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14 お茶屋さん


 今日はお仕事はお休みのヴェルネッサさん。


 御友人方とかねてより約束していたというエルサニア城下街散策。


 もちろん俺も用心棒なお供としてご一緒に。


 なにせ凄いのですよ、今日の御一行は。


 

 ヴェルネッサさん、


 セシエラさん、


 メリルさん、


 フナエさん。



 素晴らしく優雅な雰囲気を醸し出しているこの面子。


 しかも皆さま、素敵にも程があろうって感じの私服姿。


 何と申しましょうか、ただそこに佇むだけで場の空気までが華やかにしてしっとりと様変わり。


 すれ違う街の人たちも、ただただ見惚れるのみ。



 特に目的なども無く、ゆるりぶらりと散策したい、との皆さんの御希望。


 今はメリルさんお薦めのお茶屋さんにて、午後のひととき。


 商店街の表通りから離れた隠れ家的なお店、


 静かな立地と落ち着いた店構えの、実に良い雰囲気のお茶屋さんですね。


 今度ミナモを誘ってみようかな。



「ご婦人方のエスコート中に奥様を想うのはルール違反ですよ」


 はわっ、バレバレですか。


 指摘されたのは笑顔のヴェルネッサさんからですが、


 正直、今日の面子は誰ひとりとして油断のならぬ方々ばかり。


 何だか人生の見習い小僧的気分にさせられる、俺。



「リラックス、しましょうか」


 ありがとうございます、セシエラさん。


 でも、この面子のお供である限りは、心底リラックスするのは到底不可能。


 用心棒として気を抜かぬ様にするので精一杯の俺。


 エスコートなんて、百年早いですって。


 カウンターでカップを磨きながらにこにこ微笑んでいるこのお店のマスターみたいな素敵な紳士に、いつかは成れるのでしょうか。




 いや、成れまい。


 何故なら俺は、骨の髄まで用心棒。


 ご婦人方のほのかな香りより、刺客の下衆な匂いを嗅ぎつける方が得手。



「少々、席を外しますね」


 気付いているのは、フナエさんとマスター、かな。


 それでは、不肖シナギ、


 ひっそりと用心棒稼業して参ります。



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