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46. 呪われたノースティア2<赤熱の包囲網>

長くなったので2分割しました。


本日、2つ投稿します。(1つ目)


赤熱蜥蜴サラマンダーよ。すっかり囲まれているようね」


「野郎ども、円陣だ!」


 ジョイルの声に、海賊たちが非戦闘員を中心にして円陣を組んだ。その周りを焼けた岩の体をした蜥蜴たちが囲んでいる。ざっと数えても二十匹以上はいる。


「あの半魚人たちが追ってこなかったのは、こいつらがいるのを知っていたのね。ふふふ、やるじゃない、フェルマリ。最初から、海賊たちをこいつらに掃除させるつもりだったのね」


 赤熱蜥蜴たちは無機質な爬虫類の目で、じわじわと近づいてきていた。その1匹に向けて、バラグが矢を放つ。しかし矢は岩の体に弾かれて地面に落ちると、そのまま炎をあげた。


「岩の体だから、矢が効かないんだわ! それに近づくだけで燃やされてしまう」


 キャスリンが絶望した声をあげる。その頭をジョイルの無骨な手が撫でた。口元に笑みを浮かべていたが、しかし目はいつものニヤけたものではなく、真剣だった。あたりを見渡し、西の方を指さす。


「あっちがいくらか手薄だな。俺とバラグと他2名、4人で奴らを蹴散らし道を開ける。そこからずらかるぜ。戦えない奴は俺たちのそばから離れるな。それからお前らは殿しんがりだ!非戦闘員を庇って少し食い止めろ。どうせやべえと思ったら逃げるんだろうから、撤退の合図は出さねえ」


 海賊たちが頷いた。キャスリンの隣の海賊の、喉を鳴らす音が聞こえた。


「よし、321でやるぜ。3、2・・・」


「ゲェエエエエエエエ!!」


 そこでトカゲの一匹が雄叫びをあげた。同時に、一斉にトカゲたちが飛びかかってくる。


「イチゼロ!バラグ、俺に続け!」


 ジョイルは鎖を振り下ろした。その先には巨大な分銅がつけてあり、赤熱蜥蜴の岩の体を打ち砕いた。胴体を砕かれた蜥蜴は苦悶の声をあげて、その場に転がった。その体を踏みつけて、後ろから2体が迫ってくる。海賊が矢を放つが、やはりその体に弾かれた。


「ダメだ、矢は効かねえ」


「直接叩くしかねえだろ!」


 バラグが突進し、力任せに斧を振り下ろして赤熱蜥蜴の頭を割った。しかし頭を割られながらも、蜥蜴は怒りの炎をあげてバラグを睨みつけた。


「か、硬え…」


 バラグが言い終わる前に、その背中に他の赤熱蜥蜴が飛びつき、その体を引き倒した。岩の体にのしかかられ、たまらず地面にうつ伏せに倒れる。そこにもう一体が飛びついて足に噛み付くと、噛みつかれたふくらはぎから炎が上がった。


「バラグ!」


 ジョイルが鎖を横なぎに払い、バラグの背中の蜥蜴を弾き飛ばした。しかしすでに火はバラグのマントに燃え移り、髪にも火がつく。


「くそがああ!」


 火がついたままバラグは斧を力任せに振り下ろし、足に噛み付く蜥蜴の頭を割った。しかし蜥蜴は噛みついたまま足を離さない。何度も斧を振り下ろして、ようやく蜥蜴は動かなくなったが、バラグの方も全身から火を上げたまま、崩れ落ちた。


「バラグさん!」


 誰かの呼び声にもバラグは答えない。代わりに周囲から海賊たちの悲鳴が木霊こだまする。


「あぢぃ!やめろ、やめてくれえええ!」


「ああ、燃える!体が燃えてる!誰か来てくれえええ!」


 後方では蜥蜴に飛びかかられて海賊たちが悲鳴をあげていた。すでに戦おうというものはいなく、我先にと逃げ惑っている。


「畜生風情が!よくもバラグさんを!」


 怒りに任せた側近の海賊が蜥蜴に剣を打ち付けるも、刀身が折れて剣先が夜の空に飛んでいった。丸腰になった海賊と、蜥蜴の目が合う。


「あ、いや、これは」


 次の瞬間、蜥蜴が海賊に飛びかかった。だがそれは海賊に到達する前に、空中で叩き落とされる。ジョイルの鎖だった。


 ジョイルは叩き落とした蜥蜴の首に鎖を巻き付けると、万力の力を込めて引きずった。そのままジョイルは体を回転させると、蜥蜴の体が浮かび上がった。


「オラああああああああああ!」


 その蜥蜴の体を別の蜥蜴に叩きつける。岩の体通してぶつかった蜥蜴の体が砕け散り、2体の赤熱の光が消えてただの岩に戻った。


「西だ!とにかく西に走れ!戦わなくていい!生き延びろ!」


 ジョイルの声が響き渡った。すでに戦闘員も非戦闘員もなく、等しく皆、逃げ回っている。追いつかれたものはあるものは岩の牙に体を砕かれ、あるものはのしかかられて松明のように炎をあげて倒れている。


 そして今、もう一人、火蜥蜴に追いかけられている非戦闘員がつまづいて転んだ。ジョイルは蜥蜴に鎖を放って引き倒すと、転んだ人間に声をかける。


「ぐずぐずすんな!」


「はいいいい、ありがとうございますうううう」


 涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしているのは、名前も知らないが、ランスを連れてきた神父だった。なんだ、こいつかよ。ジョイルは損したような気分になり、次の獲物を探して周囲に目を向け、叫んだ。


「てめえら!俺が誰だと思ってやがる!俺は偉大な鉄鎖海賊団の船長、鎖ちぎりのジョイルだあ!全員、俺にかかってこい!」


 その気迫が通じたのか、火蜥蜴たちが動きを止めてジョイルの方を見た。その間に、皆がジョイルの横を通って西に逃げていく。


「ジョイル!」


 一人逃げず、声をかけたのはキャスリンだった。


「なんだ、ランスの姉ちゃんかよ。ぐずぐずしねえで、はよ逃げな」


「でもあんたは!」


 ジョイルは鎖を地面に打ち付け、衝撃音を鳴らした。蜥蜴たちが警戒し、後ずさる。


「俺はもう少し遊んでくさ。まだまだ暴れ足りねえんだ」


「馬鹿言って!あんたが強いのはわかったわよ。けどこんな大勢の蜥蜴、殺されてしまうわ」


「あっれれぇ、心配してくれてんのかな?惚れちまったか、俺に」


「いや、あんた正直、ぜんぜん趣味じゃないわ」


「趣味じゃねえのかよ。流れ的にいけると思っちまったわ」


 ジョイルが苦笑した。しかしキャスリンの方はにこりともせず、


「海賊に借りを作られたまま、死なれたくないもの。あんたが逃げるなら、一緒に逃げてあげる」


 何言ってんだ、この女。ジョイルは蜥蜴たちから目を離さずに、頬を掻いた。


「偉大な俺様がそんな簡単に死ぬかよ。あー、じゃあ賭けをしようか。もし俺がここを無事に切り抜けたら、お前から俺に褒美をくれよ」


「は?褒美?お金はないわよ」


端金はしたがねなんていらねえさ。もしここをお互い生きて切り抜けられたらよ、お前のおっ○い、俺に見せてくれ」


「は?」


 キャスリンが胸を抑える。今、こいつ、なんて言った?


「聞こえなかったか。お前のおっ○いをさあ!」


「何度も言うな!聞こえてるわよ、バカ!ああ、もう心配して損したわよ。確かにあんた、殺しても死ななそうね!」


「約束だぞ!おまえのはもう俺のものになるんだから、死ぬ気で守れよ!傷ひとつ付けんなよ」


「あんたんじゃない!見せるだけでしょ!あと、悪いけどそんなに大きくないから!文句は聞かないからね!」


「わかったから!ほら走れ!逃げろ!」


「言われなくてもいくわよ、死んじゃえバーカ」


 キャスリンの駆けていく音が聞こえ、それは瞬く間に遠くなっていった。随分、逃げ足のはええ姉ちゃんだな。まあ、俺の方も誰かを心配するほどの余裕はない。


「待たせたね、君たち。さあ、死にたいヤツからかかってきやがれ!」


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