24話 不適な笑み
「で、世楽。次は累に手を出したの?」
義元は呆れた表情を作りながら、面倒くさそうに窓の外を見る世楽に問いかけた。
「先生、言い方が悪いですよぉ」
世楽、累を真っ正面にニコニコした様子で座る鶴姫。
一方、累は先程からずっと鋭い目で鶴姫を睨み、ついでにチラチラと世楽も睨んでいた。
「累、何か言いたそうだね?」
そんな様子を目の前に、状況をまだ知らない義元は累の表情を読み取り、頬杖を突いてその場を仕切る。
「はい。とても言いたいことがあります」
「言ってみ?」
「分かりました」
すると、累は一度瞳を伏せて深呼吸をすると、冷淡な表情で一言。
「鶴姫先輩。なぜ世楽を襲ったんですか?」
その瞬間、ピリリと二人の視線の間にぶつかるなにかを感じた世楽がチラリと累へ瞳を流す。
「…………」
だんまりする鶴姫は、累の鋭く痛い視線から逸らすように世楽を見て、はにかむように笑う。
「後輩を可愛がっただけよ」
「それにしてはハード過ぎません?」
「そーお?でも世楽君は案外楽しそうだったけど?」
話をフラれた世楽に累の視線が流れ、ピタリと目が合う。
「世楽、本当に楽しかったの?」
ムスッと機嫌を損ねたご様子の累へ、世楽はスーッと顔ごと視線を窓の外へ持って行った。
「まぁ………楽しかった」
ドゴンッ!!
突然累が世楽の座っていた椅子とセットの机の脚を一発蹴る。
驚いて視線を戻す世楽にあわせてフンッと鼻を鳴らしてそっぽを向いた累。
「えぇー。俺今なんか悪い事したぁ?」
「もう知らない」
素っ気なく言い放つ累は、「えぇー」っと蹴られた理由を理解していない世楽に更に腹を立てて、ボソリと誰にも聞こえないように呟く。
「心配して助けようと思ったのに、なんで………」
不満そうに顔を落とす累を正面に、鶴姫は目を見開き。
「もしかして累ちゃん。あなた世楽君の事――――」
バンッ!!
「と、とにかく!世楽を………。後輩を襲うのは止めてください!」
机を叩いて立ち上がった累は、耳を朱色に鶴姫の言葉を無理矢理遮って口上すると、そそくさと教室を出て行った。
「えーっと、これは解決したってことでいいのかな?」
義元はズカズカ歩き去る累の背中を見送って、対になる世楽と鶴姫を交互に疑問を口にする。
「そうですね。解決しました。……一つだけ」
「?……一つだけ?」
「いいえ。なんでもないです」
綺麗で可愛い笑顔を咲かせた鶴姫は、「じゃあ俺帰るねぇ」と教室を出て行こうとする世楽の背中を、目に弧を描いて眺めた。
(累ちゃん、もしかして世楽君に恋してるのかしら。んふふ。面白いわぁ)
その弄ぶかのような笑みで見られる世楽はそんな事も知らず、学校を出て古本屋の漫画コーナーへ足を進めた。




