55話 信長、家では甘々!?
安土城内の一室。
そこは和室十二畳の広い部屋で、色々な家具が置いてある中、二人分の布団が皺なく綺麗に敷かれていた。
その横で、藍色一色の和服を着た女性が、寂しそうに正座をしている。
バンッ!!
その時、ふすまが壊れそうな程の勢いで開かれた。
「帰蝶!!帰ったぞ!!」
そして、信長の大きな声がその女性、帰蝶を振り返らせる。
「信長、お帰り。もう終わったの?」
特に驚いた様子もなく切れ長い目に美しく整った顔の帰蝶が問う。
「あぁ。ただあいつらの戦はまだ続くだろうな」
やれやれと肩を竦めながらポケットからスマホを出して、何やら操作すると、その画面を帰蝶に見せる。
【もう戦は止めてください。私は全く気にしていないので全然大丈夫です。これ以上戦を続けたら私はもう帰りません】
「……お市から?そういうこと。だから帰ってきたのね」
帰蝶は苦笑を浮かべてそう呟き、信長はスマホを布団に投げる。
「お市が気にしてないなら俺はあの戦に参加する意味がないからな」
「ホント、信長はシスコンね」
ツンとした口調の帰蝶。これが平常運転だ。
今話題になっている真田幸村と石田三成の戦。これに信長が参加していた理由は幸村がお市を襲ったから。ただ、お市自身が気にしないとなれば超絶シスコンの信長は戦う理由がなくなる。だからこうして帰ってきたのだ。
「あー疲れた」
信長はそう言うと、やる気が失せたように身体を横にする。しかも丁度正座していた帰蝶の太ももの上に頭を置いて。
突然太ももに信長の頭が乗るが、帰蝶は顔色一つ変えずいる。
「信長」
「ん?」
「汗臭い。お風呂入ってきて」
帰蝶のツンとした言葉に、信長を自分の腕を鼻に近づける。
「そうか?」
「そうなの。臭いの。だから入ってきて」
上に向いた信長の顔を見下げる帰蝶は、信長の肩をトントンと叩いて合図を送る。
「いやだ」
すると、身体を起こした信長は帰蝶の肩に手を伸ばして、そのまま布団に押し倒した。
「ちょっと信長。止めて」
「んーん、止めない」
「私もお風呂まだ入ってないから」
「俺は帰蝶の汗の匂い、好きだけどなぁ」
「話聞いて」
帰蝶の声を耳に、信長は帰蝶の首筋から肩にかけての部分に顔を埋める。
「んッ、信長……ちょっと、んぅ」
信長に匂われ、くすぐったさに声を上げる帰蝶。
匂っているにもかかわらず、信長はいつの間にか帰蝶の両手首をXに片手で拘束して、脇に鼻がくっつく。
「んぅ、……っ、信長」
されるがままの帰蝶に、信長は両腕を拘束したまま顔を上げる。
「あぁ良い匂い。帰蝶、なんで布団俺のも敷いてんの?俺今日帰ってくるって言ってないよな?」
二つの布団が隣同士にくっついてるのを目に、信長は問う。
「………」
「なんで黙るんだよ」
目を逸らしてだんまりする帰蝶に、思わずツッコむ信長。
やがて、帰蝶はほんのり頬を染めて、目を逸らしたままボソリと言う。
「……だって、寂しかったんだもん」
これも平常運転だ。いつも通りの様子。まさに帰蝶はツンデレだ。
「寝るとき、ずっと敷いてたの?」
「……うん」
信長はお市が襲われた事に激怒し戦に参加した。そのためここ一週間安土城を空けていた。だから、寝るときはいつも一人だった帰蝶は寂しさのあまり信長の布団も敷いていた。なんなら信長の布団で寝ていた。一人の時は信長ばっかりだ。
「俺の布団で寝てたんだ。可愛いなぁ帰蝶は」
信長は再び帰蝶を匂うため鼻を近づける。
「んぅ、んっ、はぁ」
くすぐったさと、信長の言葉に目を細める帰蝶は、信長と目を合わせると、レベル100のデレを出した。
「一週間寂しかった。信長も?」
「うん。寂しくて死ぬかと思った」
「ん、じゃあ、その分いっぱい……愛して?今から、沢山……愛して?」
顔を真っ赤に染めてそんな尊死するような事を言う帰蝶に、信長はムラッとくる。
ニヤリと笑みを浮かべると、信長は帰蝶を拘束したままに唇を重ねる。
「んむ、ん、はむ、んっ、んむ」
恥ずかしそうに頬に熱を帯びせて濃厚なキスをする帰蝶と信長。
「ん、んむ、んっ、んちゅ、んむ……ぷはッ」
甘い吐息と一緒に熱く重なった唇を放す二人は、見つめ合う。
とろんと蕩けた瞳で見上げる帰蝶は、恥ずかしそうに膝を擦りあわせて、甘えるように言う。
「私も、信長の汗の匂い……好き」
その言葉も信長のそれを高揚させ、信長は表情をいやらしいものに変える。
「帰蝶」
そして、器用に和服を解きながら、露わになった白いすべすべのくびれたお腹を、手でさすさす撫でる。
「んっ、あ、ふぅ」
「久し振りに触った。帰蝶のお腹」
もじもじと太ももを擦り、くすぐったい感覚と同時に気持ちよさも湧き上がる。
その信長の手は、お腹を這うようにして下へいく。
「んや、はぅ、んっ、はぁ、あん」
甘すぎるピンク色の嬌声を漏らす帰蝶は、恥ずかしそうであり嬉しそうである。
そして、下着の中に手を忍び込ませようとしたその時。
「お兄様?入りま―――」
お市がふすまをそっと開けて入ろうとしてきた。
ただ、もう中は見えているので中でなにが行われているのかはもうバレバレだ。
イケない状況に出くわしたお市はぽかんとし、三人は目があう。
「……あ」と声を漏らす信長は良いが、帰蝶はただでさえ信長とする時恥ずかしかったのに、身内に見られ更に羞恥心が増したためか、首筋まで真っ赤に染める。
帰蝶のその哀れもない乱れた姿と、二人の雰囲気に顔を染めたお市は、スッとふすまを閉めようとする。
だが。
ボフッ!!
「うぐッ!?」
帰蝶は思わず信長の腹を蹴り上げ、乱れた和服を慌てて戻す。腹部から鳴ってはいけないような音がしたのは置いておこう。
少し乱れているが和服を整え終えると、帰蝶はまるで何もなかったですよオーラを全開に平然を装って、唖然とするお市に話し掛けた。
「ど、どうしたのお市?」
帰蝶はまだ顔も真っ赤だし信長はぶっ倒れてるしで目の前に広がるぶっ飛んだ光景に惑わされる。
「え、えっと、お義姉様に相談があって着たんですけど」
「な、なに?なんでも相談して?」
変な汗を滴らせながら、帰蝶は胸の内で悶える。
(どうしよう。お市に見られちゃった)
これは誤解を生みそうだから説明しよう。おっぱいや諸々が見られて恥ずかしいのではない。いつもお市に接すような態度とは違い、信長に甘えるところが見られて恥ずかしいのだ。
ドクドクと心臓が早く跳ねるが、帰蝶は頬に帯びる熱が冷めてきたところで問う。




