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肝試し

 ご飯を食べ、スイカ割り、フラッグ等をした後、皆は勉強時間の為に屋敷に戻る。

 結局海には入らずに、それなりに楽しんだ。

 が、一体いつ強化合宿の名目で呼び出されるのかと恐々としたままの光喜がいた。

 部屋に戻ってあまり気の進まないまま、冬美也に聞いてみた。

「このまま、強化合宿ってどういうこと?」

「まぁ、管理者あるあるだし、3泊4日もあるけど、それだけで伸びるとは誰も思ってはいない」

「なら何故?」

「んなもん、それまでの修行の成果を見るのと、今後の課題を見る為だ」

「実技テストじゃんかぁぁぁ!」

 3泊4日しかないのに、そんな強化合宿してもたかが知れてる。

 だからこそ、今まで行ってきた修行の成果を見せる場面と言えば、ある程度意味が生まれ、納得も出来た。

 光喜からすれば、筆記の期末が終わって、高等部には無い宿題だが予習するならと参加したが、実際これなのでやる気が一気に薄れてしまう。

「まぁまぁ、社長、これって皆やってるらしいし、そこまで嫌がることじゃないし」

 実際、能力がある異能があると誰もが通る道であると諭されるも、光喜は修行自体はそこまで嫌ってはいない。

「嫌がってはいないけど、ずっと責められっぱなしで心が折れそうになっていて……」

 反省会と称してダメ出しの嵐に心が参っていた。

 流石にずっとダメな筈でないだろうと冬美也は思って、どこまで出来るようになったかを聞いてあげた。

「どこまで出来るようになったんだよ?」

「とりあえず、的になっている缶だけ潰せるようになった」

 色砂も飛び散ることもなく、缶だけを狙って潰せるようにはなったようだ。

 フィンもその後の修行を聞く。

「ほう、それから?」

「最近だと複数の缶を不揃いで置かれて、指定された缶同時に潰す練習になったけど、出来ないんだよ! なんなんだよ! 漫画とかアニメとかゲームなんて殆ど複数なんて描かれてないんですけど‼︎」

 まさかの複雑な事を始めているとは思っておらず、どんな話でも範囲と力加減の話は多いが、複数の中から指定されたモノだけで他を潰さないと言う難しい修行にはフィンも冬美也も驚き、今回の強化合宿及び実技テストでコツが掴まればと励ます。

「これまたおっかねぇのをやってますなぁ」

「意外とその実技テストで感覚を掴めれたら良いな」

 だが、返って光喜を追い詰めてしまう。

「慰めにもなってないー!」

 扉を叩く音と共に開いた。

「冬美也? ゼフォウ、如月先輩、もう食堂で勉強会始めてるけど? どうする?」

 理美が迎えに来てくれた。

「行くよ。待っててくれ」

 冬美也はすぐに準備を整え、ほら急げと促す。

 続いてフィンも準備を終わらせる。

 1番モタモタしたのは光喜だ。

 やはり無駄話をして準備を疎かにしたツケだろう。

 それでも、急いで準備をして廊下に出た。


 理美に連れられ、食堂に入る。

 そこは普通とは違う、貴族が使うような長いテーブルに、洋館らしい佇まいだ。

 もう皆思い思いで座って勉強している。

 なんなら、既に一と琴が他の中等部の宿題の面倒を見ていた。

 日向に至っては冷えた麦茶を出している。

 理美が適当な空いている席に座るとやはり冬美也もその隣に座った。

 なら自分もその近くでと光喜が行こうとした時、ザフラに声をかけられる。

「君はこっちだ」

「俺も好きな所に座りたいんだけど?」

 あまりあそこの威圧感が凄い席に座りたくなかったが、ジャンヌのたった一言の圧に屈したのだ。

「ダメ」

「うぅ……」

 結局、ザフラとアミーナそしてジャンヌが集まっている席になった。

 30分前後、ただひたすら勉強をする中で、最初に口を開いたのは意外な事にザフラだ。

「今日の日程で、君の夜の予定は我と他の管理者達で見る事になったから、寝るなよ」

「何時?」

「夜の10時です。明日はほら、肝試しとか色々やるみたいですし」

 気乗りしない声で光喜は答える。

「そういえば、明日の朝から勉強会だったね」

 アミーナは更に明日の午後の予定を伝え、余計に光喜が落ち込んだ。

「ですが、午後は自由時間を設けているので、そこで実施訓練を行おうと考えていますので」

「うげっ!」

 落ち込む光喜にジャンヌは慰めとも取れない慰め方をする。

「そう落ち込むな、理美もその予定に組み込まれているし、皆が皆、普段発揮出来ない力をここで使っておくことで、どれだけ使えるからどれだけ技量があるかの確認もしてるんだから」

「ジャンヌ先輩、それ慰めにもなりませんよ」

 半泣き状態の光喜を見て、麦茶を入れてあげながら日向も言う。

「まぁ、誰しも管理者だけでなく、そういう異能も通る道だし、力の加減も良い加減慣れて来た頃だ。一度思う存分振るっておかないと、全力でしたい時には出ないからな」

「日向さんは最初の実施訓練なんて、もろ戦とかじゃないんですか?」

「残念、君と一緒で、使い方が分からなくって右往左往してたさ。下手すれば山火事普通に起きたし」

 光喜は本能寺の変に対しての寺で言ったつもりでいた。

「それは寺を燃やしたとか言うあの?」

 だが、日向は違う方を言う。

「……それはちゃんと松明を持って」

「怖い怖い」

 松明持って燃やしたのかと思っていた。

「いや、本当に寺燃やしてない筈なんだが……麓の方を、でも結局本分忘れて麓で遊び呆けた連中はきっちりシメれたからヨシだろう?」

 ここで、食い違いに気付き、余計鳥肌が立つ。

「余計に怖い!」

 ちなみに日向が言っているのは、比叡山焼き討ちの話です。

 ジャンヌが話に割って入るも、そっちはそっちで物騒だ。

「昔、そんぐらいするだろう? 邪魔ならそのまま押し通していくのが普通だろう!」

「ジャンヌダルクは確か、戦中に村とか普通に潰して行ったと言われていたらしいですが?」

 聖女、戦乙女等色々言われているが、実際、ヨーロッパでの戦のぐだぐだは、基本ルールが存在し、そのルールに基づいて動いていた。

 しかし、ジャンヌはそれを無視して決行したらしく、かなり反感を買っていたと言われている。

 ただジャンヌとしては意外な事を言った。

「はっ? 進んだだけだが?」

「いや、フランスもイギリスも日本みたいに移動を促すとかせず、突っ込むのはあまりしなかったと聞いたが?」

「だから、進んだだけだが?」

「だめだ! 埒が明かない!」

 まさかの脳筋だ。

 流石の回りに座っていたザフラとアミーナもドン引きした。

 そんなこんなで、もう夕方になり、中等部の生徒達も若干進み具合の誤差はあるものの、かなり進んだ。

 勉強道具を片付けて、夕食を済ませた後のお楽しみ。

「と言う訳で、肝試しをしよう!」

 一の一言で皆がわいわい盛り上がる。

「やっぱりやるんだ」

「しおりにも初日にやるんかって思うたけど、他にも色々日程組まれてるし、今のうちにやった方が良いじゃん」

 結構ノリノリの一に不思議な感じがして、こうきはジャンヌに聞く。

「こういうの結構好きなんですか?」

「どっちかといえば、脅かす方だな」

「脅かす?」

「話が上手いんだが、結局新撰組で起きた話なんだがな。なんだったか、皆が酒盛りしていて、一が1人で用を足しに行った時の帰り、この時代はまだ電気の無い灯籠等が多いので、薄暗くてな。しかもよりにもよって月明かりの無いどんよりとした雲のせいで何も見えない。怖いなと思いながらも、いつも皆で住む屋敷だからそこまで気にも留めなかったが、薄暗い中、提灯だけが浮いていて、他にも便所か程度で避けるかと思ってた時、この世と思えないモノが凄い形相で睨みつけるのだ」

「ひっ!」

「驚き過ぎて、一も縁側から落ちた」

 恐怖よりもしょうもないネタが挟まってしまい、なんか腑に落ちない。

 しかも、琴までもこの後のオチも教えてくれた。

「あれは確か聞きましたが、土方さんが悪酔いしてしまったせいで、眉間に皺寄せただけで、しかも髪の毛も結っていないのもあって余計怖い感じになってたらしいですよ。その後こっ酷く怒られたとか」

「そこ! 誰にも話していない黒歴史を話すな!」

 あれって黒歴史なんだと思って、それ以上光喜は話さなかった。


 結局、脅かし役と脅かされ役で二手に分かれてやる事になり、脅かし役に光喜と理美とフィンとジャンヌと琴がなると、理美がそっと光喜に教える。

「よかったね、脅かし役で」

「いや、脅かし役って待つのが怖いというかなんと言うか」

「だって、琴さんの演技超怖いんだよ。貞子みたいに来たかと思ったら、全速力で走って来て、別の意味で死ぬかと思った」

「こわっ!」

 それはそれで怖過ぎて無理だ。

 脅かし役となったフィンも去年は脅かされ役だったのかよく分かっていて、普段驚かなそうなタイプを本気で脅かし追いかけたようで、トラウマになっていた。

「いやぁ、今回はどうなることやら、俺と冬美也も悲鳴あげながら全速力で走って、次の日死んだもんよ」

「死ぬな筋肉痛で」

「冬美也、幽霊とか脅かし役にもびびらないの知ってたから、教えるんじゃなかった……」

「脅かし役を2年連続させるな、こっちもビビったわ」

 ジャンヌですら、本当に酷い目に遭ったと言う嫌な顔になっている。

 かなり不評というか、脅かし役としては満役だ。

 一応子供であるので、脅かし役は二組で組む事になった。

 どこで琴が脅かすのかと回りはドギマギ中です。

 光喜とジャンヌがペアとなって、どう脅かすのかと光喜はジャンヌに聞く。

「どうやります? 道具も無しに?」

「修行の成果と言うヤツを見せてくれ、こっちは軽く風で耳元に吹かすだけだ」

「あっ! ズルい! えぇぇどうしようかなぁ」

 光喜が悩んでいると、ニュートンが出てきて言う。

「あまり使うなよ。ちょっと足引っ掛ける程度にしろ通るチームの1人だけ」

「成る程、それだけで良いのか。それなら……ひっ‼︎」

 振り向くとセフィラムが覗いていて腰が抜けてしまった。

「あー、どうした? 敵かイビトか?」

「違う、なんとなく、この姿で出てくれば、驚くかなと?」

「管理者同士か番人なら十分発揮出来るが、今回残念ながら理美は脅かし役残念だ!」

「理美ちゃんを脅かしてどうするの!」

 そんな会話中、小治郎と広樹と桜夜が来た。

 先程の役通りに、光喜が先に1人足を重力で軽く使って引っ掛け、ジャンヌが助けようとした1人に風を吹かす。

「ちょーつまんねぇ! なんで今回俺らじゃねぇんだよ! しかもジュリアと離れるし!」

「珍しいよね、嘉村さんが脅かし役って」

「そうだよねぇ、リミリミが脅かし役するの意外」

「つーかぁ、中等部はそこそこ入ったのに、結局来れる連中がいないのおかしくね? 7500円払えば3泊4日で宿題終わらせてイベントしまくって遊べるのに」

「あくまで人の家借りてるし、殆ど掛け持ちだったし」

 そう言う話をしている間にそっと力を小治郎の足に掛けると、足が上がらずに転けてしまう。

「あっ痛‼︎」

「小治郎大丈夫? ほら、手を貸して」

 今度はジャンヌが力を込めて、ふっと広樹の耳元に風を吹かす。

 広樹は桜夜だと思って、小治郎を立たせたと共に言った。

「桜夜、耳元に息吹きかけないでよ。くすぐったいだろ?」

「はっ? あたしずっとここにいたけど?」

「おう、桜夜はずっとそこにつったたままだぞ?」

「ちょ! 怖い怖い! 行こうもう!」

 小さな恐怖を抱きながら、広樹が足早に急いでしまい、慌てて2人は追った。

「まぁ、下手にここで派手な事したら、次が可哀想だし、オオトリが琴だし」

「いや、追いかけられるの知ってたら、皆走るんじゃ?」

「そこだ! って言いたいが、古参組は相当足が速いのに、琴に全員捕まったんだ。そして全員が言う。新徴組って皆足速いのかと!」

「絶対それ言ってないよね?」

 ジャンヌはバレたと感じて笑って、更には誤魔化した。

「はははははっと、来たぞ。冬美也だ」

 どっちにしろ光喜が不満で言葉を溢す。

「はぐらかされた」

 すぐに先程の力を使う準備に入る。

 冬美也とジュリアとザフラとアミーナだ。

「どうしてこうなった……」

「初めてですよね、複数人で」

「そうなのか? 普通はどの位なのだ?」

 ザフラの質問にジュリアが答える。

「去年は2人で10分置きにだったんですが、琴さんで皆ゴール出来ずに終わりました」

 一体どういう事かとザフラとアミーナはお互い見合わせ、よく分からずにいると、冬美也もあれだけはおかしいと言いたげな声を出す。

「あれは悲惨な事故だろ?」

 アミーナですら、意味が分からずに冬美也ですらと思ってしまっている。

「あなたは、幽霊見えるからそこまで怖がらないですよね。寧ろ、あなたを脅かす程の琴とは?」

「あんなのスプラッタホラーだろ……理美ですらビビり過ぎて立ったまま気を失ったぞ」

「本当に悲惨な事故でした」

 2人の姿はあまりにも恐怖を超越して明後日の方向へと向いていた。

 そんなグループに光喜が同じように誰かをと思ったところ、アミーナが本気で驚き、顔が青ざめる。

「ひゃぃあぁぁ‼︎」

 冬美也はアミーナの驚きにツッコミを入れつつも、先を確認しに行き、光喜とジャンヌに気が付いてしまう。

「どんな悲鳴だよ! ……? あっ居た!」

 せっかくの脅かす機会を奪われた光喜からすればたまったモノではない。

 しかも何もしていないのに、アミーナが驚いてしまったせいで、ここには幽霊がいるのではと心配になってしまった。

「居たじゃないよ! 仕掛ける前に気付かないでと言うか、先にアミーナ先輩が驚いてたから何か居るかと思うじゃないか!」

 その一言で、冬美也はそっと光喜とジャンヌに近付き小言で話す。

「いや、その、管理者的な奴では? そんな怖いの居るのか?」

 冬美也の言葉にしまったと何かに気付くジャンヌは後ろにずっと居たセフィラムを指差して言った。

「すまん、ボクのセフィラムを出したままだった」

「あー」

 先程驚いた光喜も再度確認すると確かにこれはこれで管理者は悲鳴ものだ。

 アミーナにとっては、脅かし要素では無いアースに驚かされたのだから、怒って当然だった。

「出さないでくださいよ! しかもこんな暗い時に!」

 ジュリアはなんの話なのかと聞こうとした時、遠くから悲鳴が聞こえ振り向くと、先に行っていたグループと何故か、理美とフィンも混ざって全速力で走って逃げているのが見え驚く。

「神崎先輩……ふぇ? 悲鳴? 理美ちゃん達がこっちに走って来てます」

「はっ? どう、今度は何になって襲っているんだ、琴は⁉︎」

 ジャンヌは草叢から出て来て驚いた。

「先輩! 逃げて‼︎」

「あれはおかしいって!」

「怖い怖い‼︎」

「死ぬ! 冬美也! ジャンヌ先輩達逃げないと捕まるぞ!」

「置いて行ったら怒る?」

 理美の一言で全員がキレる。

「怒る!」

 その後ろから、見たことのない化け物が追いかけてきた。

 両手に日本刀かと思えば、エンジンを取ったチェンソーだ。

 またかよと冬美也が呟くと同時に全員逃げ出す。

 そこからまさかの鬼ごっこが始まり、約2時間走りっぱなしになり、結果戻れたものの、ゴールは出来ずに終わった。


 庭先に戻ってきた全員は汗だくで身動きが取れず、ぶっ倒れたままだ。

 一とバートンは呆れていた。

「そんで、結局琴さんに皆逃げ回って、動けないと」

「どうして、同じネタなんですからそこまで逃げずとも?」

 流石に2年連続でさせられた小治郎はブチギレる。

「先生、来年あったらあんたも出ろ! 怖過ぎんだよ!」

「すいません……10時からの修行しないとダメですか?」

 日向も光喜も理美も動けずにずっと息切れしたままを見て、今日は諦める事にしたが、琴に対して突っ込んだ。

「こうなると、難しいし、他の連中巻き込んでやるんじゃないぞ、琴。どうせするなら、肝試し後に鬼ごっこ的な修行とか考えてたのに」

「いやぁ、手加減って難しいですよね」

 とっても満面な笑みな琴に一は突っ込むしかなかった。

「どこがじゃ!」

 そうして結局、夜は深まり、風呂に入って就寝となる――。

 

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