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天上天下唯我独尊  作者: ひかりみ しあゆ
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18話 世楽VS政則

実技室の中央で対面する二人を、いつの間にか取り囲むように囲繞する生徒達は、手を止め視線を釘付けにされていた。

「おい、どっちが勝つと思う?」などの会話を膨らませる生徒達は、少し楽しそうだった。

「いや、先生が勝つに決まってんだろ」

「分からないぜ?昨日だって世楽はあの累先輩を怒らせても傷一つも付いてないんだぜ?」

世楽の強さがいまいち把握出来ていない生徒は、当たり前政則が勝つだろうと予想をしている。

そして、その二人を見る生徒の中で、千代女は少し眉根を寄せて世楽を見ていた。

(どうして先生相手にそんな楽しそうにしているの?)

「先生、ちなみに技って使える?」

「ハッハッハッハッハァ!俺を誰だと思っているんだ。これでも一応教師だぞ?」

「そうか。きつくなったら使って良いからね?」

「元々使うつもりはないから安心して!じゃあ」

「行くぞ!」

それを合図に、世楽は床に足を蹴り入れて、一息にして距離を詰める。

木刀を把持した右手を左へ振りかぶり、口角を大きく持ち上げた。

ブォンッ!!

木刀から聞こえてくるような音ではない音を繰り出して、世楽は思いっ切り政則の木刀へ振り抜く。

バキバキバキッ!!

衝突したと同時に、二人の木刀は粉々に粉砕し、政則は思わず目を見開く。

「……ッ!?」

少し身を引く政則から視線を外すことなく、世楽は振り抜いた回転を活かして回し蹴りを。顔面前に手を盾とし防ぐ動作をする政則は、その重い一発をくらうと、軽く後方へ身体が飛ぶ。

赤髪が空中で振り乱れ、赤い双眼を向けた瞬間、政則の眼前には既に拳が存在していた。

グチャッ!!

めり込む勢いで頬に拳をくらった政則は、後ろに傾いた姿勢のまま、世楽の腕を握る。

「世楽君!いい身体の動きをしているね!どうやって覚えたのか、なッ!」

グイッと引き寄せて、突き上げるように掌打を繰り出す政則。空中で片手の自由を奪われた世楽は、本当に狂ったように戦闘に対しての笑みを浮かべながら、政則の掌に足をのせた。

掌打は世楽の身体を思いっ切り空中に放り投げるものになるのだが、片腕を握られたままの世楽は、そのまま逆立ち状態となる。

「先生!技、使っても良いよ!じゃないと負けるんじゃない?」

世楽は政則の押し上げたもう片方の手をガシッと掴むと、鼻血を垂らす顔面に足裏で蹴りつけた。

靴底から溢れ出る血と同時に掴まれた腕の自由が返された世楽は、顔面血だらけの政則の前に綺麗に着地をしてみせる。

「どう?先生、痛そうだけど」

血をだらだら流す政則は、瞳を大きくして笑う。

「いやぁ!痛い!俺はどうやら手加減し過ぎたようだ!」

ぬめりと付着する鮮血を手で払拭する政則の顔面には、もう怪我など一つもなかった。実技室の効果が発動したのだろう。

「ここからは本気で行かせてもらうよ!世楽君」

気合い入れに凄まじい声量で喋る政則は、握った拳と拳をぶつけ合うと、肘辺りまで一気に炎に包まれた。

炎着羅業(えんちゃくらごう)!」

胃に響く重低音のような踏み込みで床に罅をつけた政則は、肘から炎の筋を作りながら加速していく。

世楽の目前で止まった政則は、拳を振り下ろす体勢を作る。

ジェット機のように炎を高密度に噴射させたその拳は、光の閃を空に描いて直進した。

だが、身をよじって躱す世楽に到底当たるはずもない拳は炎の勢いに引っ張られ、それに踏ん張りながら裏拳を繰り出す。

「おわッ!?」

顔面すれすれを通り過ぎた政則の攻撃に思わず声を漏らす世楽。だが、楽しそうでもあった。

炎を噴射させながら殴打を無数に打っていく政則と、触れないように完璧に躱していく世楽を、生徒達は圧巻として観戦する。

「ま、マジかよ。世楽(あいつ)、あの先生の攻撃を全部躱してる」

「先生と渡り合える一年生って居なかったよな?」

「じゃあ世楽(あいつ)が、一年生最強?」

段々と実技室が暑くなり始めていて、生徒達は徐々に汗を流し始めた。なんなら戦闘を交える二人は尚更大量の汗を流していた。

結局、一対一のVSは四限目まで続いた。

「はぁ。楽しかった」

「驚いたよ。まさか一年生にこんな強い生徒が居たとは」

上半身裸の政則は、肩をぐるんぐるんぶん回しながら感嘆の声を漏らした。

「でもさぁ。先生本気出してないよね?」

「アッハッハッハ!やっぱり世楽君にはお見通しだったか!」

黒焦げになった真っ黒のTシャツを拾い上げて抱腹絶倒する政則は、手を差し出した。

「世楽君!本当に楽しかったよ!ありがとう!」

「あぁ、俺も」

差し出された手を握り返すと、政則は笑顔で言う。

「ところで世楽君!大会に出る気はないかい!」

「大会?」

「そうだ!高校総体みたいなものだよ!」

「へぇ~」

「出ないかい!」

「うん。嫌だ」

世楽は綺麗な笑顔で断った。

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