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捜索

光喜はどういう訳か、冬美也とフィンに連れられ電車に乗っていた。

 しかも、1時間は過ぎて既に乗り換えを2回はしている。

 何処かの田舎町の無人駅に到着し、3人は降りるとそこには車で待っていたジャンヌと日向に理美も居た。

 ジャンヌが怒り任せで冬美也に言った。

「どうして、光喜を連れて来た! 君とフィンだけでなら良いとは言ったが、まだ彼には無謀だし、あの時はボクの不注意で冬美也も傷ついただろうが」

 流石に怒られるよなと頭を掻きながら冬美也はどうしたものかと考えているも、ジャンヌがますます怒りを露わにした。

 流石にまずいと悟った光喜は間に入って言った。

「いえ、俺が勝手に冬美也のloinを覗いて、その、自分も行きたいって言ったんだ。だから冬美也は何も悪くない」

 あの時は自分が無理矢理、白状させたのが知ったきっかけだが、これでは冬美也が余計に怒られるので、嘘を付いた。

 しかし理美とフィンは一切騙されなかった。

「嘘だぁ、冬美也って押されると負けるタイプだし」

「分かる分かる、お前は返事返す前に1人になってから返すべきだった」

 もう見ていたんじゃ無いかと疑うレベルの会話に、光喜の方が顔を覆う。

 挙句、トドメにジャンヌが言った。

「うわぁ、君相変わらずそこだけは信頼されているな」

 冬美也は悔しいが全てが正論過ぎて何も言えずに謝罪となった。

「本当に申し訳ございません」

 日向もこっちのミスでもあると軽く庇いつつ、自分らにも非があるとし、あの時気付くべきだったと後悔した。

「もう来てしまった事だし、車出すって言った時、自分らで電車で行く時点で怪しむべきだった」

 フィンは諦めながら例え冬美也が撒けたとしても、勘付いている光喜に気付かれずに部屋から出れないと判断した。

「でも、ひょっこり来るだろ、光喜なら」

 隣近所な為、下手にこっそり出たら出たでまたギクシャクになるだろうなと考えると皆納得してしまった。

「あぁ……」


 車はそのまま無料駐車場に置いて、皆ある人気(ひとけ)の無いキャンプ場に着いた所で、日向は今日の話を始めた。

「今回、坂本からの情報により、最近この辺で行方不明者が数名出ている。そして、このキャンプ場付近で高校生位の男子が上の空で歩いているのを地元住民が目撃、しかもその男子に話しかけた老夫婦が消えたと近隣の人の話も浮上している。万が一イビトの場合は早急な対処が求められる。今回は動物達の管理者も捜索に入ってもらうので、理美に通訳及び補助を頼む事にした」

 ここで初めて理美の愛されし者を見れると分かると光喜は不思議とワクワクした。

 光喜の様子を見ていた理美は大した事では無いと言った。

「別にサポート型だよ。ただ動物と話せる程度で」

 あまり触れては欲しくなさそうな態度に対してジャンヌは嬉しそうに言った。

「そう謙遜するな、全ての生物に愛されし者はなかなかレアだし、面白いモノでもある」

「でも、アースの方で結構制御されてるから、そこまで力無いよ」

 その会話に少々違和感があったので、光喜は日向に聞いた。

「どういう事ですか?」

「アースが制御するんだ」

「アースが? 確か得られる愛であり異能でしたっけ?」

 久々に興味を持ってくれて嬉しいのか、日向も先ほどの緊張感が薄れ説明を始めた。

「そう、ただし力の発動、操作はこちらが、力加減と制御はアースになっていて、アースが望めば望む程、力は増大にも最小にもなる。我々はその量によって左右されるが、それは今まさに自分の力量にあった状態とも言える」

 光喜は納得しつつもまだ出現していない為、よく分からないでいると、理美が入って説明する。

「だから、こちらが望んでなくても、アースが望んでいれば、力は使えるし、逆にアースが望んでいなければ、こちらは力が使えない。極力喧嘩するのは控えましょうってね。どの辺から始めれば良い?」

 確かにその通りと感じるのはきっと光喜自身忘れてしまったせいだと分かり、早く思い出したいとも思ったが、手を掛けるタイプの愛されし者にはなりたくなかった。

 ジャンヌは理美の問いを考え、手分けして捜索する事にしたが、光喜にはあまり触れて欲しくないと言う考えで、あえてフィンを一緒にここに残す事にした。

「そうだな、理美は冬美也と共に、ボクと日向でフィン、お前は光喜でここで待つ様に、光喜は先の言った様に覚えていない以上アースも手が出ないと見たので、動くな」

 フィンは居残りと分かりショックが大きかった。

「えぇぇぇ! まぁ光喜だけ残すより良いけど」

「理美、山に入る前に、マダニとヒル共に我々を襲わぬ様言ってくれ」

「分かったやってみる」

 ジャンヌの頼みを聞き、理美は力を発動させる。

 最初何も感じないように見えるが、一瞬何か風を感じた様に圧があった。

 だが、少しずつ何かの気配を感じ、下を見た瞬間凄い数の小さなダニやらヒルが居た。

 あまりの数に光喜は血の気が引く。

「ひぃ! な、なんだ⁉︎」

 フィンは慣れているのだろう、一切驚かずそれどころか忠告した。

「理美ちゃんが呼び寄せたの、踏むと食われるから動くな」

「うぅ……!」

 理美のアースがそっとやって来て、光喜の耳元で囁いた。

「もっとやればもっと来るけど?」

 光喜の顔がみるみると青ざめ、気絶しそうになる。

 それを見ていた日向はすぐに理美のアースにツッコミを入れた。

「いや、やるな怖い」

 理美はその小さな生物達と色々な話をし、一斉に解散した。

 その直後に雄鹿一頭やって来た。

 理美を見ながらもそもそと何か声とも言えない言葉を発しているような感じだ。

 その内容を理美がその雄鹿の口調に合わせながら話しだした。

「“やぁ、よく来たね。ワタシはこの近辺に住む管理者だ。最近人間共は山の管理が疎かになってるし、仲間が増え過ぎてるんだから、人間はもう少し自然管理に対して責任持って貰いたいよ”との事です」

 雄鹿の後半の話がほぼ人間に対する愚痴で、少々困惑するも、日向は眼鏡の位置を直しながら雄鹿にイビトの件を聞いた。

「今はイビトだ。この辺で異常が起きていないか?」

 話そうとした時、雄鹿は光喜を見て言った。

「“はいはい、分かってるよ。所で、そこのボサボサ君”」

「えっ? 俺?」

 光喜の戸惑いを無視して雄鹿は話す。

「“言いたか無いが、ジャンヌの言う通り足手纏いだ、アースが出現出来るまで大人しくするか……”」

 どうやら、何処かで聞いていたようで、光喜に対してあまり歓迎してはいないが、そこまで蔑ろにするつもりもなく、方法を教えてくれているようだ。

「大人しくするか?」

「“荒療治でアースを出現させるかだ”だそうだけど?」

 通訳してた理美もどういう事かと頭を捻った。

 冬美也はすぐにもしかしてアレのことかと言ってみた。

「ショック療法みたいな感じじゃないか?」

 光喜がどう言う意味か尋ねるとあまり好ましくない回答が冬美也から返って来た。

「ショック療法?」

「物理で治す」

「おぅ……」

「“とりあえず、それはそこの碌でもない黒髪坊主に頼むと良い、それじゃ昨日出た辺りを君らとワタシと同じ管理者と皆で手分けして探そう、銀髪は弱そうだから1人じゃ心細いだろうとても強い助手を付けるからおいで”だって、それじゃ捜索開始だね」

 理美は雄鹿の通訳後に促され、光喜とフィンを残して山の中へと入って行く中、冬美也だけ納得しないまま叫んでいた。

「ちょっと待て、オレをカウントしてないだろ、その言い方!」

 2人だけとなり、人気が無い分とても静かだ。

 そして光喜はある事に気付き、フィンに聞いた。

「……ちょっと待って、今更だけどいつから管理者の事気付いてた? 冬美也もだったけど、なんか普通に流しちゃってたし」

 そうなのだ、冬美也はなんとなく知っている感じは初めてのイビト遭遇の件で察してはいたが、フィンも知っていたのかとここに到着するまで気が付いてすらいなかった。

 フィンは気付いていなかったのかと内心驚いてはいたが、きちんと説明した。

「あぁ、それね。俺よりは大分先に知っていたっぽいぞ。ただ俺や冬美也は管理者じゃない。言わば協力者って奴? まぁ、冬美也の場合はあの飛行機事故よりも前から管理者の存在を知っていたらしいけど、俺はちょっと違う方向で知った感じだよ」

「違う方向で知った?」

 ただその先に関してフィンは悪い笑顔を感じさせ、これからもっと悪い事をするのに話す筈が無いと言うような言いぐさだ。

「そう、でも言わない。管理者とかち合うと面倒だしずっと監視されるのも面倒だし」

 冬美也の時の言わないとフィンの言わないは本当に真反対だ。

 背筋が緊張し縮こまり、鳥肌に似た状態が起きた。

「フィン、君って一体?」

 光喜の緊張はすぐにフィンでも分かり、気持ちをほぐそうと先程の悪い顔が消えて笑顔になっていた。

「大丈夫大丈夫、そう身構えなくても、光喜とやり合ったってお互い痛いだけだし、そういうの良く無いよ? それに、冬美也に殺されるのヤダし」

「待って、冗談とか嘘とか言わないの返って怖いんですが!」

 これはこれで結構怖いものである。

 そのお陰もあって正直帰りたい気持ちにもなった。

 少し風が出てきたのか草木の揺れにより擦れた音が耳に入る。

 天気は良好だが雲が増えてきた。

 ジャンヌ達が山に入ってまだ10分しか経っていない筈なのに、時間がもっと経っている気持ちになる。

 黒い雲が通り、この地に影が産まれ、それが過ぎ去って、明るく眩い光が辺りを照らした。

 フィンは日のせいで目が眩んだが、光喜の後ろに得体の知れない自分達と同じ位の青年が立っていたが、明らかにおかしい。

 上の空ではあるが、体に歪な赤黒い石が至る所に浮き出て、生きている様に見えなかった。

「光喜、逃げろ!」

 フィンは光喜の腕を引っ張り自身の後ろに隠し、手をその青年に向けた直後だ。

 いきなり爆発が起きた。

 爆風によって辺りが揺れ、鳥や野生動物達が逃げ惑う。

 それに気が付いたジャンヌは日向と共に急いだ。

「まさか、そっちに⁉︎」

「分からん、でもこのままだと光喜が!」

 今の光喜が1番力が無い分ある程度力のある者に守らせるつもりでつけていた筈だったが、世間に知られてもまずい事をしている自覚が有る。

 そしてフィン自身も分かっている筈なのに、こうも大きな爆発にはジャンヌが怒っても無理もない。

「アイツに任せたはいいが、こんな爆発させるなんて馬鹿だろ!」

 すぐに着くと思ってはいたが、1番厄介な事が起きた。

 自分達はまだ10分しかここに入っても居なければ、こんな獣道通った記憶がない、ここで日向が頭を抱えてしまった。

「しまった……まがい物の気配も混じっている上、よりにもよって近付かせない気だぞ」

「ちっ! 所詮まがい物のクセに! 先に行く」

 ジャンヌは怒って風を纏い空高く飛んで行った。

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