33話 クララ、嫉妬
午後の授業が終わると、生徒達は吹っ切れたように解放される。
それは三大美女の一人、クララも同じであった。
嬉しそうに透き通った綺麗な聖母笑みを浮かべて四組へ向かうクララったら視線を集めること。
カバンを大切そうに抱えるクララはその中を満足そうに覗く。
(世楽君、喜んでくれるかな?)
前日。あまりにも暇過ぎたクララはお菓子を作って、世楽にも作ってあげたのだ。それもチョコとバターのクッキーだ。とても美味しそうである。
四組の前に着いたクララ、スライド式のドアから中を目だけを出して覗き込む。垂れ落ちる髪を耳に流しながら
世楽の居る席を見ると、ぱぁっと輝きを一瞬宿らせるも、それは直ぐに消えてしまう。
「ねぇ世楽様!今からどこか行くんですか?」
「うん。こいつと古本屋に行ってくる。やっとこいつがバイトないからな」
お市を間近に見れた事で眼福を得て涙を流す生徒Aを、机に座って指さす世楽と、それに向かって楽しそうな表情を浮かべるお市の姿があった。
(あの子が今日転校してきた可愛い子か。本当だ、可愛い)
その時、クララの胸臆に雨雲のようなものが充満する。モヤモヤする感覚に胸に手を当て、眉を八の字にした。
(なに、これ?なんだかモヤモヤする)
楽しそうに会話を広げる世楽達の声を、ドア越しに感じながら体重を預ける。
世楽と話したいのに、可愛い子と楽しそうに会話する世楽を見ると、何とも胸に苦痛を覚え、ズキッとした感覚がクララの脳を刺激する。
(なんでだろう。いつもなら話しかけれるのに、話し掛けに行けない)
カバンの手提げを持ちながら、気落ちしたように俯くクララは、カバンを握りなおすと、気持ち悪い感覚が嫌になり、そこを走り去った。
(世楽君は別に私のものじゃないのになんで?なんで世楽君が他の子と話していると嫌な気持ちになるの?)
クララは、まだ嫉妬だという事に気づけなかった。そして、嫉妬をしたイコール、世楽に好意を抱いている可能性があると言うことも。
心にモヤモヤを溜め込んだまま、クララは肩を大きく上下させながら家まで走って帰ってしまった。
クッキーは、しっかりと冷蔵庫に入れたのだが……………。
「あげる勇気、ないよ」
ベッドにダイブしたクララは、枕に顔を埋めながら、世楽にあげても‘喜んでくれないのではないか’とネガティブ思考を拗らせるばかりで、涙が出そうになっていた。




