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07 伝心


 ゆっくりと漂うように落ちてきたヴェルネッサさんを、


 優しくキャッチからのお姫様抱っこ。



 漆黒のローブのようなマントのようなものを羽織っており、


 とんがり帽子と相まって、実に魔女っぽいいでたち。


 とても良くお似合いですよ。



 って、見惚れてる場合じゃ無いだろ。


 意識を失っているヴェルネッサさんを、慌てて我が家へお持ち帰り。



 

 今は、ベッドに寝かせたヴェルネッサさんを、


 クロ先生が診察中。


 最初からモノカさんのお宅へ運んでいれば、


 わざわざクロ先生をお呼びせずとも良かったのに。


 我ながら冷静さを欠いた対応であったと、反省しきり。



「軽い脳震盪のようだね」

「安静にしていれば、大丈夫」


 アリシエラさんと共同開発した魔導人体深部検査装置、素晴らしい魔導具ですね。


 ヴェルネッサさんのおでこの上の魔導冷感おしぼりも、氷嚢よりも冷たさ長持ちだそうです。


 お隣にこんなに素晴らしいお医者様が住んでくれていることに、ただひたすら感謝。



「今回のような事故は滅多に起こらないだろうけど、モノカたちが帰ってきたら対策を取るよう伝えておくよ」

「目覚めた後、もし具合が悪いようなら、すぐに呼んでくれたまえ」


 本当にありがとうございます、クロ先生。


 それで、今日の診察のお代は。



「それは構わないけど、ヴェルネッサさん、だったかな」

「一度きちんと診察したいので、よかったらこちらに滞在中にぜひ、と」


 必ず伝えます。



「それじゃ、お大事に」


 ありがとうございました。



「ヴェルネッサさん、目が覚めたら驚くでしょうね」


 そうですね、イヴさん。


 まさかあんな事になろうとは。




 お隣のモノカさんのお宅は一見普通の二階建て住宅。


 実は、増築された個室多数を支える太いエレベーターシャフトが不可視の状態で上空高くまで伸びており、普段は高さ把握用の細いポールのみが見えるようになっております。


 この世界では飛行魔法の技術はすでに失われており、ぶつかる危険性があるのはせいぜい鳥か飛行する魔物くらい。


 もちろんそれらへの対策は万全に成されていて、張られている強力な忌避結界で鳥や魔物が寄り付かないようになっている、はずなんですが。



 どうやらヴェルネッサさんは、ほうきでの飛行中に見えないエレベーターシャフトにぶつかってしまったのでは、というのがイヴさんの見解。


 何はともあれ、大事に至らなくて何より。



「ヴェルネッサさんの探知能力を、アリシエラさんの隠蔽技術が上回った、という事ですよね」


 確かにそうですが、何もそんなに嬉しそうに言わなくても。


 はて、イヴさんが妙ににやにやと。


 視線の先は、ヴェルネッサさん?



 おっと、目を閉じたままのヴェルネッサさんのお顔が真っ赤。


 さすがにそういうのはどうかと思いますよ、イヴさん。


 このシナギ、乙女の窮地を見逃すわけにはいかんのですよ。



 流派『深影』の奥義にて、


 するりとイヴさんの背後に回り込み、


 ふわりと抱き上げ部屋の外へ、


 むちりとお鼻をつまみながらひと言。



「少々おイタが過ぎますよ」


 扉をパタンと閉めました。



 部屋に戻るとベッドの上で、


 深々と頭を下げるヴェルネッサさん。


「ありがとうございます」



 いえいえ、お互い苦労しますよね。


 ふたり、顔を見合わせて、苦笑。



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