21話 入学して数日、やっと担任と出会う
「世楽、かな?初めましてだね?四組の担任をしている今川義元だ。……で、一つ言いたいことがあるんだけど?」
「ん?担任?俺は世楽だ。よろしく。で、なに?」
教室の出入り口に立った義元は目を点にして、世楽とその下で赤面して声を我慢するように喘ぐ千代女を見下ろした。
「なぜ千代女の胸を揉んでいるんだい?」
非常に困惑した表情を全開に、義元は問う。
「つい千代女が可愛くて」
見上げながら応答する世楽は未だに千代女の大きく掌から零れそうな胸をもみもみする。
「事情は分からないけど千代女が可哀想だからやめなさい」
瞳をキュッと閉じて恥ずかしそうに指を加えて声を我慢するエロエロな千代女が可哀想に見えた義元は呆れながら世楽に手を差し出し、その後に千代女にも手を差し出す。
「チェッ!折角良いところだったのに」
「『チェッ!』じゃないよこのッ」
不満そうにぼやく世楽の頭を名簿帳で叩く義元は、教卓まで移動すると、早速世楽に事情説明を要求する。
「なんで千代女の胸を揉む事になったの?」
「え?それはね―――――」
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ガラガラガラとドアを開けて入る千代女。
「ん?おう千代女!」
誰も居ない教室で一人遠い目をして時計を見ていた世楽は、千代女の姿を見た途端、子供のようにぱぁっと顔を輝かせて、嬉しそうに椅子から立ち上がった。
「今日は学校来るのはやいのね」
ふわっと一瞬だけ柔らかい表情を作るも、近くに来た途端にムスッとしたような顔に変える。
「……千代女?」
対になるように千代女の前に机を挟んで椅子を運んだ世楽は、明らかに機嫌の悪い千代女に疑問を抱く。
「なによ」
「なんか機嫌悪くない?」
「悪くない」
素っ気なく答える千代女に、世楽はしばらく視線を送る。
「………」
「……だから悪くないって!」
「まだ何にも言ってねぇよ」
無性に声を荒げた千代女は、ぷくぅっと頬を膨らませてそっぽを向く。
「なんだよぉ」
怒ったような雰囲気を纏わせる千代女に世楽はお手上げといった感じで後頭部を軽く掻いて、話題を変える。
「そういえばさ!この前御前のな――――」
“御前”という名前にピクッと眉を反応させた千代女は、ズキッと胸に痛む感覚を我慢しながらちくわ耳で世楽の話を流す。
「でさ、累が――――」
ズキッ。
「あ、そうそう。あとクララも――――」
ズキッ。
「そして料ちゃんがな―――――」
ズキッ。
世楽と一緒に居る女の人の名前を聞くたび、それだけが耳に残り胸をチクチク何かが刺さる。
胸を押さえても痛みを掴むこともどうこうすることも出来ない事に、更にイライラを覚える千代女は、突然大きな声を張り上げた。
「世楽ッ!!もうその人達の事話すのやめてッ!!」
静かな教室にその声だけが浮いて反響する。
頬杖を突いてニマニマ話していた世楽も、目を点にして口を開けっぱに黙った。
ただ、突然に流れ込む暗黙の空気に、千代女は慌てて口を押さえる。
「……んッ!?」
自分でも勝手に口に言葉が出ると思わなかったらしい。
ぱちぱちと瞬きを数回繰り返す世楽は、次第に千代女の様子が手に取るように分かり。
「千代女。もしかして嫉妬してる?」
不適な笑みを浮かべてボソリと口に出す世楽に、千代女は思わず椅子から腰を持ち上げた。
「は、はぁ!?そ、そんな………嫉妬なんてする訳がないでしょッ!?」
盛大な焦りを表に、机を叩き付けて世楽の言葉を否定する千代女は、ほのかに残る胸のズキッに眉間に皺を寄せる。
「俺に構って欲しいんだ」
悪戯っぽい笑みを浮かべてゆっくり立つ世楽は、瞳を大きくする千代女の顔に近づけた。
「そ、そんな訳ないでしょッ!?」
「じゃあ俺累とイチャイチャしてこよっと」
態とらしく大きめの声で煽るように発言すると、世楽は扉の方へ身体を向けた。すると。
クイッ。
飛び出たシャツの裾が白く綺麗な千代女の手が引止める。
「そ、それは駄目」
顔を見せないように背けてちょこんと掴む姿に、世楽はニヤッと嬉しそうな笑顔を零す。
「なんで?」
「そ、それは………」
耳先まで真っ赤に染める千代女は、口籠もる。
世楽は真っ赤な耳に口を持って行き、擽るように喋った。
「自分でも嫉妬って分かってんだろ?――――ふぅ~」
「べ、別に嫉妬なんて――――ひゃッ!?」
背筋を反らせてビクリと反応してみせた千代女は、バッと耳を押さえると、反射的に世楽の方を見る。
「……わぁお」
ゆらゆらと揺れる綺麗な緑鮮やかの大きな瞳に、取り乱したように口元を緩ませて、頬を真っ赤に染めた千代女の可愛すぎる顔に思わず衝撃の声を漏らした。
「『わお』じゃない!」
元々千代女もこの気持ちが嫉妬だとは気付いていた。けれど、それを認めたくなかった。二日ほど長く話さなかったくらいで、なんならこんな変態クソ野郎になんて嫉妬がする訳がないと思いたかった。
いっぱいいっぱいになる羞恥心に耐えられなくなった千代女は、ポケットに手を突っ込むと、毎度同じの刀を取り出して世楽に襲いかかる。
「世楽ぁぁ!!」
「うおッ!?」
白い残像を沢山に作り出す千代女から必死に逃げ回る世楽は、汗を顎から滴らせ、「落ち着け」と言わんばかりに手のひらを突きつけた。
「待て千代女。落ち着こう。というか俺斬られるようなことしてなくね?」
「はぁ、はぁ、はぁ」
肩で大きく呼吸を繰り返す千代女は、更に刀を握る手に力を込める。
「日頃の行いよッ!?」
目をカッと開かせて襲いかかる千代女の本気の形相に、世楽は更に汗を浮かばせた。
「ちょい待てぇぇ!!」
再び逃げようと意を決した世楽は、身体の向きを変えようとした時。
ガタンッ!
千代女の腰に机の角がクリーンヒットした。
「あくぅッ!」
瞬間的の痛みに変な可愛い悲鳴を上げて苦を表情に出す千代女は思わず体勢を崩し、世楽に倒れかかった。
モミ。
なぜこうなったのか。どうしてこうなるのか。誰もが分からない、奇跡的とも言えるだろう。ある種世楽も才能だ。
「んやぁッ」
騒然としていた二人以外誰も居ない教室は夜の森の中のように深閑となり、その中で思わず身体が反応して可愛く色っぽい声が響く。
手の平に溢れんばかりのぷるんぷるんが手の動きに合わせて形を変えていく。まさしくこれはエデンだろう。
そして世楽は、恥ずかしそうに鳴く千代女に欲が湧き、揉みを繰り返し行って、楽しんでいた。
仰臥する千代女に覆い被さって揉み続けて、膝をもじもじと擦り悶える千代女は、時折ビクンと反応をして見せて、更に欲を掻き立てるものとなる。
そこで―――――。
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「って訳。おーけぇ先生?」
詳細を極めて説明を施した世楽に、顔を真っ赤にして今にも襲いかかりそうになる千代女。また、義元は苦笑を浮かべて千代女を宥める。
「分かった分かった。取り敢えず事情は把握した。けど、世楽。いくら不可抗力な事故とはいえ揉むのは駄目だよ」
「でも嫉妬する可愛い女が目の前で恥ずかしそうに喘ぐんだぞッ!?俺に揉むなって言ってるのはもう死ねって言ってるようなもんだろッ!?」
目をこれでもかと見開いて全てをさらけ出すように全力でぼやく世楽。
「ふざけないで!?この変態ッ!!」
「でも確かに千代女が嫉妬をするのはまさかだね」
「ちょ先生!?」
裏切ったなぁ!?とでも言わんばかりの顔で反応する千代女に苦笑を更に零す義元は、教卓の中に入っていた椅子を引き出して腰を下ろすと、長い足を組んだ。
「入学して早々この学校の三大美女の内二人と仲良くなるとはねぇ」




