30話 一対一、乱入一
ぶつかり合う将軍二人の間隙に、激しく火花が散る。
互いに刀を荒々しく振るう将軍の内、一人が叫ぶように大口を開いた。
三成「おい幸村!!いい加減死んだらどうだ!!」
こめかみに青筋を浮かばせる三成。
幸村「はぁ!?寝言を言うのも大概にしろよクソ野郎ッ!!」
こちらも片眉をつり上げて散らかすように怒鳴る。
三成「んだとオラッ!?」
幸村「死ぬのはお前だ!!」
そして再び斬り合いを始め出す二人。
鋭く銀色に光る刀の筋が空気中を漂うように残像を刻んでいく。
三成と幸村の闘志も燃え盛り、兵達も雄叫びを上げて斬り合うその光景は完全なる戦だ。
そこへ、ある乱入者が空中から斬撃を繰り出す。
「「ッ!?」」
圧倒的な殺気混じりの気配に身体が震えた二人は、ほぼ同時にそこを飛び退いた。
ドゴーーーンッ!!
凄まじい轟音と共に、抉れた地面から土が舞う。
???「………はぁ」
怒気のこもるため息が吐き出され、土煙が晴れると同時にその乱入者の赤い眼光が幸村をギロリと刺す。
???「幸村。潰してやる」
静かなはずのその声は、凄まじい覇気と殺気を噴き出しながら、幸村と三成の背筋に寒気を走らせた。
幸村「どうしてお前がここに居る?」
???「んなこたぁどうだっていい。お前を潰しに来ただけだ」
質問に対して荒々しく苛立った様子を醸し出すその人に、三成も質問を繰り出す。
三成「答えろ。これは俺達の戦だ。お前が乱入する理由がない」
鋒を乱入者に向けた三成に、その人は冷然な態度を取る。
???「お前は黙っとけ三成。俺も戦には関係がある」
三人異常にイライラを募らせるばかりで、乱入したその人は告げた。
???「俺の妹を襲ったらしいな幸村」
幸村「……あぁ。理由があったからな」
その瞬間。
バチンッ!!
乱入者の頭の中で、何かが切れた。
???「あ゛ぁ?ふざけんなよ?」
低声がその場を支配するかの如く、身体の神経をピリピリと痺らせる。
だが、それに反発するように三成が叫んだ。
三成「信長!!いいから退けって言ってんだろ?」
しかし、反応する事なく見開く赤い双眼を幸村に刺して、信長は一息にして幸村に迫る。
信長「神無・凰都秀炎」
腰に吊した刀を抜刀した信長は、その刀に炎のように燃える紫色のオーラを纏わせると、幸村に斬りかかる。
幸村「鬼岸・村正」
パチン!と力強く手の平を叩き合わせると同時に、幸村の眼前で六文銭の家紋が刻まれた赤い鞘が包む刀が、刹那に姿を現し、それを握ると同時に、抜刀する。
―――――――。
信長の振り抜く刀と、それを真っ正面に防ぐ幸村の刀が接触を果たすが、あまりの衝撃に爆音、衝撃波は一拍が過ぎて、その周囲を襲った。
重い一撃が重力に上乗せする形となって幸村の足を地面に埋め込ませる。
「ッ!?……はぁ」
予想を遙かに上回るその力量に気圧される幸村は隻眼を細めるが、一呼吸すると同時に、身体を捻って村正を手放すと、パチン!と再び力強く手の平を叩いた。
すると、村正は元々そこに存在しなかったかのように姿を消す。
当然、押し込むように力を加えていた信長は、それを抵抗する物がなくなる訳で、思いっ切り地面へ突撃した。
パチン!
幸村がもう一度手を叩くと、姿を消した村正は信長を後頭部で鋒を向けて姿を現し、その柄を逆手に掴むと、そのまま一直線に突き刺す。
だがそこには信長の姿はなく、それどころか、三成が刀を振り下ろしている。
幸村へ向かう刀はしかし、信長の刀が火花を散らせて振り飛ばす。
三成「信長が!!」
信長「お前は引っ込んでろ!」
威圧する信長は、弾かれた勢いで腹を見せた三成へ、拳を一直線に走らせる。
幸村「それはお前だこんのッ!!」
二人は信長の拳が死をもたらす事を全身で感じ取り、空中に投げ出され何も出来ない状態の三成を流石に庇うようにと、幸村は信長の腕を思いっ切りに握り止める。だが――――。
バキバキバキッ!!
三成「ごふッ!?」」
信長の拳は止まる事を知らずに、三成の腹部の鉄の鎧を石のように粉砕して、三成を遙か先まで一直線に殴り飛ばした。
幸村のカバーがなかったら確実に死んでいただろう。
幸村「おい信長。妹はどうした?」
一旦距離を置いた幸村は問う。
信長「あ゛?そんな事聞いてどうする?」
幸村「あの日、襲わせた兵が言った。何者かの邪魔が入ったって。それはお前の一家か兵かじゃないのか?」
信長「何者が誰かは知らん。だがお市は今学校だ」
幸村「ふッ。呑気に学校か」
信長「なぜ妹を襲った?」
幸村がお市を襲った理由。襲ったっという事は幸村は認めている。だが、襲ったは確実な言い方ではなかった。実際は誘拐が目的で、お市を人質に取る事だった。理由は簡単だ。幸村は正直、この戦はあまり本意的ではなかった。将宴事件は三年前の事だから。ただ、天下を取る事が夢とする幸村は、今の内に三成を殺せるのなら殺したい。どんな手段を使っても。と言うことで、まず思い至ったのが信長を味方に付けるという事だ。だが、別に仲が良くも悪くもない将軍に『見方に付け』なんて言っても当然付くはずがない。だから、極度のシスコンである信長を強制的に付ける為に、妹であるお市を誘拐して人質とし、三成を共に殺す。これが策略だった。そこへ、世楽の邪魔が入った。という事だ。
そこで、首の骨をゴキゴキ鳴らしながら、三成はガチギレを塗った表情で、対面する二人と向き合った。
本格的な戦が、今始まる。




