08 良好
どこかお加減が悪い所はと尋ねると、
にこりと微笑み、首をふるふる。
何だかメネルカでお会いした時と随分印象が違いますね。
つまりは、お美しいだけでは無く、大変に可愛らしい。
「この度の醜態、ただ恥入るばかりです」
いえ、まずは御無事で何より。
体調に問題は無いようですが、今一度お医者様に診察をお願いしましょう。
「シナギ様には、ご迷惑をおかけするばかりで……」
いえいえ、あの元王女様と比べたら、こんなの迷惑でも何でも無いのですよ。
「それほどなのですか」
あー、多分ヴェルネッサさんの想像なさっている数倍は、羽を伸ばしておられますよ。
「誠に申し訳なく……」
いえいえいえ、この件で責任を感じる必要があるのは、後にも先にもこの世にたったひとり、アレのみ、ですよ。
「まあ、シナギ様ったら」
せっかく遥々こちらまでいらしたのですから、出来るだけのんびり楽しんでくださいね。
ヴェルネッサさん、微笑みながら、礼。
うむ、具合も部屋の雰囲気も良好。
では、クロ先生を呼んで参りましょうか。
部屋を出ると、ふくれっ面をしているアレが。
どうやら中の会話を盗み聞きしていた模様。
って、アリシエラさん御自慢の防音結界でも筒抜けかよ。
本当に規格外にも程があるだろ、この元王女様は。
クロ先生をお呼びしてきますので、ちゃんとヴェルネッサさんに謝るようにと告げると、
プイっとあさっての方向を見ましたよ。
そういう仕草はヴェルネッサさんのようなしとやかな方がなさるから効果的なのです。
あなたみたいに普段からやりたい放題なやんちゃ乙女がやったって、子供が駄々をこねてるようにしか見えんのですよ。
まあ、あんなのは放置してクロ先生を呼びに行かねば。
いそいそと、モノカ邸へ。