海を見た
小さな小さな漁港のある町に生まれ育った身といたしまして
海を見たからどうなのよ?って所は
私自身もどうなのよ?って所なのですが・・・
海岸沿いに数年以上は使われていない旅館が1件ぽつんとありまして
子供の時分などというものは、怖い物見たさなんてものもありまして
封鎖されている金網をよじ登り、冒険という名の不法侵入を・・・
大人に見つからずに侵入するのが醍醐味であり、それ以上でもなければそれ以下でもない
すでに目標は達成されているので、あとはこっそり帰るだけ
と、思っていたのだけれど
田舎のくせに今この時だけ人が歩いてくる
見つかると、怒られるので
とりあえず、旅館の裏側に回ってみると
(すげーーー!)
って、思う程広いグランドがあった
ここを通り過ぎて、目の前の山を越えれば見つからずにうちに帰れる
そう思って、とりあえず山を登りだしたのだけど
位置的に、山といっても子供の足でも1時間もあれば超えていけそうな山しかこの辺りにはないはずなのに
どれくらい登ってる?ってくらい登ってる
朝10時に侵入してから、もう午後の3時
多分、隣町迄行けるほど歩いてるんだけど
ひたすらに山を登っている
このまま帰れないのかも・・・
多分、この時泣いていた気がするのだけど
その後の景色が忘れられなくて
夕方に差し迫ったころ
やっと、頂上にたどり着いてあとは下るだけって思ったら
その向こうに海が見えた
海を背にして登ってきたのに、目の前に海が見える
そして反対側にも夕日に彩られた海が見える
そこからどうやって帰ったのか、記憶はまったく残っていないのだけど
深い山に囲まれた海と、そこに浮かぶ大きなヨット
海というには、山の頂上近くにあり
湖というには、大きすぎる
後年、大人になってグー〇ル君で調べるも、そんな海も山もなくて
旅館の後ろにグランドなんてものも、あった形跡もなくて
あの旅館の後ろに回り込んだ時から、どこかに繋がっていたのかな?
あぁ、私に絵心があれば・・・
きっと賞がとれるほどには幻想的で綺麗な風景だったのに
残念でならない