49話 土曜、夜、累
「お母さん!どうしよう!」
二階の部屋から飛び出して涙目になりながら母のもとまで慌てる累に、そのお母さんはおっとりとしつつ驚いた表情を浮かべる。
「どうしたの?」
「明日出かけるの!!」
「あら誰と?御前ちゃん?」
「あ、え、う、……ち、違う友達」
「男の子?」
「違うッ!!女友達!!」
頬を真っ赤に即答の累は、それが仇となる
(この反応、男の子ねぇ!)
ぱぁっと顔を輝かせて興味を抱く累母は、にまぁっとした表情を浮かべて質問する。
「何に困ってるの?」
「そ、その、明日の服。どれにしようか、分からなくて」
(男の子と出かけた事なんて一度もないから分からないのねぇ)
母親にバレている事を知らない累は眉を八の字にする。
「お母さん。選んでくれる?」
「いいわよぉ」
そして、部屋へと移動する。
「その子、どんなタイプが好きなの?」
「え?何でそんな事……」
「初めてなんじゃない?その子と遊びに行くの」
あえて男の子とは言わない心は母親の優しさなのか。
「私服の第一印象も大切よ?ちゃんと選ばなきゃ。累は可愛いもの」
母親の言葉に照れ隠しで顔を背ける累は、隣で服を選ぶ母親に視線を向けて、世楽の印象を思い浮かばせる。
(えぇ、どうしよう。タイプって言われても、世楽は男の子だし。格好いいなんて言うのもちょっと。何て言おう)
ズラズラと世楽の印象を脳内で並べて、伝えてよさそうなものを口に出していく。
「えっと、身長が高くて、堂々としてて、距離感が近くて、えっと、えっと」
「まるで御前ちゃんみたいね」
累母には脳内に御前しか浮かばないが、累には男の子の情報など言えるはずがないと悟っており、おっとりと笑って服を取り出す。
「まぁ最初は分からないわよね。まずは何事もシンプルイズベストがいいんじゃないかしら」
そうして選抜した服を、ベッドの上に皺なく広げた。
「これでいいと思うわよ?」
「ありがとうお母さん!」
おっとりとした笑顔で服を決めた累母に、ぱぁっと顔と顔を煌びやかに、感謝を伝える累。
「明日の髪はお母さんがやってあげるわ」
「……あ、ありがとう」
照れくさそうに言う累は、内心。
(なんでここまでしてくれるんだろう。もしかして男の子と行くってバレてる!?……いやそんな事ないはず)※バレています
服をハンガーにかけた後、お風呂に入ってベッドに乗った累は、口元を枕に埋める。
「明日、かぁ。んふふ。……楽しみだなぁ」
そして、寝ようとするのだが、明日がよっぽど楽しみなのか、日が跨いでも寝れなかった累であった。




