侵入者
青年は海老の様な木の様な不思議な生き物を撫でながら話す。
「あー、そっか、分からないか、初めまして森沢木人って言います。このはぐれ神は、銃木」
『凄い名前だ』
『一瞬、あれを思い出してしまったが言わないでおこう』
『多分、理美ちゃんは凄いだけで冬美也はまたそっち系の漫画を思い出してそう』
「なんか何処ぞの漫画みたいな名前だなぁ」
「よく言われます。でも、もう覚えられないようにしましょう!」
その瞬間、一の頭に何かが飛んだ。
枝の様な、葉っぱの様な、一瞬で頭を貫通したのではと思う程だったが、頭が消えた。
逆に飛んできた何かが異空間に飲まれ、森沢の前に飛んだ。
しかし、それに順応して森沢も綺麗に避ける。
理美的には当たって欲しかった反面、もう少し別の場所に出せなかったのかと言う言葉が入り混じる。
「おっしー」
「お前、蹴るな、返って受身取れなくて頭打ったわ」
理美が何かをしたらしく、蹴り払いで一を守るが当人は頭を打っていたがっていた。
冬美也からすれば、運良く理美が動いたから無事だったのを説明するも、何故か理美から煽られ一は怒った。
「頭だけで良かっただろう、理美が条件反射で力使わなかったら一回は死んでんぞ?」
「一ちゃん、新撰組だったのに忘れたの? 牙○を使い熟すあの一ちゃんはどこへ?」
「なんでそうなるん⁉︎」
光喜は悪ノリ出来る程、状況がよくも無いを知って言う間に、森沢が再度撃とうと手をかざす。
「そんなことより! また来ますよ!」
「大気圏みたいな重力って出来ないの?」
理美の言っているのは、地球と宇宙の境目を再現させれば、多少時間を遅らせれるのではと言う意味だろうが、そんな上級なレベルはそう簡単に上手く行くはずもない。
「無理! と言うか、それすら突破する宇宙ロケット級撃たれたらこっちがやばい!」
確かに、光喜の言う通りだ。
万が一その大気圏の層を再現出来ても、宇宙ロケットを上げる様な大規模の力を持った物が来たらひとたまりもない。
そこで冬美也は考える。
「なら、全体を無重力に、マコは結界出来るか? アザラシもどきはどこだ?」
「いや、それってもっと危険じゃ?」
確かに実施訓練では上手くいったが、全体を無重力するにはまだ調整が難しい。
「ごちゃごちゃ言っていないでこっちはもう避けさせないし、異空間なんて開けさせないよ!」
森沢が手に力を込めると、今度は銃木の6本足が全て銃口になって、一斉に飛んできた。
その状況で土鬼が全てを薙ぎ払い、叩き落とす。
「も、ぎゅぎゅ!」
あまりの手際いや尻尾際が良く、皆が凄いと声を上げてしまう程だ。
いきなり、全てを薙ぎ払うだけでなく叩き落とす土鬼森沢は驚くも、ここである事に気付き話だす。
「相変わらず、無駄に動きが良いアザラシが! ……と言うか、総十はどうした? まさか、お前だけって事は主を喰ったのかお前?」
はぐれ神についてはついさっき知ったばかりの4人からすれば、全くよく分からないが、冬美也だけ意味し気な顔になる。
しかし、今の状況で敵に聞くという概念など毛頭ない。
「どういう話か全く見えないが、とにかくお前をこの屋敷から追い出す。光喜!」
「わ、分かった!」
光喜は言われるがまま、無重力にする。
あの時みたいにちゃんと遠心力も考慮した無重力な為、皆が浮かぶ。
こんな事をする位なのだから、考えのあっての事だろうと、一が聞くと飛んでもない言葉が返ってきた。
「冬美也、お前これからどうゆう風にするか決めてるのか⁉︎」
「いや全く」
「⁉︎」
流石に光喜も理美も驚き冬美也を見た。
あまりの馬鹿さ加減に森沢ですら呆れ返る。
「馬鹿馬鹿し、やれ、銃木」
直後、確かに飛んだが、銃木の方も飛んで行く。
光喜はそれを見逃さず、尚且つ撃ってきた物にだけ上と威力に思い切り重力を掛け、威力が半減した事で自分達は無重力を利用して回避。
「はっ? なん?」
マコだけ重力を感じていないのか、森沢の前に居た。
「あなたは、勘違いしていませんか?」
森沢はこの状況が如何にまずいか知っていた。
「なっ⁉︎ 総十んとこの神使! いつの間――!」
銃木が近くに居なくなり、いつの間にか異空間が開き、なんとか銃木は入らないよう努力するも、土鬼がにやりと笑ってこちらを見ているのに気付き、慌てて力を使おうとするも、下手に使えば自分が飛ぶのだから使えずだ。
無論、それを分かってこそ、土鬼は尾鰭で銃木を吹き飛ばし、中に入ったのを確認後、すぐに理美は異空間を閉じた。
「あっ! てめぇ、銃木が居なくったって、術が使えれば、それにこっちには怪異を!」
「ですから、この領域は既に我の神聖な結界内、出て行け‼︎」
マコの一喝でいきなり別次元が開き、そのまま森沢は吸い込まれて消えてしまった。
屋敷からかなり離れた位置で、別次元に森沢は吐き出され、異空間からは銃木が項垂れ動かない。
「うげっ‼︎」
雨に濡れても平然と立つ長髪の若い男が森沢に言う。
「おー、また派手にやられて」
ここで初めて冬美也の作戦にまんまと乗せられたのだと知った森沢はかなり憤怒し、若い男に再度向かうと言うが、既に見られた以上、何度向かっても現状太刀打ち出来ないを理解し諭す。
「ざっけんな! まだやれる! 真堂さん!」
「やめとけやめとけ、相手の案は敵を騙すと言うより、案を悟らせずに動かせた方が勝つ時もあるし、これ以上やれば生捕りされたらお前自身命を絶つしかないぞ?」
「そりゃ、そうだけど」
真堂はまだ納得の行かない森沢に再度言い聞かせつつ軽く嫌味も混ぜてやった。
「まずは情報共有だ。後、水島の奴がどれだけ情報を手に入れてくるか、本当はこちらに連れてきて欲しかったんだけどね?」
これ以上我儘な発言をすれば、どうなるかも森沢は分かって、悪態混じりな謝罪をしつつ、理美について話し出す。
「あーすんません、まさか一瞬だったとは、てか噂に聞いてた小娘の方、殆ど直感で動いてたんだけど?」
「見えるのではなく、体で反応出来る程強くなったせいで、バランスが悪くなっている状態だ。これで空間が使いこなされると厄介だが、今は様子見でもしてればいい」
体が条件反射の様に動くのとはまた違う、見えるのではなく体がそれに対応して動いていると憶測を真堂は建ててると、森沢としては今回の策士である冬美也に腹を立てるも、まだこちらに手があるとばかりに切り替え、倒れたまま動かない銃木に話しかけて驚いた。
「まっ、ちょっかい出してくれる馬鹿がいるからそれに頼りますかね、てか、銃木はって悪酔いして動けてないだと⁉︎」
悪酔いして口らしき部分を押さえ、ぴくぴくと動かさないでと目で訴える銃木が居たのだ。
真堂はついクスッと笑って言う。
「相当、悪い異空間を作ったなあの小娘」
「ふざけやがって! やっぱ戻って――」
怒った森沢にこれ以上余計拗らせない為に、真堂は手練れで無かったと言う意味で済ませた。
「慣れてない奴にそれだけで済んで良かったな。本来ならすり潰しとか切断とか普通にやるからな」
「うげぇ」
ただ、もっと痛めつけれる程の手練れだとしたら、優しさ程無様な弱さと笑い飛ばし、真堂は改めて本来の目的のものについて問う。
「優しさなら、無用情け、それは自分自身の首を絞める事だ。して、例の子はどのような感じだった?」
森沢はそれについて話すが、丁度邪魔になる奴がすぐに動いてしまったのも悔しがるも、それ以上の存在についても思い出し言った。
「んっ? あぁ、アイツはダメだ、回りが硬くって目覚める様子が全くない。子供3人だけなら纏めてでも連れて行こうとしたのに、あの新撰組の奴、すぐさま動いたし、先にやっておきたかったけど」
「先の話になる、分かった」
「それと……土鬼がいた。だが総十が何処にも居ない」
真堂はどういう事だと言わんばかりに驚くも、すぐに考え言葉にする。
「……まさか、自身を喰わせた……か?」
「なら、余計に核はソイツを捕まえるしかないじゃん」
「いや、今回は水島に揺さぶらせ、少し起こさせれば良い。出来るな? 水島」
すぐさま捕まえても目覚めていなければ意味が無い。
ならばとばかりに、和紙にそっと話しかけた。
和紙から声が聞こえる。
「分かったわ、今回表仕事に裏仕事入れて来たから怒りたかったから、八つ当たりして良いって事で?」
どうやら水島は気性の荒い人のようで、相当口調が荒く感じるのを聞き、真堂は軽く宥めつつ最初が1番とばかりに言った。
「本気になって殺すなよ? どんなモノもでも最初の状態が1番良い」
「はいはい、後で真堂さん、金剛のおっさんがやらかした尻拭いで来てあげてるんだから感謝して、それと木偶の坊くんも真堂さんが優しいからって甘えんなよ」
その直後に声は聞こえず、ただの萎びた和紙へとなった。
「くっそう、やっぱり聞こえてたか」
怖がるどころか物凄く悔しそうに言う森沢にとってはどうも、水島に先越されたのと、先に負けたのが悔しかったのだろう。
「では、森沢、今度はこの怪異と言われる場所に行って、回収後、B地区の違法を犯すと悩む資産家達の依頼を解消して来い」
「了解、でもまだ酔ってるけど」
「んー、仕方がない、おいで、銃木の治療をしなさい、トウコ」
あの時、雨に濡れた探し回っていた女性が現れた。
停電して一が見に行くと言ったきり、戻って来ない事に日向が心配して、見回りついでにスマホの電気で歩いていると、この屋敷の異常さに気が付いてしまう。
『水浸し? いや、管理人が定期的に見てるし、雨漏り対策もしっかり行っているのに?』
廊下が異常に水浸しなのだ。
辺りを見渡しても水浸しになる要因も無ければ、天井にすら雨漏りする様な場所ですらない。
「一体どうなっているんだ」
この状況で歩き回るのは危険だ。
だが、今はそうも言っていられない。
とりあえず、同じ管理者同士合流した方が良いと判断して、一歩踏み出そうとした時だ。
急に水が日向の足に絡み付く。
「――⁉︎」
慌てて振り払おうにも、水分が体に纏わり付いて来て離れず、一気に体を覆ってしまった。
「まずは1匹、次」
声の主が立ち去ろうとした時だ。
水に覆われた状態で、日向は話始め、声の主も最初こそ驚きはしたが水に関しての知識を披露した。
「誰が1匹だって? こう見えて、戦国を生きて裏切って戦時を生きた人間に対して軽視し過ぎてないか?」
「はっ? 無謀だ、こう見えて、真水だよ? 電気や雷如き効かないよ?」
「効かなければ、蒸発させれば良い。攻撃だけがそうだじゃないし、真水なら余計な養分をぶち込めば、ただの水だろう?」
雷に愛されし者である日向は、手からだけでなく全体で電気を纏いつつ、摩擦の様な状態で高熱状態にし、一定の状態で水を一切纏わり付かせていなかった。
「でも、空気が無ければ生きては行けないのも道理でしょ?」
言った直後に、風が一気に日向の纏う水分を蹴散らす。
「だから引っぺがし係はちゃんといるんだよ?」
声の主の後ろからジャンヌが現れた。
「おやおや、まさか歌う聖女が戦少女とは笑うわ」
「こちらもだ、今アイドルとして売り出し中の水島舞里じゃないのか?」
声の主にスマホのライトを当ててやると、今の時代に沿ったファッションを身に纏う女性が立っていた。
「ふん、魔水やっちゃいな!」
指示と共にトカゲの様な姿に幾つもの種別の足が多数付けた姿をしたモノが現れ、口から多数の水玉を吐き出し、その水が多方面に動き、ジャンヌを襲う。
しかし、全て同時に爆発した。
「流石におっかないぞ、ゼフォウ?」
日向の後ろからフィンが現れ、漸く人に会えた喜びを噛み締めつつ手を振るえば更に小爆発を続ける。
「そう? アイツら遅いから見回り序でに迎えに行こうとしたら、ぐるぐる同じ道歩いてたから会えて嬉しいんだけど?」
フィンの爆発で殆どが蒸発してしまう。
水島は管理者2人でも少々部が悪いと考えているのに、どうして自分の魔水が生み出した水が蒸発して使い物にならないのに納得がいかない。
『はぁ⁉︎ 大半水分が消えたんだが? 魔水の水は液状だからこその価値があるのに、殆どが蒸発しているだと? 普通有り得んだろう? コイツの能力は爆発だろ? どうして水分の方が消えて……まさかコイツ⁉︎』
考えた矢先にフィンを見れば、笑っているのだ。
そうして、フィンは手をかざした。




