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まがい物とイビト

「アースとは、彼らと話していれば分かるが、自分達をアースと呼び、尚且つ天然の賢者の石とも言う。欲や感情に歴史が紡がれ、命も魂も捨てられていき全てのモノが凝縮し、そしてそれらが濾過され、光まで通してしまう程綺麗な透明な石の事だ。あの時話したから省くが、選ばれると同時にやらなくてはいけないのは、アースの濾過の残りカスだ。アレが意外と厄介でな。言うなれば欲の塊が具現化した様なもの。その残りカスを我々はまがい物と呼び、まがい物の処分をしなくてはいけない。その理由はまるで血の結晶の様な石は賢者の石に見え、願いはある程度叶うも代償として命を削るし、体の内部に侵入する。精神汚染され食い殺されるのが末路だ。それを防ぐのが目的だが、まがい物と分かったうえで集める収集家もいる位だし、本当なら選ばれた周辺に落ちてそうなのに、無いから余計タチが悪い……!」

 日向の長い説明に少々熱が入っているのは、多分それで苦い思いをして来たのだろう。

 それに対して坂本はとても冷静にビールを呑みながら言った。

「ビギナー君ならそっちがメインで動くから良いんだけど――」

「もう1つが実際1番厄介なのがイビトだ。イビトは特にやらねばならぬ存在」

 ジャンヌの顔が険しくなるのを見て、イビトとはどんな恐ろしいモノか光喜は息を飲み、日向に聞いた。

「イビトって?」

 日向と鶴野がイビトについて説明を始めた。

「簡単言えば、ここの人間ではない人間或いは生物を指す」

「そいつらは不当或いは迷い込む連中をイビトと呼ぶ。理由は本当に様々だが、イビトは不定期にやって来てはあらゆる災いをもたらす。見つけ次第始末しなければならない」

 少々イビトと言う言葉に引っ掛かりを感じるも、人と変わらないのなら全てを疑って掛かるのかと更に疑問も湧き、光喜はどうやって見分けるのか気になった。

「そんな危ないイビトをどうやって見つけてるですか?」

「どんな生物も、根を張る、食以外でも気を地上から貰い、精神を整える。まぁ、最近は人や生物のバランスが崩れて最近そういうの精神が病むのも多いのはそのせいでもあるから」

「実は根をアースの力で見る事が出来るのよ。その根の張り方が違う事で見分けることが出来る」

「根の張り方で?」

 坂本が椅子の下から鞄を出しノートと筆箱を取り出した。

 説明の為に簡単なイラストを描き出した。

「根の張り方は木の種類と一緒だ。普通の人だと太く長い一本の根が奥までしっかり刺さっている弱っていると細くはなるが基本そんな感じ。イビトは違う、浅くそして根を張らないのが殆どだ。でも例外もあるから全てそれとは限らない」

 そのイラストを見せた。

 単純な絵だったが分かり易かった。

 何処までも伸びる根っこはまるで、野菜の人参や大根の様なのが自分達で、浅く描かれた根っこは野菜のひげ根のトマトや茄子と言った所だろうか。

 だがそれよりも浅いのがより分かった。

 しかし、見るとはどうやってなのだろうかと聞こうとした時だ。

 ジャンヌが言う前に先に教えてくれた。

「鶴野さんが言った様にアースの力でだが、集中力が必要で自身の根の張り方がどういうのかをまず最初の段階で見れる様にしてから徐々に広げていくのが必要で、もしかしたらコレぐらいなら根を見る事が出来るかもしれないな」

 一通り聴き終えた所でもう一つ気になった事を思い出した。

「そういえば、愛されし者って何ですか? ジャンヌ先輩が自分は風に愛されし者って言ってたのを思い出して」

 日向も管理者の目的の話ばかりしていて、1番話さなくてはいけないのをすっかり忘れていたのだ。

「そうか、それはまだったのか、すまんすまん、アースに気に入られた者だけが得られる愛と呼ぶべき異能と言うべきだろうか、その力が授けられる。管理者達はその異能に対して敬意を表し、その力の後ろに愛されし者と言う。そこからサポート型とウェポン型と分かれる。で、ここにいるわたしとジャンヌはウェポン、坂本と鶴野はサポートになる」

 改めてジャンヌからその異能を説明した。

「ボクは風に愛されし者」

「わたしは雷に愛されし者」

 続いて、坂本と鶴野も言った。

「私は主に爬虫類系に愛されし者、こういう系のサポートは動物や生物に愛されて言葉による意思疎通や指示、命令も可能なの」

「で、ワタシが鳥全般に愛されし者、坂本が言うようにそういうのが出来て、上手く扱えれば携帯で電波が通じない、ハッキング等の情報を防げるから結構便利よ」

 サポートも使い方次第では本当に有能なのが話だけでも分かるが、やはりサポートなりの欠点もあり、坂本もそれだけは半分諦めていた。

「ただし、話せるのはその対象物と愛された者だけだし、今度は話せないからと文通になるとお願いした鳥や爬虫類が獲物として食べられた猟師に撃ち抜かれたりしたらそこでおしまい」

 やはりこう言った欠点もあるからこそサポートと表されているのかもしれない。

 ただし、例外も存在し、ジャンヌはそれについて言った。

「でも、幻覚に愛されし者はウェポンだがサポートが主だし、逆に死体に愛されし者はサポートだが、死体と言う利点を利用しウェポンとして使う奴もいる」

 一通り見計らってから坂本がビールを飲み干し、説明を終わりにした。

「まっ、君はどっちかはアースが言わなきゃだし、鑑定に愛されし者もいるけど、更に話ややこしくなるから、今日はここでお開きね」

 鶴野も流石に疲れたのだろう、ようやく解放された気分で喜んだ。

「賛成!」

 しかし、坂本はまだ飲み足りないようで、もう暫く居る様だ。

「大人組はもう暫く飲んでから帰るから、君らは気を付けて」

 この時嫌な予感がしたのか、ジャンヌは釘を刺す。

「おい、日向をこれ以上酔わせるなよ。酒豪であっても酔っ払ったら面倒だ」

 日向も鶴野よりも坂本の酒癖の方が悪いのを熟知していた。

「分かっている、コイツらを送ったら帰るから」

「それはもう3次会決定じゃないか」

 だが、坂本の酔い具合からしてもう此処だけじゃ物足りない感じがしてきた。

 当の坂本は悠長な口振りで光喜に言った。

「光喜君、1日で色々大変な目にあったり頭が沢山付いていけない事が多かっただろうけど、コレからはどんどん先輩達を頼りなさいね。それじゃ、またね」

「はい……あのお金」

 ここで金銭の心配になる光喜にジャンヌが安心させる。

「大丈夫だ基本は先輩方の大昔からの備蓄した財産がある」

「そうそう、今日は呼んだ日向君の奢りだぁぁ」

 坂本がもう完全に酒に飲まれているのを見て、日向半分飽きれていた。

「分かったから、騒ぐなキャサリンが絞めに来るぞ」

「はーい」

 2人が立ち上がり行こうとした時、鶴野がわざわざ光喜に名刺を渡した。

「そうだ、これ、私の名刺に連絡書いといたから、坂本持ってないし何か用事があれば私経由で教えておくから」

「ありがとうございます」

 名刺を貰った光喜とその先に出るジャンヌは狭間のバーを後にした。


 外に出たら、何時間も経っただろうと真っ暗かと思ったら、入る直後とあまり変わらない状態に驚いた。

「えっ? 時間? えっ? 1分しか経ってない⁉︎」

 しまったとジャンヌは後悔した。

「久々に行ったから忘れてた。ここのバーと世界は時間軸がズレているんだ。バーはほぼ時間が止まった不思議な空間で、出ると入った直後の時間から出るし、しかもあそこはランダムでキャサリンが決めるから、後日行っても此処にあるとは限らない。先程の居た客もキャサリンが決めた場所に戻るから一緒に出る事はないんだ。だから、日向は多分酔っ払って帰ってくる。終わった、アイツ重いし、風で運ぶと悪酔いして吐かれるし……玄関先に倒れたら毛布を掛けて放置するか」

 そうとう落ち込んでしまっていたし、まさかの不思議系で1日が終わるとは思っていなかった。

 

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