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そして、さようなら

 細川太樹は雨宮竜也が嘔吐しているのも、目の前で明日香奈香が酷い死にかたをしたからと考える、考えるとはと感じた瞬間、自身にも異変を感じた。

 明日香奈香が死んだ死にかたが、あまりにも非現実的な死である為、まだ恐怖を感じるまで時間があった。

 でも、自身がおかしいと分かった瞬間なのだ。

 これは今度は自分が食べられると言う恐怖他ならない。

 雨宮竜也を助けるよりも、この場から離れないと今度は自分だ。

 だから、急いでバイクにエンジンを掛け、跨いで走り出していた。

 死にたくないの一択で、アクセルを噴かし、道路に出る。

 金髪ショートヘアーの少女はスマホを出して誰かに連絡した。

「日向、1人バイクだ。後任せる。残り1人は私が処分する」

 別の場所にいた茶髪でオールバックの眼鏡を掛けた男性が返す。

「分かった、こっちで対処する。ジャンヌも気を付けろ。今回は敵意無しのガキ共だが、下手にネズミに噛まれたら困るからな」

「うん、気を付ける、反吐吐いてるから坂本さんに衛生面的に危ないから掃除頼もう」

 ジャンヌが連絡を終え、SNSでその坂本と言う人に連絡していた。

 雨宮竜也は先の明日香奈香の様に自分が殺されると諭し、悲鳴を上げながら逃げた。

「やべ、坂本さんに怒られる」

 ジャンヌはそう言いながら、ゆっくり歩き出す。


 どこを走っているのか分からず、とにかく逃げないと捕まると言う概念に囚われた細川太樹は、道路から細い道に入って出て来た直後、子供が歩いてきて、慌てて避けた。

 子供はかろうじて当たらずに済んだが、細川太樹はバランスが崩れ、倒れてしまいそのままバイクは火花を散らし滑って行く、細川太樹はヘルメットをしていなかった為、頭から血を大量に流すも、逃げないと食べられてしまうそれだけで歩き出す。

 バイクが走行中の車にぶつかり爆発音が聞こえるも、バイクは何処かへ消え、車は生垣に突っ込んで動かなくなった。

 それを見た細川太樹は声を出す。

「い、異世界から……来た……ら、物も……食べ、るのか、よ!」

 とにかく逃げようと必死に歩くと、日向が立っていた。

 細川太樹の頭を掴み言った。

「イビトは食べられれば、多少は流行病程度で収まるし、余計な文化も入らない。でも、残ると酷い流行病になり、パニックになるのも必然。余計な文化で世界崩壊もあり得る。たまたま運良く物も食べてくれたから良いが、君やさっきの子みたいに勘付いた子は生き残られたら困るん……だ!」

 日向から電気が流れる、細川太樹は感電し、動けなくなる。

 目が上へと上がり、飛び出しそうになって行く、そのせいか目から血が出て来た。

 全身から湯気が吹き出す。

 ただただ恐怖も何も考えられない、脳が追いつかない。

 日向は彼に言う。

「イタズラ半分で何か余計な事をしてココに辿り着いたのなら、親御さん達には申し訳ない。コレも管理者の仕事だ」

 その言葉は彼に届いたかは分からない。

 既に感電死した抜け殻をそっと離し、倒れ消えて行くだけだった。


 雨宮竜也は口から嘔吐物をそのままに、例のサイトをもう一度確認した。

「はっ? 帰り方は? ……無い⁉︎ なんで⁉︎」

 サイトは行き方だけ書いてあって帰り道が載っていない。

 震える手で何とか、帰り方を探る。

 手から滑り落ちそうになるスマホを必死に掴む。

 他の人にぶつかるも、気にせず必死に検索し、漸く認知度が低い1番下に、別サイトに異世界の帰り方が書かれていた。

「最初に来た時の遮断機が鳴った直後に入るだけ? そんな簡単で良いのかよ、なんだよ、さっきのサイトは書いてなかったのに?」

 それさえ最初から分かっていれば、こうにはならなかったのにと自分勝手な怒りが込み上がるも、何か足りないと感じた。

 サイトに対しての怒りだし、自分に対しての怒りとも言えるも、もっと反省すべきモノがあった筈だ。

 なのにそれが全く湧かない。

 先程の最初に立っていた踏切があった。

 そしてここは非常に電車が通る踏切だった為、遮断機が警告音を鳴らす。

 しめた、このまま帰れると、スマホを落として走り出す少年は息も荒く吸うのもやっとだ。

 少年は走り、後ちょっとの時、目の前に人の口が大きく大きく開いていた。

 でも、こんな大きな口なんてさっきまで無かった。

 少年は気づいた。

 自分は食べられるのだ。


 警告音は鳴り響く、遮断棒はゆっくり降りる。

 電車が咀嚼音をかき消してくれる。

 通り過ぎた時、警告音は鳴り止む。

 遮断棒がゆっくり上がる。


 ジャンヌは向かい側にいる男子高校生に言った。

「分かった? 皆が一度は夢見た異世界の顛末よ」

 その後から着崩れしたスーツの上着を着直す日向も高校生に言う。

「管理者は皆、その定めを知らなくてはいけない。例え、人畜無害であっても、この世界を守るとはこう言うことだ」

 高校生は口を押さえた。

「これが管理者の宿命かよ……」

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