表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/92

勉強同好会

 入学式から、かれこれ1週間は過ぎただろうか。

 あれからアースを思い出そうと何度か試みたり、記憶を辿るもどの辺で会っているのか見当が付かなかった。

 しかし、そんな事をしている間に皆がそれぞれ部活を決めて行くし、もう部活を始める生徒もいた。

 部活に入るのは絶対で、しかも帰宅部がない。

 光喜はならべく緩い部活に入り、バイトをしたかった。

 なんと、この私立バイト申請すれば早い段階でバイトが出来る緩さで決めたのもあり、早めに申請してしまおうとした。

 職員室にて、担任に相談したところ、意外な返答が来た。

「別にバイトは良いけど、赤点ラインが10点上がるからそこ注意な」

「えっ?」

「基本ここの学院は40点で低い様だけど、バイトで10点加算され50点が赤点ラインになって、たまにバイク通したいとなると10点加算、その両方をやる生徒は60点の赤点ラインなるから1点でも落とすと追試が決定で、その追試落とすとバイト停止、バイク通停止になる。でもバイトだけなら、まぁ緩い部活ならなんとかなるだろ」

 まさかの赤点ラインが変動するのには驚いた。

 私立だけなのか、ここだけなのか分からないが、光喜はあからさまに落ち込むので、担任がなぐさめる。

「そう落ち込むな、意外とバイトしている生徒のほとんど赤点とって無いから」

「ほとんどなら赤点取るやつ取るじゃないですか」

 少々見苦しかっただろうが、急に不安になって来た。

 そんな時だ、冬美也が職員室に入ってきた。

 どうやら、冬美也もバイト申請に来た様だ。

「先生、これバイトの申請書と親の同意書です」

 冬美也は担任に書類を渡すと、かなり感心していた。

「おぉ、早いな神崎! 如月も申請書と親がダメなら親戚の人でも良いから貰って来てからな」

 やはりそういう話は中等部のバートンが言っていた通り、その辺はちゃんと連絡が回っていた。

 その分、言いやすいと言うより、申し訳なかった。

「分かりました」

「あっ、神崎はもう部活活動してるんだろ?」

「部活活動って訳じゃないですが、中等部で作った同好会が何故か高等部にも設立されてたんで、そのままの流れで入ってます」

「なら、如月まだ決まってないし、その同好会でも紹介してやれば良いんじゃないか? 陸上部が目を光らして誘ってくる前に」

 担任の言葉に不審な顔になる冬美也だったが、光喜がまだ決めていないのに少々驚きだ。

「……? 光喜、もしかしてまだ部活決めてないのか?」

「うん、それにバイトもしたかったからその相談と申請書類を貰ってから決めようかなと」

 多分、前の事で人間関係にトラウマを抱えている光喜を見て、前向きではあるが、いつまた爆発するか分からない分、ならべく近くで見るべきだと冬美也は感じた。

「そうか、なら言ってくれればここに連れて来たのに、ほら、勉強同好会覚えてるだろ? 中等部の子達も一緒になってカラオケした」

 光喜もカラオケの時に来ていた中等部の子達とジャンヌの話を思い出した。

「あぁ! ジャンヌ先輩に聞いた。テスト対策とか色々してる」

「そう、それ。ここじゃなんだし、一回部室行くか? 何人か集まってると同好会でも部室貰えるし」

 冬美也が案内すると軽く言って職員室を後にした。


 2階の西棟には部活用の部室が幾つも存在し、その一室に勉強同好会の手書きの名札が付けられていた。

「おーい、戻ったぞ」

 冬美也が入ると既に人がいた。

「おっかえりーって、社長も来てたんだ。部活探し終わってるかと思った」

 フィンが冬美也の後ろにいた光喜に気付く。

 確かに早い人は1週間位で決めても不思議ではない。

「いや、まだ決めてない、バイト決めてから緩い部活を探そうかなって」

「なら、ここはうってつけだぜ。なんたって、毎日来ようが月1来ようが夜遅くまでやらないし、最短1時間で帰れるし」

「ボクもそれが決め手だ」

 ジャンヌも寛ぎながら菓子を食べてた。

「この高等部の勉強同好会はオレらの先輩だ。ジャンヌ先輩もその先輩に勧めて来たから入ったそうだ」

 冬美也はそう言いながら、空いた席に座り、光喜に座る様勧めた。

 光喜は軽くありがとうと言い、ジャンヌに勧めた人が気になった。

「誰が勧めたんです?」

「それは私よ」

「おぅ、フィリア、珍しい生徒会で忙しいんじゃなかったのかよ?」

 色黒で長い髪も真っ黒で、その髪を三つ編みにした女子が入って来た。

「その逆、部活発表会準備も1週間前までは申請中だし、まだ余裕よ」

 ジャンヌがフィリアについて説明した。

「フィリアは私と同じクラスでしかも生徒会でな、インド系に見えるし、半分はその通りだが、もう半分はアメリカ系の父だから、そのせいか宗教は緩いんだ」

 フィンも知っているのかフィリアの身の上話を始めた。

「その分、結構嫌な思いもしてたらしいぜ、なんせ、カーストの下位だったフィリアの母さんと結婚したもんだから、上位の連中は面白くないし、アメリカに行って功績も上々だって分かるから嫌がらせも酷かったらしい」

 流石に光喜この話は重いと感じ早々に話を止めようとした。

「で、でもフィリア先輩は生徒会やってるんですよね、凄いです」

「ほらぁ、光喜くんが気遣っちゃってるじゃないのぉ」

 フィリア自身はあまり気に求めていなかったが、光喜が話を変えようとしているのを見てフィンに文句を言うも、フィンはそうかと笑って勝手に菓子を食べ出した。

 まったくとため息を吐くフィリアは改めて光喜を見て、部活に付いて聞いた。

「と言うか、光喜くんはどこの部活にするか決めの?」

「いや、まだです。でも緩いならここにしようかな?」

「確かに冬美也が作った同好会をそのまま高等部に乗せたようなものだし、本当に緩いから楽だったんだけど、生徒会に軽い気持ちでジャンヌの推薦でやったら見事に当選しちゃってね。と言っても会計だし、結構気楽よ」

 結構気さくなフィリアに気を許す光喜を見て、フィンが余計な事を言い出した。

「社長、フィリアに気を許しちゃいけねぇぜ、一度告白ゲームと言う残酷ゲームがちょっと流行っていてな。無論、俺らも皆を巻き込む、陽キャ共の餌食になったんだ。しかし、ここでフィリアを告くらせた陰キャが謎の悲鳴と共に自白、その後、その黒幕である陽キャ達が次々と原因不明の嘔吐と痙攣により暫く入院し、その陽キャ全員が告白ゲームをさせていたと自白した事で、退学処分されたそうだ」

「はっ? でも、それってたまたまじゃ?」

 最近の流行病もあってか、そっちのせいで通えなくなったからじゃないかと疑ってはいるが、フィンのただならぬ雰囲気に息を呑んだ。

 フィンはそのまま話を続けた。

「いや、それだけじゃない、フィリアは見た目で虐めようとした連中も同じ症状で入院し自主退学した奴もいるんだよ。そして、噂ではフィリアにはインドの守護神による祟りだと……ふぎゃぁぁ!」

 いきなりフィンが鼻を押さえ苦しみ、倒れ込んだ。

 呆気に取られ、光喜は立ち上がる。

「フィン⁉︎」

 これはただ事ではない、すぐに3人に言おうとしたが、皆好き勝手に雑談を始めていた。

 挙げ句の果てに冬美也はペットボトルからコップにジュースに移して飲み始め、光喜に言った。

「あぁ、気にすんないつものだから」

「自業自得だ。遊び半分で喋るからこうなる。光喜も気をつけるんだぞ」

「もう、たまたまよ。たまたま、勝手に倒れだけよ」

 これはこれ以上突っ込んではいけないのと、先生を呼んだりしたら自分もこうなると光喜は確信してしまった。

 丁度、卑弥呼も入って来た。

 倒れたフィンを見ながら席に座る卑弥呼は冬美也に聞いた。

「やほー、フィン、また祟られてるの? 何回目よ?」

「今週5回まで数えて辞めました」

 冬美也のもう呆れて冷めた目が物語っていた。

 光喜の心の叫び。

『祟られ過ぎ!』

 卑弥呼は光喜に聞いた。

「ところで、光喜君は部活決めた?」

「えっ⁉︎ まだですよ! でも、他に良いところがあれば良いなぁって……あははっ」

 明らかに先の出来事のせいで言っている事がめちゃくちゃなっていた。

 卑弥呼は冬美也が入れてくれたジュースを貰いながら話す。

「なら、ここは良いわよ、フィリアも気に入って中等部からそのままパクって作ったんだし」

「とうとう自白しやがったな」

 ジャンヌも再度ここを推す。

「良いぞぉここは光喜、ここにはボクも皆居るんだ、バイトしたいのなら、此処みたいに緩いのは他に無いぞ」

「えっ?」

 冬美也もあの頃は大変だったのを思い出し、内心ありがたがっていた。

「そうだぞ、でなきゃオレ自身また面倒な同好会申請に部活顧問見つけんのしなきゃいけなかったんだし」

「結局ありがたがってるし」

 フィリアは笑う。

「そらなぁ」

「いや、やっぱ、り!」

「光喜くん」

「はぃ!」

「他に緩い部活無いよ?」

「最近、見直しもあって結構潰された同好会もあって、フィリアの機転でここは無事に済んだし、今年は私も生徒会副長から生徒会長の座を狙って同好会存続に尽力するし」

「それになんか良くわからんが、陸上部の連中が狙ってるぞ、はい、入部届だ」

 いきなり、ジャンヌから入部届を差し出される光喜はもしやこれは入らないと、フィンの様になるのではと心臓の音が耳の奥で鳴り響く。

 なんとなく、危ない気配を感じ逃げたいし、でも逃げたら、きっとフィンと同じ末路になると分かってしまった以上、答えは1つだった。

「……はい、入ります……」

「ようこそ! 勉強同好会へ!」

 冬美也は光喜に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

『可哀想な事をしてしまった……』

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ