危険な遊び
少しずつバイトと修行に慣れ、もう7月だ。
あれ以来管理者の仕事も怪異も無く、とても平和……だったのだが、ある話で盛り上がっていた。
「なんかさぁ、あるゲームが流行ってるって話聞かない?」
最初に言い出したのはフィンだ。
「なんの?」
「あれだろ? ギリギリゲーム。それ絶対ダメだろ?」
冬美也は知っているが、内容を言わないしとても否定的だ。
「んまぁ、裏でも絶対流行らせないよ? あんな危険なの絶対」
「いやどんなの? 話には入れないんですけども?」
あまりに内容を言わずにいる為、怒りそうになるも、冬美也は謝りつつ内容を教えた。
「悪い悪い、ギリゲーってのはある方法を使って別の世界に行けるけど、行ったら即死だからその空間をギリギリまで近付いて、その寸止めするチキンレースだよ」
「如月社長知らないなら、多分ジャンヌ先輩とかに聞くの早いぜ?」
自分達でも話せそうな内容ではあるが、もっと詳しい話になるとまた別でなによりどうしたら出来るのか不思議と言った感じで冬美也が答えた。
「なんというか、異世界と繋げて遊ぶ危険な行為ってのだけは分かるし、即死っていうのも管理者が関わってるのも分かるけど、そんなのどうして流行るんだよ?」
「だからこそ、ジャンヌ先輩なんだよ」
「……?」
結局、今日はバイトが休みなので、ジャンヌに部室で聞くことにした。
「あれは多分最近、迷い込んでくるイビトの年齢層が若い理由は多分それだ。と言うか、あの時君の目の前で管理者としてイビト達をやったの覚えてるか?」
「あー……はい、覚えてます」
その時の記憶は未だに鮮明に覚えており、絶対忘れてはいけないものだ。
「ならよろしい。あの時は迷い込んだ哀れな子達、とボクらはそう結論付けて終わらせたが、どうやら最近だと遊び感覚でやってるらしくてな。ネットとかでの情報を鵜呑みにしてやってしまう危険行為が横行して、しかもこれはここの世界だけじゃない、異世界も含めた危険気回りない行為の可能性が出ている」
あの時はそう結論付けていたが、どうもまた遊びとして確立し、軽い気持ちでやっているらしく、非常に危険だ。
「火遊び感覚って事ですか?」
「そうだ、しかもこれ、一度試しにこれやってみたんだが、開いたんだよ、穴が」
驚くべきことだが、光喜にはまだ管理者の言う穴という意味がいまいち分かっておらず、とりあえず総合して思った事を伝えてみた。
「穴って皆言うけど、どういう意味なんです? それで動物迷い込んで食べられちゃうって」
ジャンヌは穴について話を始めた。
「そのままの意味なんだ、体の巡回みたいに君らだって空気を入れ替えるために息をしたり、排泄したり、コントロールしてお互いの寿命を延ばしているんだ。異世界はそうして成り立っている。わざと亀裂を入れて道を作って迷い込ませる。蟻地獄みたいにな」
本当にそのままの意味であり、具体的にと考えると一方通行の蟻地獄だ。
説明よりも蟻地獄の方が1番しっくり来た。
「あー蟻地獄として考えたらなんとなく想像ついた」
「まぁ、そんな成虫にはならんがな。それにニュートンにも言われたとは思うが、基本は小動物や虫等が主なメインで、たまに開くにしたってこんな公共の場ではそうお目には掛からん、が、最近の状態が芳しくなく、異世界の管理者達も頭を悩ませている」
循環するために世界はそう成り立っている為、万が一公の場で開けば一大事だろうが、その辺はやはり管理者の力でどうとでもなるだろう。
しかし、意図的に開ける者が出た場合は違い、シラミ潰しに潰すしかない。
それが複数で起こしているのだ。
確かに頭を抱える案件だが、どうしてジャンヌは異世界の管理者の話をしているのか不思議でならなかった。
「異世界のどうやって?」
「狭間のバー覚えてるだろう? あそこは異世界交流も出来る1つの場所だ。で、皆共通したのが若者達が遊び半分で空間を開けて遊んだり行ってしまったりしていると言うなんとも危険な遊びをしている事が分かったんだ」
交流の機会はやはり狭間のバーなのかと納得もしつつも、1つだけ疑問が残った。
「でもどうして開け方を知ってるんですかね? そのネットに上げてる人?」
そう、開け方を知っている人物がいるのだ。
しかもタチが悪い事に、それを流通させ管理者達を困らせている。
「皆、それを今調べているが、どうも芳しくなくて中々尻尾が掴めない。まるで生き物のようだ。いや、生き物か、ネットに上げるのはそもそも人間と言う知性のある者だけだろう」
知性ある者だからこそ、逃げ回るのも得意と言う、なんと皮肉なと言わんばかりに乾いた笑いをするジャンヌだったが、その後誰かが入ってきた。
「調べても出ないなら、こちらが罠を貼れば良いだろ?」
「あれ? ザフラって部活どうしたの?」
ザフラと後からアミーナも入って来た。
「部活も何も、ここが我の部室だぞ?」
「勉同にわたしも入ってます。何より修行との兼ね合いを考えてと言うより」
「1番だらだら出来るし、勉強も教えてやるぞ光喜よ」
そう、ザフラとアミーナも勉強同好会に入ったのだ。
かなりの人数になって来ているのだが、部活として未だに認められないのはきっと、全員参加していないのが原因だはないだろうか。
だが、光喜からすれば唯一の憩いの場所にすらザフラの目が光る為、居心地は最悪となり、返事も上の空だ。
「あっどうも……」
「いやいや、後輩に勉強を教えるのも先輩の役目だからな」
「そうは言いますが、あなたより先輩になりますよ? ジャンヌ」
ジャンヌが助け舟をと思ってくれての事だったが、アミーナの返しによって、目から火花が散る。
『そっちはそっちで喧嘩しないで!』
泣きたくなるそんな時だ。
ジャンヌのloinに誰かが送って来た。
「んっ? おっ、ジュリアだ……噂をすれば影というべきか……!」
「あまりよろしくない連絡なのは見なくても伝わりますね」
「よりにもよって、あのギリゲーをしようとしている連中に理美が止めに入って喧嘩もしているらしい」
「そういえば、冬美也とフィンは? アイツら今日は用事で部活来ないって」
「多分、そっちに行った。光喜、loin送ってみろきっと行き先一緒だ」
如月光喜
[冬美也、今どこ?]
冬美也
[バカ後輩の1人が他の連中とあのギリゲーおっ始めようとして止めてる最中!]
フィン
[今、バートン先生呼び行ってる! 車で行くって、俺死ぬの⁉︎]
「――という具合です」
完璧に巻き込まれていた。
「仕方がない、向かうぞ! ジュリアがGPSで地図を送ってくれた。きっとジュリアのクラスの奴だな中等部の」
ふと、中等部には知り合いが数人しかおらず、もしやと思って青ざめて聞いた。
「まさか広樹君ですか?」
穏やかそうなのにそんなバカな事をするなんてと思ってしまったが、どうやら違った。
「その隣にバカが連んでるんだよ! 広樹は寧ろ被害者の1人だ。アイツにはそろそろと小治郎縁切らせないと……!」
アミーナも誰かに連絡して、話した。
「ついでに琴さんに連絡したらブチギレて坂本と一緒に向かっているそうです」
そっちには理美が送ってくれてるようで琴と何故か坂本も向かっているようだ。
「アミーナ、とりあえず運転手を呼んだ。ジャンヌ先輩もどうぞ乗ってください、序でにそっちにも日向さんも呼んでるでしょう。光喜、お前も乗れ使えるとかではなく、実際良くないモノだと理解は絶対に必要だ」
「はい!」
光喜だけはやはり主力としてはまだ無理だが、現場を見るのは悪くないとザフラが思っての事だ。
そうして、どこへ向かったのかと思えば、まさかの商店街だった。
駅から離れた商店街は既に寂れ、別のショッピングモールや公共施設によって殆ど開いていない店が殆ど、たまに開いてはいるが、それも前の店主が民家としてそのまま利用してる位だ。
唯一の救いはしっかりしたアーケードがあり、下を照らすライトも存在した。
だからと言って、高校生でもあまり歩こうと思わない場所をどうして中等部の後輩達が居るのだろうと頭を傾げた。
奥に進むと一部の店が廃屋と化した一角があり、その間を進む道がおどろおどろしい場所な上、ライトもそこからは無かった。
まさかと思って、ジャンヌが地図を確認して頭を抱えた。
「嘘だろ、どうしてさも出て来そうな場所を選ぶんだアイツは……!」
アミーナは力を使った。
「その先から100mの突き当たり右にいますね。大喧嘩してます」
「誰が?」
「止めに入った冬美也と小治郎でしょうかね? その者と喧嘩しる間に、他の連中が準備を始めて……話す時間、ありませんね」
皆、急いで狭い路地を走り、冬美也達が居るであろう場所へと入って行った。
そこには、中等部複数と冬美也がおり、奥を覗けば、明らかにこの狭い路地とは違う雰囲気がある道が存在している。
これは異世界に通ずる穴だ。
ジャンヌはジュリアが居るのを見つけ、駆け付けた。
「ジュリア!」
「お姉ちゃん! 助けてください!」
怯え切ったジュリアを見て、ジャンヌは怒鳴った。
「貴様ら、何してるんだ‼︎」
その声に広樹の隣で驚いたのは先程聞いた名前の小治郎ではないだろうか。
「はぁ? 何高等部の連中呼んでるんだよ!」
友人達が罵倒を始めた。
「呼ぶだろ!」
「するなって言われてした阿呆を止めに来たのに、あたしら絞められるの最悪でね?」
理美に至っては普段と違い雰囲気が違っていた。
「というか、どうせ動画視聴率上げたいだけでしょ? この迷惑ヴィチューバーは!」
茶髪で肩まで伸ばし、他よりヒョロリと細い中等部の制服を着たのが小治郎だろう、冬美也と喧嘩で今にも殴り合いが始まりそうだ。
「だから俺じゃねぇって!!」
「またクソ面倒な先輩? それともロクデナシの親戚か? どっちにしろ別世界に繋がっている以上危険だ!」
どうやら、この小治郎、人間関係があまり宜しい人脈では無いようで、度々迷惑掛けていたのが冬美也の言葉だけで理解出来る。
小治郎の言い分は、都市伝説自体信じておらず、今回は知り合いに誘われて付いて行ったら、その手伝いをした感じだ。
「あんな迷信誰が信用するんだよ! 面白いのが撮るから手伝って欲しいって誘われただけで、これだと思わねぇよ!」
「はいはい! で! その面白いのを撮ると言った奴は何処だ!」
冬美也の問いに答えたのは、広樹だ。
「中に入ったきり帰って来ないです……」
その瞬間、管理者であるジャンヌとアミーナは助からないと確信した。
だが、このまま放置するのは危険だ。
ジャンヌは下を見ると、ゆっくりと着実にこちらに侵蝕しているのが見れる。
「……そうか、間に合わなかったが、とにかく避難だ。こっちが侵蝕されている」
「はぁ⁉︎ ヴィチューバーのおもろーさんを置いていけるかって!」
金髪のショートウェーブの浅黒い肌の女子はそのヴィチューバーを知っていたのだろう大声で言った。
「でた、結局迷惑ヴィチューバー!」
「とにかく避難しないとやばい。先生や大人達も時期来る、対処はその人達に任せよう」
ジャンヌの言葉で皆避難しようとしたが、小治郎はそれを拒否した。
「帰って来るように紐持たされてるのに⁉︎」
その命綱を引っ張るとその穴の向こうへと繋がっていたのだ。
明らかにその命綱のせいで、侵蝕が進んでいる。
すぐに閉じなければ、どうなるか分からない。
ジャンヌは管理者として、その命綱を離すよう言うべきだが、子供達にそんな状態見せたくなかった。
昔なら本当に簡単に決断出来たのに、人と関わりが変わってくるとこうも出来なくなるものだ。
が、ここは先輩アミーナ、容赦無く決断する。
「そんなに我儘言い続けたら、わたし直々に締め上げますよ?」
この殺気は本気だ。
だが、理美も言う。
「でも、引っ張れるって事はまだ大丈夫って事でしょ? なら、一回無理矢理引っ張って切れる、その人が居ない場合は諦めて貰うで良いんじゃない?」
「脇が甘い! この状況で良く――!」
「いや、待って、なんか奥から誰かが来ている?」
見知らぬ中年男性が命綱に繋がったまま走って来た。
これで食われでもしたら、皆トラウマ決定だ。
アミーナは小治郎から命綱を奪い、思い切り引っ張った。
「ふんっ‼︎」
いきなり引っ張られた男性は足を崩すも、勢いでドンドン引き摺られ、最終的に飛んで戻って来た。
中年男性は引き摺られたせいで擦り傷だらけだが、慌てて声を上げる。
「に、逃げるでござるよ!」
「はっ?」
こっちはこっちでそれどころではないが、中年男性は必死に話を続ける。
「ひ、人食った、人が――‼︎」
光喜は不意にその穴の方を見て、気が付く。
奥から誰かが歩いているのだ。
フードを深めに被って良く見えない。
だが、中年男性が言うように何かを食していたせいで、服は赤黒く飛び散った跡がしっかりあった。
少しずつ分かってくる、口元は赤い液体塗れで笑っている。
危険な人間だ。
光喜は力を使おうと手をかざすと理美に言われた。
「だめ!」
「で、でも! このままじゃ!」
そう、このままではそいつは入って来てしまう。
少しでも力で押さえつける又は時間を稼がなければ行かなかった。
ところが理美は全く違う意味で言う。
「違うの! 愛されし者はこの世界でしか使えない!」
「えっそうなの⁉︎」
理美のアースが現れ、その理由を話してくれた。
「悪いけど、管理者はあくまでここの世界だけでしか使用出来ない、我々アースはこの世界で誕生したからこその愛されし者の力が発揮出来る。でも、それはこの世界だけ異世界じゃ、私は出現出来なかった」
その話を聞いた瞬間、ジャンヌは皆を避難誘導した。
「とにかく避難、急げ!」
皆、急いで逃げ出す。
ザフラは中等部の子達と中年男性が走って見えなくなってすぐに、力を使い異世界から向かってくるそいつに向けた。
一気に吹き飛べば時間稼ぎになる。
しかしどう言う訳か、そいつは吹き飛ぶとか一切ない上、手をかざされた直後、ザフラが何かを感じ動けなくなってしまった。
慌てて、アミーナがザフラを体当たりすると、吹き飛ばされてしまい、光喜は一体何が起きているのか分からず、恐怖で足が竦んでしまった。
「こいつ? 重力に愛されし者なの、か?」
「何言ってるんですか?」
「愛されし者には力の付与と同時に同質の力の場合のみだが、無効化が可能だ」
そう言って、ジャンヌは鎌鼬を放つもやはりちからが異世界に入ると消えてしまう。
そいつはジャンヌに今度手をかざすと突風が吹き、ジャンヌは間一髪で力の相殺したが、違う異能によって吹き飛んでしまう。
何か拳のような形がジャンヌの体を凹ました。
「かはっ……!」
光喜はジャンヌに駆け寄ろうとしたが、足が動けない。
どうしてあの時は動けたのに何故、今回動けないのか分からなず、必死に動くよう叫んだ。
「先輩! くそ! 動け、動け……動けぇぇ‼︎」
冬美也はその様子と異世界から近づいて来るそいつをの様子を見て気が付き、光喜に指示する。
「光喜、使え力を!」
「でも、まだそっちには!」
「違う! 自分に!」
光喜はここで自分に何か異能により動けないと気付き、無重力を自身に掛けた。
「そうか! ほんのちょっぴりだけ無重力にして……行けた!」
一瞬だけ無重力にし、すぐに戻すと抜け出し、走り出す。
ジャンヌに駆け寄ると気を失っているのか、倒れたまま動かない。
振り向けば、徐々に広がる侵蝕。
近づいて来るそいつ。
冬美也も理美を引っ張って逃げようとした。
しかし理美はその手を振り払い、何を思ってか近付き両手をかざしたと思えば思い切りぎゅっと手を握り締めると侵蝕が収まる。
着実に異世界との繋がりが消えて行くのが分かった。
そいつは笑っており、既にもう近くにいる。
冬美也は理美を放って置かず、隣に立つ。
後少しと言うところでそいつの手が理美の目の前に近付き、冬美也がその前に立とうとした。
光喜も走り出し、力を使おうとするも、使っている感覚はあるのに発動しない。
直後、誰かの声が聞こえる。
「そのまま押し倒しておきなさい、神崎」
冬美也はその声に従い、理美を押し倒す。
その流れのまま、鋭い剣がそいつの腕を貫通した。
本来なら激痛で苦しむ筈なのに、そいつは笑いながら貫通した腕を無理矢理千切り、後へと下がったと共に腕を失った場所から異様な音を奏でながら新たな腕が出現。
「バートン先生?」
そこに居たのは、バートンだ。
バートンが剣を振るうと突き刺した腕が泡のように消滅した。
「やはり、イーターか。キャサリン、空間修正」
「はいよ、こんな時に呼ぶからなんだっと思ったわよ」
キャサリンの声が聞こえたと思えば、急激に縮み、消えると思った瞬間、一瞬だけそいつは光喜を見てニヤリと笑っていた。
気が付けば既に異世界と繋がってしまった穴は消え、その穴の後ろにいたのはキャサリンだ。
バートンは理美達に言う。
「理美、まだ慣れない事をするなとは言わないですが、ちゃんと逃げなさい。神崎も」
「ごめんなさい、冬美也もごめん連れて逃げようとしたのに」
「おぅ、どっちにしろ流石に肝が冷えた……」
理美は反省し、冬美也は安全となったのが分かり、腰が抜けてへたり込む。
その様子を見て、バートンは深い溜息を吐き、今度は光喜とジャンヌの元へ歩み寄り、ジャンヌの体に触れると、あの例の泡が飛んで行く。
「如月、君もです。ジャンヌ、とりあえず内臓部分の損傷は消しておきます。動けますか?」
「ゲホゲホ! すまない、デリート私がした事が」
「全くです。今規制を入れて貰っているので、他の人は入って来ません。それとアミーナにしては油断するとはイーターには注意が必要ですね。立てますか?」
「え、えぇ、まさかあっちが重力使って来るとは思いもしませんでした……ザフラ様ご無事ですか?」
その声に、動けなかったザフラが動き出し、アミーナに謝罪した。
「無論だが、役に立たずですまない」
「いえ、しかしあれは少々厄介ですねイーターとは、初めてですよ」
バートンが口にしたイーターとはなんだと思い、気になって光喜は聞くとバートン自身が答えてくれた。
「イーターって?」
「日本語で捕食者、食べる者です。異世界の管理者達からも報告があり探していましたが、不幸中の幸いと言うべきか漸く目にする事が出来ました。アレは危険だ」
辺りを見渡せば、キャサリンは理美に褒めつつ何かをアドバイスしたり、琴や坂本に日向と一もやって来て、光喜を含め皆一同、事情聴取が始まる。
どうやら小治郎はそのおもろーと言う中年男性が例のギリギリゲームは本当か最新の神隠し検証の為に、手伝いをお願いされ、その際、おもろーは異世界に行って動画を撮影、帰りの道中にそいつに遭遇してしまい、逃げていたそうで、一部始終撮ったと思われるおもろーのスマホを没収した。
そんな事をして大丈夫かと心配になって日向に聞くと、意外な言葉が返ってきた。
「いつもの事だ。異世界の撮影部分をこっちで回収後その部分は消してから返すし、バートンにお願いしておもろーの異世界に居た記憶を削除してもらう」
どうやら、これが初めてでは無く、何度もあるらしくその都度消しているようだ。
坂本もその記憶の削除について他にも伝手はあるが、今回はバートンが居てくれるから助かる感じで言った。
「白澤先生に頼んで記憶消してるんだけど今回はバートンにお願い出来るからまだ良いよ」
「他の子達はどうします? ジャンヌ、ジュリアちゃんらの記憶も消してもらいます?」
「そうだな……」
話的に、ジュリア達はたまたまそのおもろーと小治郎が怪しい行動に気付き、理美と冬美也とフィンにloinで相談、その場に到着した時には既にあの穴が開いていたのだ。
冬美也と小治郎が言い争いになる中で、理美は電話で琴達に連絡しているのを見て、これはもう只事ではないと察しジュリアにloinで助けを求めたのだった。
バートンは冷静なまま怒っていた。
「危険な行動をしたのですから説教です。白澤にも連絡をどの道忘れた状態だと同じ事を絶対にする」
「あー記憶操作するのね」
「しゃーない、連絡するから、とりあえずこのままだね」
坂本が白澤に連絡中、冬美也がある事に気付く。
「ところでゼフォウは?」
そう、バートン呼びに行って車で一緒だったはずだ。
「車の中で死んでます」
「殺さないでくれ、なんでそんなに出したん?」
「急いでたので」
どうやらバートンの運転が荒過ぎて、フィンは車の中で真っ白のまま魂が抜けてそのまま動かなくなっていた。
「本当に怖かった……なんでギリゲーなんて流行るんだよ」
「人間は刺激が欲しい生き物、タダで出来る刺激程楽じゃないですか? 動画を上げる前みたいで良かったです」
「そう、ですか……」
ふと、隣にいつの間にか出現したニュートンに驚き、覗くもかなり深刻な顔に何を考えているか話をしたかったが、今は触れないでおこう。
きっと今聞いても教えてくれないし、無理矢理したら暫く出て来てくれないのが明白だ。
一度こういうのが起きると、どっと疲れが増す。
「早く帰りたい」
それだけが今の1番の気持ちだ。