実際にやってみよう!
深夜、スマホを手にずっとネット検索雨宮竜也はある特定のみの都市伝説サイトを見つけ、1つを目に通す。「廃線路の遮断機から異世界に行く方法? バカ草……」
その内容は深夜0時にA地区の廃線路の踏切、何度か往復すると、動かなくなった遮断機が鳴り始め、遮断機が降り始める。
降り切る前に入ると異世界に行けると言う何ともチープなものだ。
一通り雨宮はその手順を読み終え、バカらしく笑っていたが、丁度地元でも有名な廃線路だと分かった。
「A地区って、確かこの近くじゃね?」
時間を見て、仲間にSNSで呼び掛けた。
雨宮竜也
[暇な奴、都市伝説の異世界に行ける遮断機見にいこうぜ]
高野純
[はぁ? 今何時だと思ってんだよ? もう10時過ぎじゃん?]
白田夏帆
[何かと思えば、くだらなぁ。1人で行きなよ]
雨宮竜也
[だって暇だし、それにちょっとした肝試しになるじゃん? しかもA地区って夏帆の家からでも近い廃線路の遮断機が異世界行けるってよ]
細川太樹
[面白そうだけど、今回パス]
雨宮竜也
[えぇぇぇ、お前ノリ悪りぃぞ]
白田夏帆
[いやいや、私の家の近くってことは、太樹の住む家とは大分離れてるんですが?]
高野純
[でも、こいつバイク免許取って、兄貴からバイク貰ってるの知ってんぞ]
細川太樹
[あぁもう! それならお前らも行くんだろうな? 行かないのなら容赦しねえぞ!]
白田夏帆
[全部純のせいだ! あんたちゃんと責任取ってよね]
高野純
[それを言うなら雨宮だろうが]
雨宮竜也
[じゃあ、今からA地区の廃線路にある遮断機まで来いな]
高野純
[おう]
細川太樹
[まぁ、何も起こらなかったら、後日来た全員に奢れよな]
白田夏帆
[それなら、行くわ、言い出しっぺ君は絶対逃げないでよね]
雨宮竜也
[ゲェ……まじかよ]
それから、小一時間経った――。
A地区の廃線路の踏切、ここだけ遮断機が残され、一切降り事無く、尚且つ鳴る事も無い、忘れ去られた遮断機に異世界に行ける都市伝説があるとは誰も思わなければ、一体誰の作り話かと笑うだろう。
ただ、そんな作り話を実践したくなる、今も昔も興味が尽きる事が無い。
今回は雨宮竜也のただただ暇な人生に少し刺激が欲しいと言う気持ちに、参加する3人もやって来た。
いや、後他に2人もやって来た様だ。
雨宮竜也は誘った3人以外に来た2人に言った。
「よう、ってアレ? 明日香と中本じゃんなんでいんの?」
白田夏帆が代わりに話す。
「奈香ちゃんは私が呼んだ、1人女子やだし。それと中本は純が犠牲者は増やすもんだって呼んだって」
明日香奈香も言った。
「本当に何も無ければ、竜也くんの奢りだって言ったから、とりあえず夏帆1人は出来ないし……」
高野純は中本武と腕を首に回し合ってじゃれつつ雨宮竜也に言う。
「奢りって聞いたから来ただけ、早く終わらせて奢れ」
雨宮竜也は流石に後悔した。
馬鹿な思い付きで破産宣告された様なものだ。
最後に、バイクで来た細川太樹が来た。
「なんだ? 竜也、頭抱えて?」
「別に、自業自得だから……」
『やっと、自覚したかコノヤロー』
それから時間まで、少しソシャゲをしたり、もうすぐ新学期に項垂れつつ、テストが簡単であってほしいと話したりして時間を潰した。
ーー零時。
雨宮竜也含め6人になったメンバーは、踏切を何回渡るとは書いてはなかったが、とりあえず往復10回やって鳴らなかったら雨宮竜也は皆に奢るのが確定だ。
まずは1回。
「なんで太樹バイク押しながら踏切渡るん?」
白田夏帆が細川太樹に不思議そうな目で見て聞いてきたので、細川太樹は答えた。
「いや、本当になったらバイク置いてったら盗まれるのやだし」
中本武の一言。
「確かに、でも鳴ったら運べば良いんじゃね?」
「あぁ……」
皆が納得し、細川太樹も顔を赤くし、往復1回終わってから置いてから再度加わった。
往復5回目――。
雨宮竜也は皆に聞く。
「お前ら、奢りって何を奢らせる気だ?」
「カラオケ」
「焼肉」
「バイクの備品」
「限定フィギュア」
「コンサートチケット2枚」
心から聞いておいて良かったと心底思った雨宮竜也は、皆に宣言した。
「カラオケ以外全部却下!!」
「えぇ〜!?」
往復8回目――。
流石に諦めがついてきた雨宮竜也は、必死にスマホで安いカラオケ時間とフードを確認始めた。
やっぱり何も無いじゃないとか言いたかった高野純だったが、カラオケなら良いかと半笑始め、9回目に入った時、あの独特の警報音が鳴り始めたではないか。
皆が驚き戸惑う中、バイクを停めていた細川太樹は慌て取りに戻った。
警報音と赤く交互に点滅するライト、そして遮断棒がゆっくり下がり始め、雨宮竜也が急いで走る。
「コレを潜れば異世界だ!」
「マジで行くのかよ?!」
雨宮竜也を追って高野純と中本武も走った。
「本当にただの偶然じゃないの?」
「でも、アイツら行っちゃう急いで!」
白田夏帆と明日香奈香も後を追う中、最後に半分下がった遮断棒を避けながらバイクを引っ張って細川太樹も追った。
「最悪じゃねぇか、置いてくなよ!」
全てが下がった遮断棒。
何も通らない線路。
ゆらゆら風で揺れる遮断棒は、鳴り止む警報音とともにゆっくり戻る。
そこには誰も居ない。
ただ、静けさだけがあった。