15 ころり
お店を出ると、嫌な気配は……ひとり。
動かず待ち構えている様子。
では、そちらに向かいますか。
お店から少し離れた空き地、
小汚い男がひとり。
って、何だよ、お前かよ。
すみません、ヴェルネッサさん。
俺の知り合いでしたよ。
って言うか、兄。
昔のまんまの殺気丸出し。
そんなんだから流派を継げなかったんだっての。
相変わらず本人は何も分かってないみたいだけどさ。
めんどくせえ。
俺、いま結構忙しいんで、
あんたなんかに構ってるヒマ無いんだけど。
ふん、ニヤッと笑って背中の獲物を抜きましたよ。
うん、それなりに修行したみたいですね。
まあ、ちゃんとした弟子入りとかじゃ無くて、
ノラ試合とか辻斬りだろうがな。
けりを付けるぞ『ぶなしめじ』
遺恨も禍根もここまでだ。
ヤツの獲物は、
東方の刀では無い、
南方の曲刀。
刃渡りはほぼ一緒。
て言うか、仕込みや暗器を使いたいなら、
そわそわ撫で回すんじゃねえよ。
構えは、
『深影』と『表陽』をぐちゃぐちゃに崩した様なもの。
何か小汚いな、それ。
まあ、今の俺の『深影』も褒められたもんじゃ無いけどな。
先手は、ヤツ。
得意の中段。
目を狙ってくるクセ、
直ってないぜ。
っと、左手袖口に仕込み刀、
いや、バレバレだったから、それ。
靴に仕込んでるのもな。
あっちにいた頃の俺になら効いたろうけどさ、
こっちでどんだけスゴい人たちと試合ったか、
あんたにゃ分からんだろ。
うん、もういいや、
あんたの『深影』対策、よく分かったし、
お疲れさん、
じゃ、今の俺の流儀で。
俺なんかより遥かに強い人たちとの修練、
半端なく修行になったんだぜ。
名付けるなら、
『深影』西方崩しってとこかな。
さらりと裏にまわって、
すらりと『ぶなしめじ』
ころりと転がる、首。




