19話 やられるクララ
六限目終了後、世楽は四組の女子達に囲まれていた。
「ねぇねぇ世楽くん!今日凄かったね!」
「どうしてあんなに強いの?」
「格好よかったぁ」
楽しそうにキャッキャウフフな女子達はそんな事を言った。世楽は当然、女の子達に囲まれニヤニヤしている。
「そう?俺格好よかった?」
「うん!すっごい格好よかった!」
スカートをひらひらと浮かせるようにぴょんぴょん跳ねて褒め立てる女子に、世楽は更に口元を崩す。
「すいません。世楽君居ますか?」
そこで、天使のような透き通った声が四組中を騒がせた。
聖母の笑みを浮かべて綺麗な背筋で出入り口に立つクララに、世楽は女子達の間から顔を覗かせる。
「おうクララ。居るよ」
ひらひら手を振って存在を知らせる世楽を見つけると、ぱぁっと聖母の笑みをただ可愛いだけの笑顔に変えた。てこてこ小走りで走り寄ってくるクララに、四組中釘付けにされる。自然と世楽を囲んでいた女子達も離れてしまった。
「世楽君。今日先生と戦ったんだって?」
「ああ。もう三年生まで情報行ってんのか」
「うん。凄いね。負けないなんて」
口元に手を添えてお淑やかに口を開くクララに、世楽は後頭部に手を組む。
「当たり前よ。俺は強いからな!」
椅子をぎこぎこ傾けながら自慢気に呟く世楽に、クススと笑うクララは、少しだけ世楽を見つめて、ほんのり頬を染め始めた。
「………」
「クララ?顔赤いぞ?」
「……えッ!?」
顔に出ていたとは知らず、クララは自分の頬に手を当てると、まぁなんとビックリ。アツアツに火照った頬があるではありませんか。
焦りを見せてキョロキョロ視線を遊泳させるクララは、恥ずかしそうに下唇を甘く噛んで、目を細めた。
「そ、その……頑張った、世楽君には………ご褒美、が」
目をくるくる回しそうな勢いを押し切って耳先を真っ赤にするクララは、想像した事を現実でもしようと勇気を振り絞る。
トン。
「が、頑張りました。……え、えらいえらい……/////」
世楽は思わず目を点にする。
クララは世楽の頭に白く細い手を置いて、優しく撫で始めた。
「ク、ララ……?」
まさかクララから触れられるとは思いも知らず、世楽は素っ頓狂な声を漏らして、クララの撫で心地に淡い笑みを零す。やがて。
「……はい!終わり!じゃあ私は――――わッ!?」
頭から退かそうとするクララの手を掴んだ世楽は、自分の方へ引っ張って腰を手をあてがった。
ビクリとお尻を可愛く反応させたクララは、鼻先が触れそうな程の距離に耳先どころか、指先まで真っ赤にしてしまう。
「クララ、どうした?今日は少しいつもと違うね」
焦って息を荒くするクララの甘い吐息を顔に感じながら、世楽は嬉しそうに口角を持ち上げる。
「……だ、だって。こ、この前……」
「この前……?なに?」
恥ずかしそうに視線を逸らすクララに、やはりドS心を擽られる世楽は、腰に添えた手をもっと奥まで回して、自分の方に抱き寄せた。するとクララのお腹も当然世楽に密着する。
「ひゃっ!?ちょ、ちょっと世楽君!?」
「で?この前が何?」
クララは急な事に世楽の肩に手を乗せる。だがそんな事にも気付かずクララは、これでもかと顔を真っ赤に染めて小さく語った。
「だってぇ、この前、好きなようにされて……悔しかったから、その……し、仕返しに」
「……そういうこと」
世楽は笑いながら納得すると、密着するクララの柔らかいお腹の温もりを少し堪能して、クララの羞恥心でいっぱいの顔を見上げる。
「でも、今日またやられたね」
「……ッ!?」
喉で悲鳴を鳴らすクララはもう既に羞恥心で消えそうだ。
一方世楽は密着しているクララの呼吸がお腹の引っ込みによって感じ、少し心地よさを覚えていた。
「ぜ、世楽君!!も、もう良いでしょッ!?」
白い地肌は赤く染まって、クララは密着した世楽を見下ろしてそんな事を大きな声で言うが、無理矢理放したり、嫌がったりせず、なんならお腹で感じる世楽の温もりを心地良く感じていた。
それでも恥ずかしさには到底及ばず、クララも我慢の限界だった。
「うん。あ、そうそう、一ついい?皆すっごい見てるよ」
「……え――――」
クラス中に視線を向けたクララは、やっとその時に全てを思い出した。
一年四組の教室には生徒が、それどころか他クラス他学年まで集まって見ていたのだ。
その瞬間に心臓が熱くなると同時に羞恥心がクララの頭をパンクさせた。
プシューと湯気を噴出しそうなクララは、目をくるくると回して、涙を浮かべながら教室を飛び出していった。
「あっ、ちょッ、クララ!!」
世楽は咄嗟の動作に声を出すが、もうクララには聞こえない。
(……もうちょっと、くっつきたかったなぁ)
名残惜しそうに内心で呟く世楽は、(いつかクララのおっぱいとかお尻とか触りたいなぁ)というとんでもない変態クソ野郎な思考で妄想していた。
清楚系癒やしお姉さんを羞恥心で染める事に楽しさを更に感じた世楽は、ちょっぴりだけ口角を上げると、教室を出て行った。




