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陰鬼士道

 森沢はヘトヘトになって、異界の根城へと帰って来た。

「もう最悪! アイツら何なの! 特にあのジジイドラゴン!」

 大広間に入りながらの悪態に、座ったままスマホを弄っていた水島が笑いながら言う。

「お疲れー、あんたまさかやられたの? 2度目じゃん」

「お前だってやられただろうが、水島!」

 他の者が2人を止めに入った。

「よさないか、お前ら、御前の前だぞ」

 御前と呼ばれたのは真堂だ。

「よいよい、さて、何があった? その口ぶりだと、一応こっち側の依頼が別方面での依頼と重なったらしいが?」

 何かを見ながら真堂が言う中で、森沢はどこからの依頼者か何となく分かって説明する。

「そうだよ、こっちはお偉いさん経由の依頼で、あっちは多分だけど警察関連だと思う」

「ふむ、どっちも経由はほぼ一緒と言うわけか」

「何? 警察関連だったのそれ?」

 真堂的には上手く行けば、あそこを自分達で扱う策を考えていた素振りで話す。

「あぁ、そもそもあんな状態に発展したんだ。こちらで解決出来れば、今後使い道もあっただろうが、やはり1人は厳しかったみたいだな」

「ちぇ、アースが使えないの分かったからもっと楽に仕留められると思ったんだけどなぁ」

 森沢は話をしようとした時、誰かに聞いたのか、襖を思い切り開けて笑いながら金剛が入って来た。

「木人、また失敗か!」

「げぇ出て来るな金剛のおっさんは」

「そうだそうだ、帰れ帰れ」

 普段仲が悪くとも、お互い嫌いな対象が同じなら結託するので、金剛は真顔で突っ込む。

「ここで結託するなふざけるな」

 先の者も真顔で言う程、金剛に対する評価が低い。

「日頃の行いの悪さだな」

 それでも金剛は回りに他が居ないのに気付きその者に尋ねた。

「他の連中はどうした?」

「皆、それぞれ別の国でしっかり働き成果を上げているよ」

 様々な国で、様々なハグレ神の使い手達が活動をし、ある者は現存していた宗教を潰し、ある者は裏社会を牛耳り破壊していく、そして政治への介入した者達はその国をゆっくりと破滅へと導いていく。

 真堂は最近B国の動きを話し出す。

「最近だとB国が排除する為軍を投入したそうだが、鎮火にあまり上手く行っていないようでな、徐々に穏喜志堂より国の暴動としてSNSで脚光を浴び出している。担当している奴は、それはそれで面白いと笑っていたぞ?」

 水島がエビッターで見ていたのは、そのB国で今の所はネット上だけだが、穏喜志堂の話が全く無く、B国はやはり悪、早く目覚めるべき等書いてあるのだ。

 面白半分で森沢にも見せれば、担当したかったのか悔しがる。

「かぁそっち行きたい今から」

 見せた本人ですら、ここまで上手く暗躍出来ないだろうとツッコミを入れた。

「あんたが言っても対処出来ないでしょ」

 真堂は危険な任務であり、それを熟せる者に頼んでおり、本部に残っている者達にも重要な任があるのだからと伝える。

「そもそもある侵略区の場所から入っての行動だ。アイツはお前と同じ木の使い手だし、相性の良い水か火だ。お前らにはきちんと本部でしっかり仕事しておくれ」

「あいよー」

 ふと、水島が前に捕まえたフィンについて金剛に聞くと、とんでもない回答が返って来て、真堂以外皆ドン引きだ。

「ところで、あの捕まえた少年ってどうしたの? 届けたの?」

「あいつはどう扱っても良いって言われて、客を取らせてる」

「げぇぇぇ! どの時代でも大概いるよな変態」

 真堂は金剛に言う。

「金剛、悪いがそろそろ実験体として使いたいのでこちらに寄越してくれないか?」

 金剛的には渡したくない素振りをみせるが、真堂は最初笑った後、こう話す。

「はぁ? イキのいい奴はあいつしかいないから正直渡したくないが? 何人か渡しただろう?」

「全部失敗した。流石に精神崩壊した奴は使えん。まだ生きているだろう? あぁいうのを待っていた」

 折角のパイプを手に入れて上々だったのと、まるで楽しみが無くなるのを惜しがっていた。

「……上客ばかり揃っているのに」

 真堂もさまざまな方法で繋がりをもっと広げたいのは本音だ。

 だが、今回管理者達が暴れ回り、支部が一部壊滅したのも事実。

「悪い、どの道管理者達は根城を見つけるのも問題だ。その前にこう言う事をするって見せておけば少しは時間稼ぎ出来るだろう?」

 こちらはもっと酷い事をするのだと見せておけば、少し動きが鈍くなると踏んでの言葉だ。

 そんな程度でやる気かと言いたげな目線だったが、かなりの長い付き合い、渋々了承するもしぶとい客もいるし安易に断りを入れて大丈夫だろうかと悩みどころ。

「分かった。でもその客どもには断り入れんとならんぞ? しかもしつこい奴もいるし」

「いつもの事をするまでよ。日程が決まり次第教えるから、それまでに片付けておいてくれ」

 真堂からすれば、いつもの事のようで、どうあしらうかも金剛は分かった。

「了解」

 そう言って早々に話をつけに行くと出て行く。

「信者の数も増えている分、そろそろやるんで?」

「何度も何度も繰り返しては妨害されては上手く行かなかったが、今回は試しも含めて何処まで行くか、楽しみだよ」


 牢獄内、フィンは吐き続けていた。

「……! ……――!」

 ただでさえ華奢な体だったのに、更に痩せてしまい、碌に食事も出来ていないのだろう。

 置かれていた食事には一切手を付けていないのだ。

 トウコが食事を運んで来た。

「……フィン、また、しょくじとれてない?」

 新しい食事と交換し、一度去ったかと思えばお湯の入った桶と手拭いに、あの時使った貝殻に入った軟膏だ。

「別に、大丈夫……! どっかの病持ちがいたんだよ――!」

 言った直後に胃液を吐き出す。

 若干、血も混じっているのを見たトウコは胃に効く飲み薬を持って来ようとしたが、フィンが止めた。

「くすり、もって」

「良い、自分で分かる。もう持たないって」

「でも」

 いきなり自身が持たないと言われ、トウコはそれでも具合の悪いままして置けないと、動こうとする。

 フィンは話す。

「トウコさんは命令で来てるんでしょ? 気にしないで、回りも探してくれてるってのも分かるし、あんたらはあんたらの思惑がある。力も上手く使えない、制御されている以上俺はただの人……人形かな? 前に戻っただけだなこれ」

「……」

「ただの独り言と思ってほしい」

「わかった」

「俺は真名を言われると操り人形になってしまうから、重要な話も任にも就かせられなくって、結局幹部になれない、宙ぶらりんで本当にいやでさ、不満が無いって嘘になる。でも万が一、敵によって操り人形で殺しに来た場合、ちゃんとボス直々に殺してくれるって約束してるんだよ。だからさもし万が一あんたらが操り人形として俺を使うならそれで構わないさ。俺結局それしかないからね」

 悲痛な顔でトウコは何か言おうとした。

 きっと彼女なりの思いがあったのだろう。

 だが、無情にも話が遮られる。

「あ――」

「トウコ、まだここにいたのかい?」

「しんどうさま」

 真堂がいた。

「君は本当に世話好きだな。まぁ、世話し過ぎてまた何時ぞやの惨たらしい死に方をした連中のようにしたくないので、情に流されてはいけないよ」

 今まで来たのは彼女の意思にも捉える様な言い草だ。

 トウコを見ると、真堂が如何に強く恐ろしいのかが分かる。

「……! はい……しんどうさま」

「なら、トウコは戻りなさい。私はこの鳥に要があるんだよ」

「はい……」

 真堂の命令に背くこと無く立ち去った。

 その姿は怯えている様だった。

 真堂はフィンに言う。

「さて、お前には少し我々の実験に付き合って貰いたいので、最後の晩餐になるんだちゃんと食べなさい」

 笑う顔の目は笑わず、穢らわしい何かを見ていた。

 

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