表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/92

深夜の出来事

 その夜、呻き声に目を覚ます。

「ご……ごめ……ん……うぐっ! ゆる……して」

「……なんだ?」

 光喜は起き上がり、辺りを見渡すと、フィンが冬美也の方で介抱しているのが見えた。

「フィン?」

「おっ起きちゃった社長」

 あまりに見ていて良いモノではない。

 起こしてあげた方が良いのではと思ってしまう程だ。

「冬美也酷く魘されてるけど、起こさないの?」

 しかしフィンはそれをしたくても出来ないようだ。

「起こしたいけど、下手に起こすと攻撃喰らうかもだし、起こしてまた魘されてるの嫌だろ?」

 テレビやネット等で軽い知識ではあるが、トラウマで魘され起こそうとした人間に攻撃したと言う話だ。

 それにフィンの言う通り、起こしてあげてもまた同じ悪夢を見たら意味が無い。

「ま、まぁ正直」

 実際、光喜自身も悪夢に悩まされた事もあり、他人事では無いので、凄く心配した。

 フィンは冬美也の悪夢の理由を教えてくれた。

「詳しい事は言えないけど冬美也には、昔親友を亡くした過去があってな。こんな調子でよく魘されてたんだよ。ちょっと前までは普通に寝てたんだけど、最近ねぇなんかの拍子でまた見るようになって、本人は誰にも言うなって言うけど、せめて親には話せよって」

 どうやらまだ総一にも悪夢の話をしていなかったようだ。

「ってことは総一さんにも?」

「そうなんだよ、まだ話してないっぽくってね」

「俺はクラスメイトの大半失って、生きていた友達にも嫌われて、ここの聖十に来てから色々変わって、助けられてばっかりなのに、辛いな……」

 光喜も形は違えど、ずっと今も苦しんでいる。

 最近は落ち着いているがいつ悪夢に襲われるか分からない。

 だからこそ、普段から仲良くしてくれてるだけでなく、助けてももらっているので、今を救ってやれないのが辛いのだ。

 フィンは光喜の思いやりを感じとり、昔本当にあった話をしてくれた。

「悪夢見る者同士辛いの分かるけど、冬美也を最初起こした時、俺が死にかけたことあるから、正直起こしとうない。お前も一度アイツの異能を見たらしいけど、冬美也の感情高ぶると抑え効かなくなる時あって、油断すると体金属になって変形するから余計危険なのよ」

 色々思い出す光喜は、そういえばホテルで擬似空間内に起きた襲撃で、冬美也の体が変形と金属類になっていたのを鮮明に覚えていた為、あれはもっとシンプルに攻撃出来るのかとゾッとしてしまう。

「うわぁぁ……」

「でも、社長は普通に接してくれてるから結構嬉しいぜ」

 フィンが丁度笑って言った直後に魘されていた冬美也は起き、2人が居るのに表情には出さないが驚いているようだった。

「……なんで、お前ら集まっ……てる?」

「お前のせいじゃ」

 光喜はフィンの言葉に笑いつつ、冬美也に聞く。

「冬美也、何か飲む?」

「いや、良い……ごめん、ここ最近酷くて……」

 ゆっくり体を起こして、顔に付いた汗を拭った。

 流石にフィンもお手上げのようで、専門医に行くべきと言うも、あまりいきたがっていない。

「白澤のとこ行った方が良いんじゃね? 俺だって知識はあっても経験は付け焼き刃だ。ベテランに頼るべきだ」

「……考えとく」

「合宿終わったら、すぐに行け」

「う……ん」

 こうなると頑なに行きたくないと言いたげな雰囲気だ。

 一度一緒になった時もあり、まさかと思って光喜はそれとなく言った。

「そういえば、白澤先生の所の看護師さん達とも仲良かったし小さい頃からの付き合いだったのもあるから行きづらいの?」

「全くその通りです」

 冬美也の白状になんだよと突っ込むもフィンが心配して聞く。

「明日も早いし寝れるか?」

「お前らが寝付くまで起きてるから寝ててくれ」

 結局、魘された本人も気にしていた。

 仕方がないことだ。

 深い眠りにつくまで時間が掛かるだろうし、下手にまた同じ悪夢で回りを苦しめたくもない。

 イビキとは全く違う。

 本人は気付かないで身体を心配してしまうが、同じ悪夢は本人の精神にも悪影響を与え、回りも心配させてしまうのだ。

 せめて、寝付いてくれてれば多少安心できるのだろう。

「ちゃんと寝ろよ」

「おやすみ」

「んっ」

 多分、この後冬美也一睡もせず朝まで起きる気だ。

「なぁ冬美也?」

「何?」

「実は一応睡眠誘導剤あるんだけど?」

 光喜なりの気遣いだったが、冬美也からしたら下手すると危ない事なので、やんわり断られた。

「やめてくれ、それはお前用だし、万が一アレルギーとか出たらお互い困るだろう?」

「そうだけど……」

「気持ちだけ受け取っておくから、早く寝た方が良い」

 促されるまま結局寝る事にした。


 朝、光喜が5時に起きると冬美也の姿は無く、少し慌ててフィンを起こす。

「フィン、冬美也が居ない⁉︎」

「……あー多分、眠れなくって食堂かどっかに行ったんだろう? 下手に出たりしないよアイツは」

 きっと食堂かどこかを散策しているのかと助言を受け、そう思って朝の準備をした。

 そうして廊下に出て、歩いている時だ。

 ふと、大きな客室の扉が開いていて覗いた時、冬美也が眠っていた。

 なんだここかと軽く言いながら光喜は入ってさらに驚く。

「ちょ! 何やってんの⁉︎」

 理美が座ったまま眠っていて、その膝に冬美也は眠っていたのだ。

「あらっおはようございます」

 その近くに琴が1人掛けソファーに座っていた。

「おはよう、ございます? あ、あの⁉︎」

「パニックになりますよねぇ、安心してください。ずっと見張っておりましたので、事案はありませんし、理美様が寝付けないのならと膝を貸したのは良いのですが、すぐに眠られて動けなくなってそのままですので」

 普通なら部屋に帰しそうなものだが、琴が何故かそうしなかったのが不思議だった。

 光喜はどう言えば良いかさっぱりなままとりあえず流してしまう。

「そ、そうなんですか」

「はい、最初は暑苦しくて眠れなかったと言ってましたけどもあの汗だく具合から悪夢を見てらしたようで」

 その事で、光喜も申し訳なさそうに言った。

「……はい、俺達が寝付くまで起きてるって言ってて」

 琴は寝付くまで夜間の見回りを止め、冬美也と話をしていたが、途中で理美も入って寝ぼけたまま眠りに入るのをずっと見ていた為、それを思い出す度に笑ってしまう。

「結局眠るのが怖くなったんですね。夜回りをしていたので、少し話したら帰そうとしたら、逆に寒すぎて起きてしまった理美様が寝ぼけてそのまま冬美也様を寝かしつけに入って……すいません、ちょっと笑ってしまして」

 しかも、居なかった光喜ですら想像がついてしまうほどだ。

「一部始終想像がつくんですけど」

「でしょ」

 つい笑ってしまうと、理美が起きた。

「体……痛い……と言うか、どういう状況?」

「いや、こっちが聞きたいんだけど?」

 光喜に言われて、理美は必死に思い出すもこの状況になったまでの記憶が夢に消えてしまったみたいだ。

「ごめん、寒くて起きて冬美也が眠れないって琴に聞いたまでは覚えてるんだけど、そのまま寝ちゃったみたいーんー! とりあえずおはよう」

 背伸びをしながら、起きようと思っていても、冬美也をどう動かせばと言う顔で理美は2人を見る。

 勿論、光喜も早く部屋に戻ってもらいたいと思うも、眠っている冬美也をこっちで動かすのもおかしいだろうと思ってしまい手が出せない。

「まだ皆起きてないと思うから早く部屋にってどうしようか、冬美也?」

「あっ……どうしよう」

 だが、冬美也の顔が笑っているのを見て、光喜が先に気付いた。

「いや、こいつ起きてるぞ!」


 6時前、まだ朝食時間には早いので、光喜は軽くジョギングを始めようと外へ出ると、ジャンヌがジョギングする為に軽く体操していた。

 ジャンヌは早々に先程の経緯を話し出し、どういう事なのか聞いて来た。

「おはよう、理美が居なくなっていたが、さっき戻って来んが、なんか満足した顔してたんだが? 理美のアースも笑って話そうとしないし、光喜に聞けと一点張りだし」

 そういえば、女子の部屋割りはこちらは知らない。

 とりあえず、光喜が軽く一緒なのかと聞くと、ジャンヌは理美とジュリアが一緒の部屋だと言う。

「あぁそれは――」

 仕方がないので、ジャンヌにジョギングしながら話をする。


「ぶはははは! 面白い事もあるんだな!」

 凄い笑い方で、走り続けるジャンヌは泣き笑いすら見せる。

 想像するだけで、一部始終理解出来るのもあの2人ならではとまで口にしていた。

 光喜は一応冬美也に対して悪夢の事があったからと説明するも、理美の膝枕で寝付くのもなんなんだろうかと笑いが出て来てしまう。

「悪夢見てたのは事実だし、少し落ち着いたらこっちに戻る気でいたんだけど、寝ぼけてたとは言え、本当にそれするんだって思って」

「バカップルだからなぁ」

 あまりこの話を続けるのも可哀想な気もして、光喜は別の話を変える。

「ジャンヌ先輩も朝走る派なんですね」

「そうだな、時間があればやっている、光喜もか?」

 ジャンヌの問いに光喜は昔の癖で続けていると伝えると、1番気になっていたのだろう問いが返って来た。

「俺は昔やっていた陸上部の癖が抜けていないし、あの後辞めちゃったけど、これだけは続けてるんです」

「光喜は運動辞めて、不登校時代の時は太らなかったのか?」

 そう、運動部を辞めると太ってしまうと言う話だ。

 大体は食事が変わらないのが原因と言うのはよく言われるものの、実際光喜は逆だった。

「いやぁ、食欲もあの時にガクンと落ちちゃってむしろガリガリだったみたいで……」

「想像がつかん」

「髭も髪もボウボウで太らせろって白澤先生の助言で、咲さんが凄い色々食わせようとして、食べはしたんだけど、一度どころか二度三度、リバンドで激痩せしちゃって、ここまで戻すの大変でした」

 光喜自身も太りやすい体質だと思っていたが、太ったと思ったら体調壊して激痩せを何度か経験して、流石の白澤に栄養管理士等の経験者を紹介して太っても体調を崩さない食事をさせつつ、運動もさせて少しずつ元に戻して現在に至るので、ついよく自分今生きてるなと笑ってしまう。

 その笑いにドン引きするジャンヌは一言だけしか言えない。

「お、おう! 想像がやはりつかん!」

 丁度ここで一周回り、時間も朝食に後少しなので、部屋に戻って着替える事にした。

「今日は午前中勉強して午後からはなんでしたっけ?」

「管理者は皆、午後実施訓練だ。他の子達は外へ出て遊びだ」

 しおりには近くに美術館や観光地へと回り、その後軽くレポートを書くのが今日の主だ。

 が、今回は管理者の実施訓練、心が一気に病む。

「えー俺も遊びたい!」

「分かる! でも、たまにしておかないと、下手な時にやる羽目になるんだから諦めろ」

 ジャンヌも本当ならジュリアと一緒に見て回りたいと言っているが、光喜はある言葉に反応した。

「下手な時って?」

「授業中にいきなり呼び出しされたと思ったら、そのまま実施訓練をおっ始めて騒ぎになった」

「最悪じゃん!」

「だから、まだ休みに使って遊びながらもやるのが1番だ」

 結局、大事な仕事や授業等やっている最中にいきなり抜き打ち実施訓練をしたと言う、なんとも傍迷惑な事をするのかと突っ込みたい。

 せめて何事も無く終わりたいと願うしかなかった。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ