04 師匠
このように気持ちが揺れている時にこそ、
頼りになるのは我が師匠こと、カミスさん。
失礼ながら、突然お邪魔させていただきます。
「こんにちは、シナギさん」
「今日はどんなご用件でしょうか」
こんにちは、カミスさん。
実は先程アランさんのところで、"つくも神"のおふたりにお会いしてきたのです。
「素敵なご家族が増えて、アランさんたちも幸せそうでしたよね」
本当に素敵で、心を奪われる程、でしたよ。
そういえば、シスカさんの『守り手の片翼』には、
アリシエラさんから"つくも神"化の話しは来ていないのですか。
「えーと、"つくも神"化の技術に関してはけんちゃんから待ったをかけられたとのことでして」
「先日いらした時は、もっぱら擬人化談義に花を咲かせていたみたいですね」
成る程、『守り手の片翼』の擬人化。
「アリシエラさんの『"つくも神"度魔導測定器』によれば、『守り手の片翼』は剣と盾との双子の"つくも神"だそうです」
ほう。
「かなり気位が高いそうで、半端な持ち主では御主人様と認めてもらえないのだとか」
「アリシエラさんは"のじゃロリ"とか言ってましたね」
ほほう。
「そして今は、ふたりともシスカにベタ惚れ、なのだそうですよ」
「競い合うようにしてシスカに甘えているのだとか」
ほうほう。
つまりシスカさんと『守り手の片翼』たちとは、相思相愛の円満な三角関係の間柄、誠に羨ましい限りです。
それはそうと『ぶなしめじ』には、その『"つくも神"度魔導測定器』とやらは使ってもらえませんでしたが。
「えーと、測定して詳しい事が分かり過ぎちゃうと、"つくも神"化したい衝動を抑えきれなくなっちゃうとのことで、そっちも封印するそうです」
「今しばらくは想像と妄想の世界を楽しみましょう、だそうですよ」
成る程、懸命な判断ですね。
そういえば、カミスさんはあの『ゼファール』を使いこなして悪漢を退治したそうですが、
今後もばんばん『ゼファール』しちゃうって事ですよね。
「勘弁してくださいよぅ」
「本当にもうこりごりなんですよぅ」
モノカさんはとても嬉しそうでしたが。
「せめて変身しないようにしてもらわないと」
「シナギさんだって、変身しながら闘うなんてイヤですよね」
それは、変身後の姿による、としか……
カミスさんだって、粋な変身ヒーローに憧れませんか。
「あー、そうかも」
「でも、あまりそれに頼っちゃうと、自分を見失いそうですよね」
うむ、流石は我が師匠カミスさん。
チカラに溺れず己自身を鍛える方向で、という事ですね。
「そんな感じで、って、師匠はやめてくださいよぅ」
今回の訪問も大変に有意義なものとなりました。
ありがとうございます、師匠。
「もう、そんなに言うなら、これからはシナギさんのことを名前じゃなく『若先生』って呼んじゃいますからねっ」
勘弁してください、カミスさん。
やはり、親しき仲にも礼儀あり、なのですね。
調子に乗ってしまった俺をしっかりと諌めてくれるその正しき心、
まさに師匠!
「……」
すみません、何故かここに来ると楽しすぎて自分を抑えきれなくなるのです。
これではまるで、あの困ったちゃん元王女と同レベル。
自重せねば……
「つまり、シナギさんにいじめられて困ってるってことを、イヴさんとミナモさんに相談すれば良いのですね」
誠に申し訳ございませんでした、カミス様。
どうか御内密に……
人生、何事も程々が肝心、
因果は必ずや、応報するのです……




