32話 転校生
二組の前の廊下はまるで満員電車の中のように詰まっていた。
それの大半は男子を占めており、その中に四組の男子共も追加する。
「世楽、どうだ。可愛いだろ?」
誰かが「ゴミのようだ」なんて言いそうな程の人々をかき分けて二組を覗き込む世楽と生徒A。
「………」
「……?世楽?」
黙り込む世楽に首を傾げる生徒Aは、反応しない世楽を置いて目に焼き付けようとその可愛い転校生を見始めた。
桃色の長髪を背中の真ん中辺りまで伸ばした一際目立つ存在に、クリンクリンの大きな瞳が可愛らしいその人は、当然天華羽高校の制服を着て、クラスの男子や女子に囲まれていた。
「ねぇねぇどこから来たの?」「可愛い。お人形さんみたい」「お昼一緒に食べない?」などの質問攻めが転校生へ容赦なく襲いかかる。
困った様子を隠すように浮かべる笑顔もまた可愛らしいが、その転校生は、偶然世楽と目が合うと。
「世楽様!」
向日葵のような愛らしくあどけない笑顔を零して世楽へテコテコ走り寄る。
「お市、転校してきたのか?」
嬉しそうに顔を見上げるお市に、世楽は問う。
「はい。今日転校してきました。どうですか?似合っていますか?」
両手を広げて世楽に自分の姿を見せた。
「似合ってるよ。可愛い」
「本当ですか?良かったです」
嬉しさと恥ずかしさで顔を赤く染めるお市は、下唇を甘噛んで下を向き、淡く微笑む。
バッキューーン!!
それが男子共の心にクリーンヒットッ!!
可愛すぎぃぃぃぃぃぃぃぃ!!
邪念が浄化されるような気分で皆満足そうに各教室へ戻る中、世楽だけはお市のある部分に目が行っていた。
累よりはあるが、それでも少しだけ膨らみが見える程の胸。
どうせ触りたいなんて考えているのでしょう。この変態クソ野郎がッ!!
「ん?どうしました?世楽様」
視線に気が付いたお市は、ボーッとする世楽にこてんと小首を傾げる。
「いいや、何でもない」
世楽は笑顔を向けてそう言うと、手を振った。
「じゃ、俺はそろそろ行くから」
「あ………いえ、はい!」
何か言いかけようとした瞬間に間を置いて、元気よく返事をしたお市も、白い手を振る。
可愛い転校生という情報はあっと言う間に全学年に行き渡り、そして今まで問題になっていたある事が、お市の転校が契機に、更に悪化する事となった。
天華羽高校三大美女の戦争が!!




