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実施訓練終盤

 光喜は息切れと集中が完璧に事切れて頭が回らない。

「はぁ……はぁ……なんも考えられない無理、なんかさっきまで胃が浮いた感覚が抜けないんだけど」

「そんな面白い状況作るな、無理矢理頑張ってくれたし、一応ペイントが頭や致命傷部分にも掛かっていない。後は旗を取るだけだ」

「その、旗、琴さん、いるんでしょ?」

 上手く呂律の回らない光喜に対して、そこまで気にせず話す一はある物を取り出した。

「日向も忘れるな、あちらさんも武装していないと言い切れんし、きっとあの3人も弾の補充も兼ねて戻って来ている筈だ。そこでコレだ!」

「こ、コレって?」


 Aチーム陣地では、冬美也が一足先に入っていたが、日向と琴が立ち塞がり、木の後ろに隠れるしかなかった。

『くっそ、やっぱり動きが無いと思っていたが、そら力のある奴を野に放つ事はしないもんな』

 昨日みたいな琴が皆を追いかけ回すとか馬鹿な事をしないだけ、まだマシなのだが、下手な動きが一切取れない。

 一度、光喜と一が来るまで、ずっとここで待つかと考えた時、スマホのバイブが鳴った。

 振動音はこの静けさには煩い。

 完璧に油断した、すぐに切ろうとしたが、琴と日向はその振動音に気が付いてしまい、日向が無言で琴に指示し、琴も同意してこちらに向かってきた。

 冬美也は慌てて内容を確認するも、こっちに今から行くとしか書いていない、作戦もない酷い内容に心の怒りが一気に上がる。

『そんな内容なら最初から送るな‼︎』

 直後、琴にバレました。

「あら、こんな所に銀髪君が」

 琴は冬美也に銃を向け、ペイント弾を打ち込もうとした時だ。

 その瞬間に走り抜けようとする一の姿があった。

 流石に先に冬美也を片付けるつもりでいたが、日向1人の状態でこんな無防備で突っ込むなんてと思い、一を狙い撃つ。

 一は全て避け、ずっと走るも琴がすぐに日向に連絡する。

「すみません、一がそちらに向かっています」

「分かった、冬美也は始末で」

「了解」

 隙を見て、冬美也は琴が持っている拳銃を蹴り飛ばす。

 琴は油断をしてしまうものの、別の拳銃を取り出し冬美也を狙い撃ちした。

 瞬時に腕の一部を盾に変えてペイント弾の被弾を防ぐ。

 一気に逃げ出そうと試みるも冬美也と琴の相性は最悪で、琴が力を使い冬美也の力を無力化させる。

「頭が良いのでしたらもっと無力化させない方法があるでしょうが」

 銃口を冬美也の頭に向けた。

「くっ!」


 バートン

[脱落者、冬美也]

 バートン

[脱落理由、琴の拳銃により頭部にペイント付着]


 一が旗の近くまで来て、後一息という所で、日向が立っていた。

 後ろからは琴が拳銃を構えながら走り出す。

 日向は拳銃を構える。

『光喜は何処だ? リーダーがやられたら終わりとは書いていない……まさか?』

 旗の近くに立ったままの日向としては何処から来るか分からないまま辺りを見渡す。

 ジャンヌが空から飛んで来た。

「日向! 後2人何処に⁉︎」

「今1人一だけ、光喜に気を付けろ!」

『万が一、一が遺伝子に愛されし者、誰かに化けている可能性も⁉︎ ジャンヌは……遺伝子による能力では無い愛されし力は発動しない』

「ごめん! 遅くなった!」

 理美も来たが熊に乗ってやって来た。

 この時、日向は悩んだ。

『熊に乗っている以上理美も違う……まさか熊に? いや、熊に化けていれば理美に気付かれる』

「理美! 愛されし者の力を使って光喜を誘き寄せろ!」

「お、おすっ!」

 理美が指示に従い力を使おうとした時だ。

 いきなり皆のスマホが鳴り響くと共に旗が地中に沈む。

 Aチーム全員の言葉。

「はっ?」

 一体何が起きたか不明だ。

 とりあえずスマホ内容を確認する。


 バートン

[訂正、脱落者、冬美也ではなく、斎藤一]

 バートン

[勝者、Bチーム]

 

 日向は怪訝な顔になり、琴を見た。

 琴もだ。

「分かりません、あの仕草や性格もそのまま冬美也でした」

 そう言った直後に、一が倒れたかと思えば、徐々に光喜へと姿に変わる、いや戻った。

「も、もう、無理……」

 かなりの疲弊で倒れ込んでしまい、もう動かない。

 その間に土に潜った旗がいきなり飛び出したかと思えば、掴んだ手が出て来て、ジャンヌと理美が驚いて熊の後ろに隠れ、熊ですら何故自分の後ろにと言いたげな顔で、怯えて震えている。

「ゲホゲホ……! 斎藤あとで覚えてろ!」

 土から冬美也が出て来たと思えば、そのままアザラシもどきも出てきた。

 ジャンヌは恐る恐る顔を出して言った。

「何? お前ら何処まで作戦練ってたの? と言うかさっきまでメリュウと遊んでたと思ってたらそっちに行ったのか?」

「違う! 即興だ! オレは嫌だって言ったけど、能力はともかく誤魔化しイケるからって!」

 訳もスマホのloinをジャンヌ達に見せた。


 Bチーム

 ハジメちゃん

[ほうじ茶茶柱がそっちに向かってるの見えたから、お前、金属系なら液体系もワンチャンいけるんだろう?]

 冬美也

[やれるけどやりたくない! あれ、長時間出来ないし下手すりゃ死ぬ!]

 ハジメちゃん

[大丈夫大丈夫、これから自分を光喜に、自分はお前になってあの2人を騙くらかす! もちろん後での連中も騙すにはほうじ茶茶柱にも協力が欲しいんだよ。そいつがいればお前も大丈夫でしょ? 時間的にもセーフなわけで]

 冬美也

[どうやってやるんだよ。金属系でもこれ後付け扱いだから不可能だろうが?]

 ハジメちゃん

[それもこの金属を腕に付けると、変形が可能なので、直すのは琴がいるから騙せる騙せる! ほうじ茶茶柱と合流して土に潜ってひたすら進んでください! それじゃ、よろ!]

 

 後から日向もその内容を見て絶句する。

 こんなしょうもない作戦に騙されて、今に至るのだ。

 頭がペイント塗れの一が笑いながらやって来て訳を話す。

「いやー、すまんすまん! 軽く程度ならその辺の金属と合わせれば、変形が可能なのと、どうせ琴の事だから力使って戻してくれると思うてな!」

 人をなんだと思っているんだと言いたげな琴の目が見えない。

 相当怒っているのが殺気で伝わる。

 漸く辿り着いたザフラが殺意むき出しで、一の後ろに立ち拳銃を向け、皆に言った。

「とりあえず、我は腹たつので、皆にペイント弾撃ち込みたいのだが、賛同する者、全員構え!」

 全員弾を拳銃に込め、一達に銃口を向ける。

「あっ! 待て待て待て! 勝ったのにそりゃ無いでしょ! あー‼︎」

「……と言うかオレらもかよ!」

「……もう何もしたくない考えたくない」

 Bチーム全員ペイント塗れになりました。


 男子メンバー全員大浴場で、女子メンバーも同じく別の大浴場だ。

 光喜は湯船に浸かりながら言う。

「なーんで、煽ったんですか? 結局全員ペイント塗れになってるじゃないですか?」

「いやー、まさか全員構えるとは思っても見なかった」

 一も湯に入ると後から日向もやって来た。

「当たり前だ! あんなの賞賛に値もしない!」

 フィンと冬美也も体を洗い終えて、湯に浸かりながら言う。

「社長、俺頑張ったのに立てにめっちゃ撃たれまくったの慰めて!」

「と言うか、アザラシもどき使うなら最初から使えば良かったじゃん、そっちもメリュウ使って来たんだし」

 冬美也的には最初から大丈夫ならアザラシもどきを使った作戦なんて幾らでも思いつただろうと文句が飛ぶ。

 日向はメリュウに関して一応loinで確認していたようだ。

「一応、連絡して許可を貰ったんだ」

「なんだー、自分もちゃんと許可もらってからほうじ茶茶柱使って貰ったんだぜ?」

 大人組は笑って話すも、やっぱり光喜だけ置いてけぼりだ。

「ところで、あのドラゴンみたいなの何? 初めて見たんだけど?」

 冬美也は光喜の問いで伝えないとと思いフィンと一緒に簡単に説明をした。

「そうか、色々知らないことが一気に起きて頭こんがらがるからって後回しにしてたわ」

「理美ちゃんのとっておきの1つだよ。魂の片割れみたいな? 俺の知り合いにもそれ持っている居るんだよ」

「前世と言うべきか、そういう部族的なものがあって、人間側が死んでもドラゴンの方が結晶化して来世での欠落部分を補うって言う感じだ」

「大雑把に言われても何言ってるのか分からない……まだ頭回らなー……」

 よっぽどあの時の感覚が未だに頭が忘れさせない。

 まだ体がふわふわしている気がした。

 少しのぼせた気もしたが、まだ浸かっていたい。

 今出たら、この楽しそうな雰囲気と出来た喜びを忘れてしまいそうだから――。


 でも結局、のぼせると行けないと日向が皆と共に上がらせた。

 ホールまで行くと女子メンバーは皆、既に上がっており、理美に至っては、バートンに大き目な結晶を渡している。

「何渡してるの?」

「んっ? メリュウだよ、最近はバートンに預けてるの」

「どうして? さっき話聞いたけど、魂の片割れなんでしょ? それ離したらいけないんじゃ?」

 バートンが不思議そうに話す。

「修行の一環です。最近の事もありますが、今はそれで血で受け継いだ方を優先です。魂の方はある方出来るようになったので」

「アミーナ先輩、ジャンヌ先輩、話たんだよね? 番人の話?」

 理美が話をしたのを聞いていたので、知っているものだと思っているようだ。

「……確かに番人の話はしましたが?」

「誰が番人かって話はまだだったな……」

 流石に2人はそういえばそこまで話していなかった。

 2人の様子からして1番重要な部分を話していない事を察してしまう。

「あー」

「んっ? 何の話してるの?」

 冬美也とフィンも髪を乾かしてからやって来て、どうしたのかと思って聞こうとした。

「どうしたんだ? 皆して?」

「はぁ、どうやら私の話をまだしていなかったようで、と言うかこちらで話しますので、良いですよそんな事、一度コピーと会いましたでしょうに」

 バートンが全てを察して、アミーナとジャンヌを見た。

「その人が番人の1人と言うのを言い忘れた」

「と言うか、感情を昂らせた異世界の管理者達を宥めるのに手一杯だったので、そのまま」

「……だからか」

「えっ? 何の話に?」

 光喜の問いにバートンは答えようと口を開いた瞬間、急に扉が開いた。

「てでいまー! リミリミ! サバゲーどうだった?」

 桜夜が扉を開けて理美に声を掛けると共に一斉にバス組が流れ込んできた。

「負けた、一さんがあまりにも卑怯な戦法でボロ負け」

 理美の言葉に、後から出て来た一が怒って言う。

「嘘つけ! その後、ボロクソしたやろが‼︎」

「煽るから洗礼されたいただけですよね? 他のメンバー巻き込んで?」

 バートンに言われて、一が文句言いたげだけど言えずに謎の声を発するだけだった。

「うぇぇい」

 その直後、もう頭で考えていたメンバー達は次々と書く予定を口にし、食堂へ向かって行く。

「後で、反省会するけども、その時にでも話しましょう。まずは、皆さんレポート時間を設けますので、あなた方も今回の事を簡素で良いので書いて提出してください。大人の皆さんも」

「ふぁ?」

「反省文だろう。もう、大体はどう書けば良いか決めたんですぐ取り掛かれる」

「そうですね、こっちも既に書けます」

「結局ガ○クマを呼んで騒いだだけだったからなんて書けば良いんだろう?」

「なら、隙見て突っ込んできた時でいいじゃないの? アレは俺が1番ビビったわぁ。序でにそこまでのは考えておいたしー」

「オレも書けるし、光喜なんか1番書けるの多いじゃないか?」

「そうだ、我を驚かせたんだ!」

「い、いや、あの時のまた出来るか分からないし……」

「わたくしは見るのに夢中だったのが敗因だったのを書けば良いですね」

「私も力に依存しすぎてたのでそちらでも」

 ただし、一だけが残った。

『……仕事の続き出来ん!』

 どうやら実施訓練のレポートなんて考えてすらいなかったようだ。

 こうして、別々の行動をした筈が、皆同時にレポートを書く事になり、大人も含めて皆夕食まで集中して書いていた。


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