31話 千代女、嫉妬
四限目終了のチャイムが鳴る。それと同時に学校中が授業から解放された生徒達で騒がしくなる。
そして五階。一年生の間では特に騒がしくなっていた。それの原因が―――――。
「おい世楽!一年にめちゃくちゃ可愛い転校生が来たぞッ!!」
昼食を取ろうとあちこちでグループを作り始める四組に、二十三話ぶりに登場した生徒Aの声が巡る。
「なにッ!?」
椅子をブランコのようにカタカタ傾けながら暇そうにしていた世楽は、一瞬で興味を引っ張られた。
「二組だ!二組に居るぞ!可愛い子がッ!!」
世楽に続き、クラス中の男子達も当たり前のように首をそちらへひねり、興味を示した。
「よっしゃあ!!行くぞーッ!!」
世楽は興奮して大きく口を開くと、生徒Aを先頭に男子達は廊下を走って一目散に二組へ向かう。
「………あ」
男子が消えた四組。その中で、眉を寄せて、一度立った席に、また座り直す者がいた。
(誘おうと思ったのに、出来なかった)
布に包まれた弁当を机に、俯くその人、千代女は膝の上で拳を軽く握る。
(いつもどこに行ってるのかな。昼休みになるといつもどこかに行くし)
モヤッとする気持ちに苦しくなる胸へ手を当てる。
そもそも、世楽は昼食がないのだ。だから何もすることがなく屋上へ行って昼寝をしている。ただそれだけだ。
しぶしぶ弁当の布をしゅるりと解いてちまちま食べ始める千代女は、胸の感覚が次第にチクチクするものに変わっていった。
それは二組に転校してきた可愛い子に反応するように。




