16話 交換条件?
「絶対誰にも言うなよぉッ!?」
ガシッと胸元を豪快に鷲掴みした御前は、顔をこれでもかと赤面させて叫ぶと、ぐわんぐわんと世楽を揺らす。
「分かったって。誰にも言わないから。これは俺達二人の秘密だから」
今にも噛み付きそうな勢いで揺らされ、世楽は目をぐるぐる回す。
「もう……ダメだ。こんな事初めてだ」
魂が抜けたように机に突っ伏して白くなる御前に、向かい側に腰を下ろした世楽は頬杖を突いて艶のある黒髪ごと頭を撫でる。
「ごめん、少しやり過ぎたよ。……でも気持ちよかっただろ?実際気持ちよさそうに喘いでたし」
「黙れッ!?もうホントに恥ずかしいぃ~」
撫でる世楽の手を掴んで握り潰そうと握力を込める御前は、消え入りそうにまた突っ伏した。
「でも揉んでいいって言ったよな?」
「……ッ!?言ったけど!!」
「それに俺の尻先に叩いたの御前だよな?」
ギクッと肩を大きく震わせる御前は、突っ伏したまま組んだ腕に口元を隠して。
「………私だって、これでも乙女なんだよ」
頬をほんのり染めて言う御前も、少し反省の色を見せていた。だがしかし、悔しそうでもあった。累のように剣術が得意でなければ、女の子らしいところなんて微塵もない。と心の内で呟く御前。
「……御前?俺は御前の事、すげぇ可愛いと思うぞ?」
真面目な顔で告白する世楽に、御前はバッと顔を隠す。
「………そりゃあ、どうも」
|
|
|
「世楽ぁ?卵何個がいい?」
元の調子と気を取り戻しつつある御前は、ケチャップで赤く染まったチキンライスを炒めながら、机で嬉しそうに身体を揺らす世楽へ声を掛ける。
「五個ぉー」
「五個だぁ?多過ぎじゃないかい?」
あの後、御前が立ち直るまで側に寄り添いながらちょこちょこ謝り続けた世楽(お前の所為だが)は、ある提案を持ちかけた。
『なぁ御前。俺黙っててやるからさ。今日オムライス作ってくんね?』
突っ伏す御前の乱れた髪の毛先を摘まみながら言う世楽に、御前は顔を少しだけ上げる。
『はぁ?そんな事でいいのか?』
元々黙って貰うには何かしないといけないと考えていた御前は、存外容易な内容に目を丸くする。
『そんな事でいいんだ。オムライスめっちゃ大好きだし』
ニッと笑う世楽に、御前はこくりと頷いて、今日の晩ご飯をオムライスに決めた。
白いシャツの裾を膝上まであるスカートから出して、その上からエプロンを着けた御前は、片手で炒めつつもう片方の手で卵をボールに割っていく。
「オムライスは卵が多い方が美味しいのッ!!」
そんな様子を眺めながら呟く世楽は、ずっと御前の張りのあるぷるんとしたお尻を見つめていた。
(見た目以上にあったな。以外と手から零れそうだったし。気持ちよかったなぁ)
変態思考を回しながらそういう目で見られているとは知らず、御前は卵の布団を作り上げ、盛ったチキンライスにふわりと優しく乗っけた。
「はいよ!召し上がれ」
皿にスプーンをのせて水入りのコップとセットで持ってきた御前は机に置くと、世楽はキランキランした顔で歓喜の声を上げた。
「うおぉぉぉぉぉ!!オムライスだぁ!!いっただっきまぁす!」
パンッ!と手を叩いてスプーンを握ると、世楽はスプーンから零れそうなほど掬って口に頬張った。
「んんん~~~~ッ!美味ッ!!」
次々とオムライスを食べ進める世楽に、御前は嬉しそうに表情を作って自分の分とケチャップを持ってくる。
「世楽、ケチャップは要らないの?」
自分のに波線を描きながら問う御前を見て、世楽は「は?」と言わんばかりの顔を浮かべた。
「オムライスにケチャップなんてかけねぇよ。もう飯についてんじゃん」
ケチャップをかけない人を見たことがないのか、御前は意外そうな顔で世楽が完食するのを眺め、世楽は満点な星空を顔に宿した。
「うん!美味かった!ありがとう御前」
「そりゃ良かったよ」
「でだ!」
「………?」
身を乗り出しそうな勢いでグイッと顔を近づけた世楽に、御前は思わず咀嚼する口と手を止める。
「俺は料理が出来ん!そして御前の飯はめちゃくちゃ美味い!だから毎日俺の晩ご飯作ってくんね?」
御前も学生寮に住んでいる高校二年生だという事は先程聞かされていた世楽。
「良いよ」
「マジでッ!?」
「うん。だって食材は全部学校から出るし、私料理するの好きだし。それに美味しいって言ってもらえるんだ。私にとって一石三鳥だ」
こうして、世楽の学校生活晩ご飯は御前が用意する事になった。




