27話 六月に入りました。ということは?
「はぁぁぁぁ!?何これぇぇ!?」
世楽の発狂じみた声が校長室で木霊を起こす。
その横で眉を八の字にして引き攣った笑みを浮かべる御前と、二人の前で頬杖を突いて穏やかな表情を向ける元就。
世楽は茶封筒に入った三万円の札を手に、目を見開く。
「はッ!?ちょっと待て。これ何?」
「それはね。お小遣いだよ」
「………お小遣い、だと」
余りの驚きに札を握る指札に力を込めくしゃりと皺を作る。
「こら世楽。お金曲がってる」
横から手を伸ばして茶封筒と札を引っ張るように取り上げると、御前は丁寧な動作で札を直し、世楽に返す。
「学生寮の子達は何か事情があって寮に居るからねぇ。年頃の高校生にお小遣いが無いのは可哀想でしょ?」
一ヶ月のお小遣いが三万円というのは高すぎると思うが、これが天華羽高校での決まりなのである。
「でもなんで今日貰うの?」
嬉しそうにポケットに大事と言わんばかりに入れながら、疑問を口にする世楽。
「今日から六月だからね」
相変わらずの穏やかな表情を崩すことなく口上する。
「月の始めに貰うのがルールだからな」
元就に礼をする御前は、世楽の目の輝きように嬉しそうにはにかむ。
「そっかぁ!じゃあ俺今からなにか買ってくる!」
興奮最高潮の世楽は校長室を飛び出して、廊下を駆け抜ける。
その足音に苦笑を零す二人は、その跫音が聞こえなくなると、会話を始めた。
「御前君。どうだい?世楽君は?」
「そうですね。なんというか………あんな自由な人は初めて見ましたよ。本当自由な人で」
脳内でお尻を揉みしだかれた時の事がふいに流れ、ほんの少しだけ頬を染める御前。
「そうだねぇ。確かに世楽君は自由な人だね。常識にとらわれない、みたいな?」
頬杖を止めて背もたれに体重を預ける。
「本当にあの人にそっくりだ。世楽君は……」
穏やかな表情の奥に宿る何か訳ありなものに御前は首を傾げつつ、恥ずかしいフラッシュバックを払拭するかの如く態とらしい咳払いを一つ、そして紡ぐ。
「本当にとらわれてないですよ世楽は」
茶封筒を大事そうに手に持って、再び感謝する御前は、元就との会話を終えると、自室に戻る。
(今日日曜日かぁ。特になにもする事ないしなぁ。どうしよ。累は剣道で空いてないし)
御前は夏の制服をしゅるしゅる脱いで、下着だけの姿になると、床に敷かれた布団にダイブした。
現在午前十時!まだAM!!
御前は気を失うように睡眠へ入った。




