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まがい物の価値

 帰りの道中、車の中にて、普通車だと思っていたが8人乗りのミニバンだったの驚いていた光喜だったが、それよりもだ。

 1番気になっている事をフィンに聞いた。

「フィンって、異能者なの?」

 疲れて寝てしまおうとした時に声を掛けられたフィンは気付き答えた。

「んっ? 訳ありだな。異能者って生まれ持つ者もいれば、理由があって後からの奴もいて、冬美也も俺も後者、でもどうやって手に入れたかは聞くな。そこからはあまりよろしくない。分かるよね? 社長なら」

 あまりあだ名で呼ばれたくは無いのだが、あの瞬間だけ呼び捨てで言ってくれたのに、結局戻ってしまったのが残念で仕方がなかったが、フィンの聞かれたくないのは自分もまた同じだったのであまり詮索するつもりもない。

「また社長に戻ってるし……分かったよ。どんな異能かも聞く気は無いけど、フィンはさっきの爆発系なのは分かった」

「そうよ。だけどもっと言うと水素と酸素を操って、目には見えない火花を投入し爆発させるが正解だ。結構難しいけど距離と水素と酸素濃度を調整し、火花はよくわかんねぇけど摩擦原理でボンってね。あの時は急に出て来たのと直感でこいつはやばいで調整する前に勢いついちゃったのが敗因ね」

 フィンが最後に言っていたようにどうやら本人は口にはしていなかったが、癖のある異能のようだ。

「なるほど、理科の実験でした事があるフラスコに水素溜めて、少し開けて酸素を入れて火を付けてポンって鳴るあれだ」

「それで良いよ。しかし思ったより早く終われて良かったよ。後帰ったら一度ベッドで寝よう……」

 話し終えてあくびをし、もうここで寝ようかと思っていたフィンだったが、光喜を見てある事を話す。

「……なぁ、社長」

「どうしたの?」

「まがい物の話はさっき聞いてたけど、アレね裏社会の中では曲がり通った価値ある物なんだ。異世界共通でまがい物は(きん)と交換される。裏社会では裏社会の狭間闇市ってのがあってそこで交換や売買等をしている」

 その内容は明らかに法律では裁けない闇の話だった。

 まがい物は危険とはっきりと分かっていたが、今の現状光喜のアースは力を使うと腹が減り、まがい物を食さなければいけない。

 だが、実際売り買い出来るとなると、いつでも持っている状態なればと考え欲しくなる光喜のアースが座席前に座ってこっそり聞き耳を立てており、光喜はひっそりと、おいっと呟いた。

 その話を聞いてしまったのは1番前に座っているジャンヌと日向だ。

 助席からジャンヌが怒って言った。

「そのせいで、管理者でも貧困で喘いで処分せず流す阿呆がいるのだ! 今回フィンを連れて来たのは、理美や冬美也が監視していれば、それに光喜が悪さしないと思ってだ」

「だってぇ、折角だし少し位はお給金欲しいしぃ」

「まがい物に手を出さなければ給料は出すって言ってるだろう? お前はこっち側に居るべきだ」

 フィンの態度に対して運転中の日向も言ったが、言われた当人はあまり言いたく無いことを言わされて気分を害していた。

「嫌だ、俺の話したでしょうがよ。渋々あんたらには!」

 ジャンヌもフィンに対しては話を聞かなくては何も始まらなかったのか、申し訳なさも混じっていた。

「仕方がないだろう。理美や冬美也の事は殆どアダム経由から聞かされているが、君の事はアダムもディダですらあまり話そうとしなかったし」

「あの人なりに後悔してるんだよ。渡す気なかったけど、君本人の意向に反してまで、こっちに止めれなかったと」

 日向にもフィンの実情を知ってるからこそなのだろうが、当のフィンはそうではなかった。

「違えーよ、俺の他に仲間も行くって聞かないし、下手にマフィアと喧嘩してみろ、どっちも血みどろで終わるわ」

 ずっと話を聞いていた光喜がマフィアの言葉に聞き返してしまう程、気が動転した。

「マフィ、えっ? マフィア?」

 ジャンヌが冬美也にフィンの話していないのかと聞く。

「冬美也教えなかったのか?」

「なんでもオレが話すと思うか? それっぽい事を言って終わらせた」

 あまりその辺の話をしたくなかったのは、多分自衛も入ってのことなのだろう。

 だが、今それも無くなってしまって光喜の顔から血の気が再び下がった。

 なんとなくあのクラスの女子を連れて帰って行った時にそれとなく話されていたいたし、なんとなく感じてはいたが、実際その言葉を聞くと流石に引くのは当たり前だ。

 フィン自身もその反応にはそらそうだと笑ってこう言った。

「そんな怖がらない、俺だって選ぶ権利が有るように、社長だって選ぶ権利がある。ここで縁を切るのもそのまま縁を続けるのも自分達だ」

 確かに今切れば見て見ぬふりは出来るようになるが、今までの事を考えると色々助けてくれた分、ここで切ってしまって良いのか悩んでしまった。

 すぐにジャンヌと日向は話に入って縁を切らぬように説得を始めた。

「いきなりそういうな。これも何かの縁だろう?」

「光喜君、管理者にもヤクザやマフィアにギャングとかそういうの多いから気にするな」

「マジかよ管理者こえぇ……」

 日向の余計な一言で、返って冬美也が引いていた。

 光喜も引きはしたが、理由があるのだろうからこのままの付き合いで構わないと言うも、本当にダメなラインがあるので思いそれも伝えた。

「気にするよ! でも、フィンだって好きでそっちに行ったわけじゃないだろうし、今まで通りで構わないけど、やばい薬とかそういうのしたら速攻で縁切る」

 やばい薬や麻薬に関して、フィンは管轄外なので大丈夫だと言ったが、結局マフィアなのでそういったものも扱っていた。

「うん、俺の担当そっちじゃないし、そもそも日本には持って来てない」

「やってんじゃん!」

 つい光喜は突っ込んでしまうが、フィンはそう言う話をするつもりは全くなく、話を元に戻し、ポケットからある小瓶に入った砂粒のまがい物と金を取り出し説明した。

「だから、俺の担当じゃないから、それに話大分ズレちゃったし、まがい物の価値だよ。(きん)と交換する話だけど、例えばこの位の粒で大体50g」

 その粒は砂粒の3、4粒でまがい物を交換すると金50gになるのを聞くと、高校生の光喜にはまだ分からないが、日向には分かった。

「また上がったのか? 異世界も難儀だな」

 どうやら異世界もそういった価値の上昇はどこでもあるようで、まがい物にもあるようだ。

「錬金術とか使えば金は生み出せるらしいけど、あくまで天然鉱物での50gだからね。それだけ貴重だし、まがい物の量や質によって更に価値が上がるし、逆にまがい物欲しさに国総出でかき集めたりする。そしてまがい物は色々な用途に使えるから実際ギリギリを攻めて使ったり、実験に使ったりとやっぱり裏社会と言うべきか……」

 なんとも言えない生々しさを感じ、更に光喜は引いてしまっていた。

「うわぁ」

 フィンの話にはまだ続きがあった。

「でも最近、まがい物を収集する連中が増えたのは本当だよ」

「それはとある国とか?」

 日向も裏の話を聞いた事があるようで、光喜が冬美也にとある国とはと聞くも、頭を振って教えようとせず、フィンは知っているので、そのまま話を続けた。

「いや、確かに(きん)を集め、まがい物も集めてるが、そっちにも管理者が居て誤魔化して消してるものの、最近は逆になってきて(きん)をまがい物に交換して、その後に独自に販売ルート作って、欲しがっている連中にまがい物を売りさばいているらしい」

「うぇ、本格的にまがい物の処分が難しくなって来たな」

「それだけじゃない、下手に一般人の目に触れればもっと違う方向で世界が終わりに近づいてしまう」

 こうなると処分が難しいのもだが、いつ世間に表沙汰になるかもより、奪い合いやまがい物に食われ人類が滅ぶだけではなく世界自体が終焉を迎えるのではと不安も出てきた。

「で、ここからは光喜以外にも、特に管理者に話したい事で、まがい物を買い占めしている団体があって、闇市でも団体が来ては枯渇知らずにまがい物が無くなるまで交換しているのがいて、腹を立てたギャングの複数グループがその団体を潰そうとして、まがい物による侵蝕状態で見つかった」

「それって、まさか……!」

「今回のイビトとまさに一緒だった」

 全員驚き、息を呑んだが冬美也だけは違った。

 長年の付き合いで、光喜に話すのは建前もあるが、さっぱり分からない状態でいきなり本題を話しても絶対伝わらない。

 そこで、有る程度説明を入れ、今の現状を伝えるが本当の理由が隠れているのを知っていた。

「で、その話をして解決してほしい本当の理由は?」

「まがい物の価値の安定だね、欲を叶えてくれるが命の危険な物だからこそ価値があるんだよ。それが侵蝕状態で見つかって、マフィア所属の異能者達で殺しはしたが、まがい物は回収どころか使い物にもならないスッカスカのただの残骸だよ。今回、イビトだったからなのか、まがい物回収出来てたっぽいし、でもやっぱり異常だわ、コレ」

 フィンの言う事も価値の話を除けば一理あり、この異常事態を引き起こしているのは事実だ。

 それにだ、逆恨みで起こったのを逆手に取って実験台にして放っているのは間違いなく、その団体だ。

 日向はフィンならもっと知っているだろうと踏んで、再度聞く際に、ある名で呼んだ。

「お前の事だから、その団体の事知っているだろう、ゼフォウ」

 軽く笑いながら困った顔をしたフィンはこれで少しでも良くなればと思い、その団体名を伝えた。

「勿論、最近表立って出て来た新興宗教だ。名前は穏喜志堂(おんきしどう)

 場の空気は重く、これからどうするかも古参で召集をかけるかと日向は考えつつ、空気を変える為に言った。

「まだ午前中だが、早めに昼食にしよう。後、奢りだ」

 その言葉に一気に場は明るくなるが、光喜のポケットの中から何度もバイブ音が鳴り、光喜はなんだろうかと調べてゾッとした。

 咲との約束を完璧に忘れ、ずっと連絡すら取っていないのを思い出し、loinの内容はどこに行ったのか、何をしているのか、どうしたのかと言うのがズラッと並んでいた。

「……咲さんに連絡するの、忘れてた!」

 光喜の言葉で、皆が再度落ち込んだ。

 ずっと会話に参加していない理美はそんな状況も知らずに眠っていた。

 

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