02 談議
「シナギさんの『ぶなしめじ』は、どのような"つくも神"に成るのでしょうねっ」
さらりと訪ねてきたアリシエラさん、興味津々の面持ち。
最近、友人のアランさんのお宅に新たな御家族がふたりも仲間入り。
アランさん愛用の片手剣の化身、フルリさんと、
『ゼファーシルエット・改』なる長槍の化身、ゼシカさん。
化身と言いますか、実はおふたりとも"つくも神"
それも、世にも珍しい人造"つくも神"との事で、やはり生みの親は天才魔導具技師アリシエラさん。
もちろん東方にも"つくも神"伝説はあるのですが、人造"つくも神"とは……
西方、誠に侮りがたし。
「シナギさんと『ぶなしめじ』との絆の深さは"つくも神"化するには充分過ぎるほど、ですよねっ」
愛用する器物との距離感の近さこそが"つくも神"化の重要なポイントであるとか。
って、ちょっとアリシエラさん、近い近い、
さっきから目の前でネコミミぴっくぴくですよ。
お年頃乙女として、もう少し距離感を大事に、ですよ。
「お年頃乙女の好奇心を侮るなかれっ、ですよっ」
「いえ今すぐ『ぶなしめじ』をどうこうしようって言うんじゃ無いんです」
「そもそもけんちゃんたちから"つくも神"活動は控えるようにって、ぶっとい釘を刺されたばかりですからね」
「でもね、魔導具技師としてのサガとやんちゃ乙女の好奇心は、例えこの世界の神さまにだって止めらんないのですっ」
「もちろん、けんちゃんたちにご迷惑をお掛けしたくはありませんから、今は想像・妄想の翼をめいっぱい広げて楽しんじゃおうってことですよっ」
成る程、それなら分かります。
要は『ぶなしめじ』の擬人化、という事ですよね。
「うはっ、シナギさんのお口から、擬人化なんて言葉が聞けるとはっ」
「もしやシナギさんも、アッチ系の世界の隠れ勇者様だったのですねっ」
いえいえ、アッチ系もコッチ系も勇者も愚者も無いのです。
こちらの西方文化を学んでいた際に、小耳に挟んだ程度ですよ。
「小耳も大口もどんと来いなのですっ」
「さあ『ぶなしめじ』擬人化談議で語り明かしましょうかっ」
えーと、程々によろしく、です……
長時間に渡る活発にして不毛なる議論が繰り広げられた末、
結論がまとまりました。
擬人化『ぶなしめじ』は、
黒髪長髪で幸薄そうな細身の乙女『ナシメ』さん、
性格は、無口で引っ込み思案でお人好し、
しかし武芸者としては超一流、
特技はもちろん、隠形術からの首落とし。
って、すまん『ぶなしめじ』
何だか言いたい放題だな。
機嫌を損ねて、化けて出てこないでくれよな。