37話 修羅場
「御前先輩ッ!!世楽様に何をしたんですか!?」
カッと目を見開いて怒った様子で顔を真っ赤にするお市は、寝ぼけている世楽に寄り添って御前を睨む。
「私は何もしていない!いや、何もと言うと嘘になるが」
「何したんですかッ!?」
男子生徒の部屋で男女二人きりのその状況で、ピンク色の情景しか思い浮かばないお市は血相を真っ青にする。
「一緒に寝てしまっただけだッ!!これについては私が勝手に部屋に入ったから私が悪いが、私は世楽に手を出したというより出されたんだッ!!」
お互い顔を真っ赤にして言い合いを繰り返す。
御前の言葉にピタリと動きを止めたお市は、ゆっくりと世楽の顔を覗き込むと、両頬を軽く引っ張り始めた。
「世楽様。御前先輩の言うことは本当ですかぁ?起きてください世楽様ぁ?」
口元は笑っているが、目元は完全に絶対零度だった。
「ん、ふわぁぁぁ。おふぁよ」
「世楽様!!寝ぼけないでください!ちゃんと私の質問に答えてください!」
のっそりと大きく欠伸をする世楽の肩を揺らす。
「世楽様は夜御前先輩を襲いましたか?」
「ちょッ!?その言い方はなんか違う気がするんだが!?」
お市の言葉を真に受けたらとんでもない事を言っているのだがら、世楽は特に気にした様子もなく寝起き声で言う。
「ん~、記憶ない」
まだ意識も定かではない世楽は眠気に負けて寝返りを打った。
「も~世楽様ぁ。しっかりしてくださいよぉ」
頬をぷっくり膨らませて拗ね始めたお市の力ない声に、世楽は手を伸ばす。
「もういいじゃん何でも」
世楽はお市の首に手を回すと、あまり強引にならないよう気遣いながら布団へ誘い込む。
「え?ちょっと!?」
されるがままのお市は世楽に抱きつかれたままの状態に顔を真っ赤にして。
「ちょっと世楽様!?だ、だからこういうのはまだ早――――」
言葉とは裏腹に嬉しそうでニヤけを必死に我慢した様子のお市は、実際本当にまだ早いとは思っていた。全くその通りである。だが、お市の言葉はなんだか将来まるで―――――う゛っう゛ん!!やめておこう。
そして、言葉は言い終える前に御前によってプツンと切れてしまう。
「はなっれろ!」
お市と世楽を引き剥がしてその間に割り込む御前は、ムスッと可愛く頬を膨らませる。
この後、遅刻ギリギリになるまで御前とお市の修羅場は続いて、世楽は一人ぐっすり寝ていた。




