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寄り道

 皆で帰り途中、光喜はドラックストアで薬を貰ってから帰ると言うと、ディダが言った。

「僕も途中まで一緒に行っても良いかい?」

「えっ?」

 驚いたが、冬美也も行こうとした。

「ならオレも――」

「大丈夫だよ、多分頭が整理できない部分も多いだろうから、その整頓だけだよ。余計な事はおいおいで良いし」

 ディダは2人だけで会話をしたいと思っての事だったが、光喜以外は皆最後の言葉に引っ掛かった。

『おいおい?』

『結局言う気満々』

『アダム報告案件』

 そうして2人でドラックストアまで行く羽目になった。


 2人きりになって、初めて会う人とどうして帰っているのかと鼓動が速くなり、やはり断れば良かったと思った矢先にディダが先に話した。

「君が、管理者のイレギュラーの新入り君だよね?」

「えっ? はい、と言うかあなたは?」

「そうだよね、わざわざ皆の前で自己紹介してもいなかったもんね。僕はディダだ、よろしく」

「如月光喜です、ディダさん」

「うんうん、そう緊張しなくて良いよ」

 光喜にはそう言われてもと言った感じだ。

 不思議な髪型に、目は丸い黒のサングラスで見えないし、ジルよりも身長差もある人で、周りはあまり気にしなさすぎてちょっと怖いとは言えないでいた。

 渋々、光喜はどうして一緒にドラックストアまで行こうと考えたのか改めて聞く。

「あの、どうしてディダさんは俺の事を? それに整頓って?」

「そりゃ、君はまだ僕知らないし、また君も僕らを知らない、それと君の話は坂本さんとかじゃなくて、アダム神父から、一応僕も神父だけど、エクソシストって言葉は分かるかな?」

「はい、知ってます、悪魔祓いですよね? よく漫画とかに出てくる」

「そうそう、そっち系の仕事が僕は主だし、前まで児童養護施設に居たんだけど、訳あってアダム神父の元で宣教師してるんだ。でも、中等部の方でだから会うことあまり無いかもね」

 光喜はエクソシストの言葉を知っていたが、悪魔ではなく怪異に関してもやるのかと疑問を持って投げかけた。

「えっと、もしかしてその怪異に汚染された場合にもエクソシストって来るんですか?」

「場合によっては、さっき冬美也君言っていたけど、お父さん、今は大人しいけど、めっちゃヤンチャだったらしくて、クネクネを腕試し程度で行って発狂して保護されたんだよね、普通クネクネの認識による発狂はハリガネムシに寄生されたカマキリと同じで、田んぼや畦道の溝や沼に誘い出すのが目的で仲間を増やしていくけど、今は封印されてその上に更に神様やその亡くなった人の供養する為にお寺で神仏で手厚くされている筈だったんだけど、それが壊されたらしくって、暫くは田んぼの多い場所には近づかない方が良いよ」

 一通りの話を聞き、光喜は青ざめてしまった。

「ひっ……!」

 それもそうだろう、この間イビト捜索した場所で怪異があったのだ。

 あの時何ふり構わず行って、イビトだけ遭遇しただけで手一杯だったのに、万が一違う怪異が存在していたらと思うと恐怖そのものだろう。

 しかも、今後何かあると明白になった今、田舎に行きたいとは思わなくなった。

 ディダは怖がらせる気は更々無く、エクソシストとして定期的に行く事を言った。

「大丈夫、僕はこれからそこへちょっと対峙しに行って暫く定期的に行く事にはなるけど、それ以上の怪異の広がりは無くなる筈だから」

「それもエクソシストの仕事、なんですか?」

「んー、どうだろ? 言われたから渋々だし、正直僕もあまり見たく無い、正気でいられる自信がない」

 ディダは本気でサングラス越しでも遠い目で居るのが分かるほどだった。

 ここまで会話をしていてふと気になったのを聞いた。

「管理者ってそんな怪異とか都市伝説とかって関係無いと思ってたんですが……?」

「いや、こればかりはねぇ長い付き合いのアダムもね、そういうの結構場数踏んでるから分かるんだけど、やっぱり遅かれ早かれ怪異や悪魔、様々のと対峙したりするよ。意外とまがい物処分する際なんか近くにあったの多かったし、でも大抵は砂粒があるのが殆ど。それが肝試しや何かの拍子で持って来ちゃって気が狂う人が出る場合は大体まがい物だった場合も多いから、自然と医療機関との連携も必須なんだよね管理者もエクソシストも」

 どうして心療内科にいたのか最後の言葉辺りでなんとなく察した。

「だから、白澤先生の所に、それでか」

「うん、白澤さんや冬美也君達は流れのまま管理者の協力者をしてくれてるから、皆結構仲が良かったり知ってたりするよ」

 大分緊張も解れて来たのか、光喜は1番気になった事を聞いた。

「そうなんですね、でも、その日本刀ってなんなんですか?」

 ディダの背中に背負っている図面ケースの中にあの時使用された日本刀が入っていた。

「これ? ちょっと仕事道具で、あの時よく見せれなかったけど、これ磨がれて無いから斬れないよ」

 そう言いながら出そうとしたので、光喜は止めた。

「開けないで下さい、警察に見れたらなんて答えたら良いのか分からないので」

「そうだよ、ディダ神父、職質されたらどうするのさ」

 知らない赤毛の自分よりやや年上だろうか18歳か19歳位の青年が、ディダを睨みつけていた。

 ここで悲鳴を上げたら、誰かが来そうだったので光喜はなんとか声を出さずに、小声で突っ込んだ。

「っ! ……増えた!」

 赤毛の青年は即座に謝罪した。

「ごめん、冬美也君経由で君が近場のドラックストアに行くのに神父がついて行ったってloinで連絡が来て、探してたんだよ」

「マルス、今日バイトは?」

 怒ったままマルスはディダに言うも、光喜に対しては優しく接した。

「休みだよ、てか、いつの間に仕事入れてるんだよ。もう神父見かけだけでもう歳なんだから無理しないの。このまま連れて行くけど、1人で大丈夫?」

「それは、はい大丈夫です」

「本当にごめんね、ほら神父行くよ」

「分かった分かった、本当はもう少し色々と話して置きたかったんだけど」

「それ以上話すとややこしくなるからもうダメ! それじゃ、如月君気を付けて帰ってね」

 マルスはディダの腕を引っ張って、何処かへと行ってしまった。

 呆然と立ち尽くす光喜だったが、刀についての説明を聞くタイミングを完璧に逃していたのを思い出し落ち込んだ。

「あの人達なんだったんだ? あっ! 頭や体を斬って回復したの知りたかった……」


 ドラックストアから指定の薬を貰い、今日の買い出しもそのまま済ませた後、光喜は自身の部屋に行かず素通りして、冬美也達の部屋の前に立ってチャイムを鳴らした。

「すまん、やっぱり1人で居たくない」

「だからって直で来んなよ」

 玄関先で冬美也は困り果ててしまうも、意外と怪異とか怖いのかと思っていると、風呂掃除道具を持ってやって来たフィンが聞いて来た。

「何々? 社長、怖がりなの?」

 仕方がないので、軽くフィンにも経緯を話した。

「前にイビト捜索した近くにクネクネ出てたんだよ。結局捜査は中止、認識しちゃったジルと確認する為に見ただけで発狂はしなかったけど、暫く人がクネクネに見えてずっと笑っていた坂本さんと言う面白い状況下にディダが仕方がないから例の日本刀でぶった斬って光喜が目撃したんだよ」

 フィンは怪異に関してあまり興味も無いが、実際あの近くで怪異がいたのかと驚くも、ディダの話で笑ってしまう。

「すげぇ、ディダの見たのかよ、あれ初見トラウマトラップじゃん。でも、あれって冬美也の父ちゃんもなったんでしょ? 前に怪談話で色々盛り上がったけど、あの後どうなったんだっけ?」

 冬美也はあの後の話を知っていたらしく、その後はなんとも情けない話となった。

「保護してくれた寺の僧侶にしこたま怒られたんだと、若気の至りにしてはおっかねぇよ。とりあえず入れよ」

 光喜をこのまま帰すのもアレなので、気分が落ち着くまで部屋に入れてやる事にした。

 同じ間取りなのに、結構広々としつつも、2人で暮らしている割にはしっかり役割り分担も決め部屋が綺麗だ。

 リビングのところに本棚があり、とにかく難しい分厚い本がぎっしりと入ってたり、たまに漫画がこじんまりとひっそり覗かせていた。

「誰入れてるの?」

 光喜の問いに、フィンは答えた後、風呂掃除へと戻って行った。

「冬美也のだよ、漫画も、まあ俺も使ってる、後濯ぐだけだから、ゆっくりしてけぇ」

 興味を持った光喜はそっと手を伸ばした。

「へぇ、取ってもいい?」

「あっ、それは――!」

 分厚い本を取った時、本では無く、エロDVDが出て来た。

「おぅ! 申し訳ない!」

「あぁぁぁぁぁ‼︎ すぐに隠せ!」

 すぐさま戻すも、題名も面白いものばかりで、こういうの好きなのかと笑ってしまう。

「熟女好きなの?」

「止めろ! 今すぐ帰すぞ!」

 風呂場に居たフィンからも声が聞こえ、大きな声で言った。

「次はどうした? あれか? とうとうエロDVDバレたか!」

 明らかに笑っているのが分かるので、怒った冬美也はフィンの好みをバラした。

「ちなみにこっちのがフィンの好みの方な」

「し、縛りが好きなの⁉︎」

「止めろ! 俺も巻き込むな!」


 夕飯も一緒に食べて、落ち着いた所で、あの時聞けなかった話を聞いた。

「結局、あの刀はなんだったの?」

 冬美也は食器を洗いながら言った。

「あれなぁ、正直オレらもわかんねぇ」

 フィンも良くは知らないが、内容は聞いていたようで、その説明をした。

「前に聞いたのは、知り合いが刺された物を加工して刀にして、何度も何度も打ち直ししてもらってもう、出来る人も殆ど居ないからもう出来ないだろうって本人言っていたし、基本アレは命は取らないけど、悪魔や悪霊が憑ったり、怪異による心傷だったり緊急時だったり斬るらしいけど、欲もぶった斬るからあまりお勧めしないってよ」

 最初ドン引きもしたし、面白いと思ったけどよく分からないが正しく、光喜は1番思った事を口にした。

「刺されたのをよく加工しようと思ったよね」

「ですよね」

 冬美也はその話を聞きながら、お茶を出す。

「誰でも最初は突っ込む所だろうよ。ほら、これ飲んだら帰れ、明日は光喜の部屋に乱入してお前のエロ本orエロDVDを見てやる」

「そうなりますよねー」

 人の興味を見たら、自分の興味を見せなければいけないのは、お互い同等の立場だからだ。

 男同士、しょうもない事をしてる感はあるが友達として楽しいも光喜にはあった。

 だがしかし、ニュートンが冬美也の耳元で囁くのだ。

「ちなみに、光喜はコスプレ系が好きだ」

「ぎゃあぁぁ‼︎」

 光喜の悲鳴再びに冬美也の方が驚いた。

「なんだよいきなり⁉︎」

「申し訳ない! そんな事より! ディダ神父を迎えに来た彼って何者⁉︎」

 誤魔化したいあまりに意味の分からない戻し方をしたのは光喜でも分かっていたが、凄く恥ずかしくて顔が真っ赤になっていた。

 流石に顔が赤いのを言わず、冬美也は話を戻してあげた。

「凄い突拍子のない戻し方だな、マルスだよな?」

「そう!」

「オレも詳しくは知らないが、昔から面倒を見てくれて、マルスの父親とも子供の頃からの付き合いらしい。今じゃもろ介護者になってしまったんだけどな」

「ディダって昔はめちゃくちゃやばい感じだったって言うけど、昼行灯並みな性格だから本当に分からん」

 フィンにすら掴ませない性格と言う感じにも思える程、マイペースな人なのだと分かった。

 その分、マルスの気苦労は大変だろう。

 ただ冬美也は少し羨ましく感じながら笑って言った。

「だけど、本当に親子じゃないけど最も親子らしいってオレは思うけど」

 その言葉に光喜は初対面だったが、凄く親子に見えたのは本当だ。

 ふと、そんな風な親子じゃない親子らしい関係を思い出し言葉にした。

「……ジャムとバター!」

 フィンも冬美也もなんとなく察して笑い辛い。

「そこに着地するの止めて」

「ここでギャグれる辺りもう大丈夫だろ?」


 光喜は気持ちも落ち着いたので、部屋へと戻る事にした。

「じゃ、お騒がせしました」

 玄関口で話をする。

「全くだ、次はお前の飯を食いに行くからな」

「後、本棚見せて、どんなエロ隠してるのか楽しみにしてるから」

「それだけはヤメテ、また明日学院で」

「おう、また明日」

「おやすみ、社長」

 光喜が部屋を出て自身の部屋に向かって行くのを確認した後、冬美也は言った。

「アイツ、コスプレ系が好きなのか、結局脱がすのに……」

 まさかのニュートンの話を聞こえていた。

 フィンは止めるも、見えていた事を指摘しつつ見える系なのかと話す。

「やめれ、てかやっぱり見えてるんじゃん、やっぱお前が見える霊とか妖に怪異とか見えるのと一緒か?」

「いや、アレはもっと別線の分類、下手すりゃ妖も怪異も天使や悪魔がアースを認識できない存在の可能性があるから、オレはどうして見えるのかさっぱりだが」

「持って無いのは知ってるけど、本当お前もイレギュラーだぜ?」

 冬美也は軽く流して、丁度loinで鶴野からの詳細が届いていたのを確認した。

「はいはい、鶴野さんからの連絡で面接とかは省いてくれるけど、一回光喜と一緒に適当な場所で話して決めるか……嫌な予感しかない」

「気を付けろよ、鶴野さん経由で来た坂本案件は大体相当な要人達のパーティーな筈だ」

「そうだな、光喜もだが理美も大丈夫か?」

「人酔いにダウンに一票」

 そうして、夜は更けて行った。

 光喜早々に眠っていたが、ニュートンはいつの間にか屋上に立って何かを見ていた。

 しかし、気配を感じる方を見ても決して見る事は無く気配は消えた。

「何か、悪い事が起きなければ良いが……」

 そう言い残して消えてしまった。

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