56話 帰蝶からのアドバイス
「相談って何?」
正座をした帰蝶が問う。
「えっと、お義姉様は、その……どうやってお兄様を好きになったんですか?」
「え?」
相談の内容が想像の斜め上を行ったのか、帰蝶はきょとんとする。
「あ、いや、えっと、その。好きな人には、どうやって尽くせば振り向いてくれるのかなって……」
好きな人の話になると多少恥ずかしくなるのは当然だが、お市も同じく、恥ずかしそうにしながらも不安そうに眉を寄せる。
「あぁ。あの言ってた人ね」
お市は世楽の事を二人に喋っていた。ただし、名前は別に教えていないし、ただ見初めたとした言っていない。
コクリと小さく頷いたお市に、帰蝶は困ったように苦笑を浮かべ、こめかみを軽く掻く。
「そうね。答えになるかは分からないけど。まだ付き合ってもない時はずっと信長に攻められてたわね」
帰蝶は自信なさげに答える。ただ、表情は過去を思い出すためか少しばかり柔らかい。
「私ね。最初は信長の事好きじゃなかったの。信長は私に一目惚れしたって言ってたけど……」
ここ一週間どっと疲れたのか、蹴られて吹っ飛んだ信長はそのまま寝ていた。その信長を見ながら、帰蝶は続ける。
「信長はね、ウザいってほど私に絡んできたの。食事や遊びに誘ったり、ただ会いに来たり。」
帰蝶の言葉にお市は(お兄様らしい)と苦笑を浮かべる。
「でもね。ある時、信長のことが好きになったの。私のために色んな事をしてくれて、身体も張ってくれた。それから、ウザったいって思ってた信長の絡みが楽しくて、嬉しくてしょうがなくなったの」
帰蝶は自分の恋バナに恥ずかしそうに頬を朱色に染めながら、大人びた笑みを浮かべてお市を見据える。
「だからね?言いたいのは、諦めないって事。信長みたいにずっと攻撃し続ければ、きっと私みたいに落ちるわよ」
「……ホント?」
まだ不安そうに眉を八の字にするお市。そんなか弱くも可愛く見えるお市に、帰蝶はふわりと抱き締める。
「大丈夫。お市は信長の妹なんだから。きっと出来るわ」
帰蝶の抱擁に嬉しそうに笑みを浮かべるお市は、帰蝶の顔を見る。
「ありがとう。お義姉様」




