を変えたが、それが1番悪くもあった。

 結界崩壊直後に擬似空間に置き換わっていたのだ。

 真堂は話す。

「そのまさかだ、少々色々調べてたら、こちらが1番不利だ、今回は調べるだけにしてと思ってたが、番人にも目を付けられている以上、あまり使い手を減らしたくない」

 確かに、番人には見つかりたくないからこその結界が消されてしまい、こちらに有利な管理者を暗殺しつつ狙おうとしていたが、出て来たのは手練ればかりな上、異能者だ。

 しかもただの異能者ではない分、尚のこと質が悪かった。

「ちっ、変に出てこないと思っていたが、こっちが害虫取りに引っ掛かったのか」

「そう言う事だ、下手なモノを埋め込んでもこちらの足が着く可能性もある。今回は回収も情報収集もあまり良いモノでもないな。だが、それなりにあった筈だ。あっちも下手な手を打てないだろうし、一旦お前も仕事に戻れ」

 悔しそうに、唇を噛み締めるが下手に血を出せば仕事に支障が起きるのは自身でも分かっていたが、それでも悔しさで止まらない。

 渋々、ここから立ち去る事を決断し走って表仕事へと向かった。


「ふぅ……驚いた、アミーナのお陰でバレずに済んだわ」

 下に大きな紙を敷き、その紙に儀式的な書き方をした円中に卑弥呼が居た。

 気配が消えたのを確認し、疲れたとばかりに背伸びを始める。

 アミーナも心配になりながらも、全体を見て、居ないのを確認してから言った。

「いえ、しかし大丈夫ですか? 日向さん、あのままでは、一度」

 日向が攻撃を受け、無事とは言い難い分、心配だ。

 ただし、卑弥呼は言う。

「そう言うのは、デリートがやるでしょう? 見ている最中に何かあったらこっちが困るし」

 こう言う時こそ、問答無用で危ないモノを消して貰えば良いのだ。

 確かにその通りとアミーナもそれに関しては納得した。

「それもそうですね」

 だが、ディダからすれば怒られないかと思って言ってしまう。

「ねぇ、それ怒られない? 連れて来ちゃった身だけど、それってどうなの?」

 そんな事を言っている内に、とっても御怒りのバートンがやって来た。

「怒りたいのは山々ですが、どうせあなた方が来なければ、不意を突いてやる気だったんじゃないんですかねあぁ言うのは?」

 卑弥呼はそのオーラに驚きながらも、一切気にせず、光喜達を迎えに行くかとばかりに立ち上がる。

「おぉ、殺意増し増し、それよりあの子達の迎えどうする? 後電気通るかな?」

「あ、わたくしも行きます。ザフラ様は後輩の子達と部屋で避難している分気になっていたので」

 女子組は仲良く、部屋を出た。

「なら、僕も……」

 それに対してマルスが入って来た。

「ディダ神父は大人しくして!」

「はい」

「安心して下さい、正常に戻ったかの確認しに来ただけです。こちらは日向の元へ行きますので」

 どうして来たのと言う声が聞こえた気がしたが、バートンは気のせいとばかりに、日向達の元へと向かって行った。


 一方その頃、光喜達はブレーカーをもう一度上げた時、漸く電気が点いた。

 良かったとお互い言い合いながらも、やはり気になるのは通電火災だったりするが、一からするとその前に、もっと問題があるのだ。

「通電火災大丈夫かなぁ?」

「それに、冬美也君が全体ってアホな指示で物置部屋の整理整頓せないけなくなりましたしねぇ冬美也君」

 そう、光喜に指示した全体の無重力は本当にここの地下限定ではあったが、追い出した後に他の部屋を見たら全ての部屋が散乱という最悪なことになっていた。

 結局、窓はあっても光があまり届かない各部屋を片付けるには電気が通るまで待つしかなく、今に至る。

「はいはい! すいませんね!」

 冬美也も最初はここまでかと反省したが、ちょくちょく一に言われて、苛立ちが見えた。

 光喜は冬美也を宥めつつ、自分が悪いのだからと少しでも力の加減を変えれば浮かす事が出来る様になったのもあり、重い物は起こせるほどには成長している。

「まあまあ、元はと言えば俺がまだそこまで至っていなかったから、とりあえず魔法とかでいう物を宙に浮かせて運ぶみたいな感じに最近出来る様になったから、とにかく早めにやろう」

 そう言って、格部屋を片付けに入ろうとした時、卑弥呼がやって来た。

「あら? 皆無事だったみたいで何より」

「そっちはどうだった? 他に敵とか?」

 一の問いに卑弥呼が答えつつ開けた扉を覗けば、凄い散乱しているのに驚いた。

「居たらしいけど、ゼフォウが爆発させて追い払ったみたいだし、なんとか、そっちはデリートが見に行ってくれてるし、アミーナも避難組の様子見に行ってくれてる……ってまた随分派手なことしたわね」

「いやぁ、ははは……」

 片付けながら、理美はふと、光喜にどうしてそんな指示をしたのか気になった。

「冬美也の指示で皆浮かばせたけど、なんでそれしたの?」

「んっ? だって、無重力って飛ばせば必要な重力と踏ん張る力が無くなるんだ。あの浮いていたエビっぽいのも結局、重力があってこそと踏ん張る位置が存在したんだ。ちょくちょく反動で動いてたし、だから浮いているから無重力も無効とは限らない」

 冬美也があの時撃っている銃木が浮いてはいるが反動もありちょくちょく後ろに下がっているのが見えた。

 そこで、踏ん張る力も無い無重力ならどっちも飛んでいくと想定しての案だ。

 理美は思い出しながら確かに浮いている割には少し反動負けしている部分があったのに気付き納得した。

「成る程」

「下手に言葉にしたら撃って来ないだろ相手、それにこっちも浮いてないと万が一撃った弾が重力負けして足とかに被弾しても困るし」

 こういうのは大気圏に突入して重力に吸い寄せられていく隕石に似たような現象だと考えれば光喜も納得出来た。

「あー、確かに」

「で、自分はただ足払いされて頭打っただけなんですけどね」

 未だに納得のいっていない一を見て、つい思い出して光喜は笑う。

「そういえばそうでしたね」

 ただ卑弥呼からすれば、敵からすれば目的として邪魔なのは大人の場合、奪いのが大体の目的だと憶測が自然と建てられる。

「敵としては何か奪うなら、真っ先に消したくなるのは大人だから、至極自然な事じゃない?」

「……確かに、命奪うだけなら子供からの方が早いからな。逆に自分を標的にしたって事は連れ去りが目的、分かり易くて腹立つわぁ!」

 物騒な内容ではあるが、実際起きた事だ。

 笑い事ではないし、真っ先に狙ったのは一なのがなんとも言えない。

 しかし、そうなるとどうして先に結界を解く事を選んだ土鬼にも気になって仕方がないので、声を掛けようとしたが、当の土鬼が居ないのだ。

「あれ? 土鬼が居ない?」

 片付け中だったので、居なくなっていたのに気づかなかった。

「あっ? あー、またどっかに散策しに行ったんじゃないか? アザラシもどきは一定の場所にあまり留まらないし、マコも一応見回りするって言ってどっか行ったし」

「そう……」

 少し気掛かりだったが、後数部屋残っているので、急いで片付けないと買い物中の管理人が戻って来てしまう。

 光喜達は急いで後片付けをした。


 そんな状況を知らない、日向達と言えば――。

「また派手に、電気で分解でもしてたんですか? 体が火傷してますよ?」

 バートンが日向の体から湯気が上がったままなのに気になっていたが、袖を捲ると赤くなっていたのだ。

 どうやら無理矢理蒸発させようとして相当無謀な事をしたのがよく分かる。

「イメージだけで一気にやってしまって、まぁ、氷だったら本当にやばかったがな」

 日向の話を聞きながらバートンが腰に付けていた剣を引き抜き、サッと日向を斬る。

 本当に斬った訳ではなく、今まであった火傷が泡の様に消えていく。

「序でに全ての異物となりそうなモノも消して置きましたが、ゼフォウとジャンヌもこちらに来なさい。どうせ、触ってはないとか言って後から酷い事になるパータンはとても嫌なので、後で地下に行った子達も見ます」

 バートンの指示でソファーで待っていた2人は近付く序でに、ある事を思い出し話す。

「てかさぁ、水島舞里って確か最近TVが推してるアイドルが穏喜志堂のメンバーだったのなぁ」

 フィンの言葉にそういえばとばかりにジャンヌも気掛かりだった部分が判明したと言った声だ。

「歌はイマイチなのによく推すと思ってたが、バックが強いと大分穏喜志堂に侵されていそうだ。ヴィチューブも最近それ推しが多くて、配信数もバカにならない数だから批判コメも少ないのが少々怖い、消してるかもしれないが」

「これはまだ噂段階なんだが、穏喜志堂に対して正当ある理由で批判した男性が居て、それをTV取材班がよりにもよって穏喜志堂の1人に話したんだと」

 フィンは流石にこれは噂と言うオブラートで誤魔化しているようにしか聞こえない。

「……聞いたことあるけど、あれって本当なの?」

「昔からよく漏洩疑惑のある局だから、ある種の信憑性があるな」

 挙げ句の果てにジャンヌもその噂を知っており、返って信憑性が増してしまい、本当に事件ではとフィンが疑ったが、もっと黒い話が返ってきた。

「まさか、親族巻き込んで?」

「いや逆だ逆、確かに巻き込んで入る。全員信者に変えて」

「死ぬよりも生き地獄なんですが?」

 それでも入信せずに逃げた男性が未だ行方が掴めずが噂のようだ。

「だから、居場所を無くしてその男性は今も行方不明だ」

「ひっ!」

 バートンからすれば、フィンの怯え方に胡散臭さを感じ、眉間に皺を寄せながら問う。

「あなた本当に怖がってますか?」

「一応、音頭って必要でしょう?」

 ここにいる全員が呆れ返ってしまった。


 そしてアミーナは皆の無事を確認する為に部屋に行くとザフラ達が居ないのだ。

 見れば良かったと深く後悔した。

 他も寝室を確認するも誰もいない。

 もし、連れ去られてしまったのならと、心配になって外に出ようとした時、スマホを見るとloinが何件か入っており意外な言葉が入っていた。

 

 ザフラ

[すまん、卑弥呼からの案で皆ゲストルームでゲーム大会に入ったから、多分見ているから大丈夫だと思うが、終わったら顔を出してくれ]

 卑弥呼

[ごめーん、loinでザフラちゃんにしか話てないから見てるもんだと思ってたから、多分焦っちゃったよねぇ! 琴さんもいるから多分大丈夫だと思うけど、バラバラな部屋に子供達置いておくの心配そうだったから」

 琴

[すいません、1人で各部屋回るより楽だったので、後ゲーム機ある部屋はゲストルームだけなので、あの騒ぎ後にすぐに入りました。因みに停電しましたが理美様から自分と冬美也様、光喜様で見に行くとloinで連絡あったので、そのまま双六大会で盛り上がってます]


 ホッとしたと共に怒りが込み上がった。

「こいつら……!」

 結局、ゲストルームに向かうと本当に双六大会をしていて驚いた。

 しかも、適当に菓子まで引っ張り出してだ。

 ザフラは何気ない顔で言う。

「停電大丈夫だったか?」

「ザフラ様‼︎」

 この後ザフラだけ怒られた。


「それで、侵入者は2人だけだったのか?」

 結局、夕飯後、後片付けでザフラとアミーナ、卑弥呼にフィリアと理美が当番でやっていて、侵入者の話になっていた。

「見た限りでは、それと各自で自習をどうしてこうも変えたんですか? 特に光照」

 ことの発端である卑弥呼に対して、敵意が垣間見えつつ、卑弥呼はこの時そうしたのかを伝える。

「あれ? 苗字? そうね、あの時の占いであまりよろしくなかったのと、ほら、妙な結界が張られる気配っぽいのがあったのもあって、早々に決めたのよ。序でにフィリアちゃんに意図的にいる様な匂いだけ付けてもらってさぁ」

 フィリアも手伝いたかったのだろうが、匂いだけそっと置いただけで本当に何もしていないのだ。

 そしてフィリアは泣いた。

「結局、私何もしてない‼︎」

「まぁまぁ」

 理美はどうどうと慰めているとフィリアが聞く。

「でもさ、よく空間使えたよね? 大分慣れたんじゃないの?」

「いや、普通にすると使い辛いけど、戦闘になると凄くイメージが通る感じ、そしてあの時ちょっと丸いピンクボールがもにもにされるのを思い出してしまってたから、多分悪酔いしてそう……!」

 完璧にノリでやっていた様だ。

 流石にフィリアも敵に同情した。

「悪酔いって敵さんが?」

 アミーナも一に情報共有で聞いていた。

「一から聞いたけど、吹っ飛んだはぐれ神をわざわざ機転効かせて開けたんでしょ?」

「んー、なんとなく、開けたら良いのかなって?」

「理美ちゃんって直感型でもあるから」

 皆、理美を知っている者はこういう先見よりも直感で動く節があるので、本当に見えてるのか疑ってしまう。

 丁度、その時、光喜が残りの夕飯の皿を持って来た。

「何話してるんですか?」

「フィリア先輩がまた戦闘に関われなくて泣いてた」

「理美ちゃん!」

 こうして一時の恐怖が徐々に薄れて行く中、万が一何が起きるか分からない夜を大人達が見回り、朝が来るまで緊張が続いているのをまだ光喜達は知らない。

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