12話 料ちゃん
「ん………?」
ギシリと軋みを上げるベッドの上で、暗闇から覚醒を果たした世楽は、薄らと視界に入る見知らぬ天井を見つめる。
「あぁ。俺寝ちゃったか」
前髪を掻き上げながら上半身を起こす世楽は、呆れたようにため息を吐き出して、ボーッと固まる。
「あ!やっと起きましたね。体調は大丈夫ですか?世楽さん」
そこで、淡いピンク色のカーテンをちょこっとだけ引っ張って身体半分を覗かせた御料人の、朗々且つ心配をした声がかかる。
「お、料ちゃん。おっひさー」
「料ちゃんじゃありません。ちゃんと先生と呼んでください」
仕切られたカーテンの中に入った御料人は、プスッとしながら呟くと、世楽の隣にある椅子に腰を下ろした。
「もう。急に倒れたと聞いて心配だったんですからね。何かあったんですか?」
御料人は、「教室はボロボロだし………」と後付けして世楽の目を見る。
「料ちゃん」
「先生です」
「いいじゃん。料ちゃんの方が可愛いし親しみやすい」
「うっ………た、確かに」
今年から初めて教員になった御料人は、顎に手を当てて深く考えに浸ると、ハッとして頭を振って、「もう」と恥ずかしそうに頬をほんのり染めた。
「ハハハッ。料ちゃんやっぱり笑った方が可愛いな」
ニカッと口角を上げてそんな事を口述する世楽に、御料人は頬に熱を帯び始めた。
「かわッ!?ぜ、世楽さん!教師をからかわないでください!」
可愛らしく唇を尖らせてこめかみから垂れる毛先でくるんくるんと遊び出す御料人。
世楽は世楽でその可愛い反応に笑い声を上げた。
「体調が大丈夫なら校長室へ行ってもらえますか?校長先生がお呼びです」
「は?校長が?」
後頭部を掻きむしりながら言う世楽は、しぶしぶとベッドから下りた。
「まぁいいや。取り敢えず行ってくるわ。ありがとね、料ちゃん」
「先生です!もう、全く」
背を向けたまま笑う世楽に、ぷくぅっと頬を膨らませる御料人は、ガラガラと音を上げるスライド式のドアが閉まると、世楽がいないか確認して…………。
「はぁぁ」
再び椅子に腰を下ろして、複雑な気持ちにため息を吐いた。
(今までは生徒と話す時、緊張して上手く喋れなかったのに、世楽さんとは上手く喋れる。それに楽しい)
同時に頬も少し赤く染まっていく。
ペタッ!っと頬に手を当てて、もみもみ回すように頬を揉むと、頬を染めた御料人は下唇を甘く噛んで、目を細くさせた。
(なにこの気持ち?世楽さんと話すと、温かく感じる)
考える度からかうような悪戯っぽい笑みで笑う世楽の顔が鮮明に脳裏に浮かび上がる。
御料人はまだ気付かないようだ。自分が感じている感情に………。




