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10 秘匿


 その晩、モノカ邸にて開催された歓迎会、とても楽しかったです。


 メネルカの魔法に興味津々の我々の目の前で、


 ヴェルネッサさんが御披露してくださった魔法の数々、


 楽しかったり美しかったり、


 それはもう素晴らしいものでした。



 戦いでは無く、人を喜ばせるための魔法が豊富に受け継がれている事、


 文化というものは、穏やかに長く続いていく事こそが肝要なのですね。



 ハルミスタさんとの魔法談議や、


 フナエさんとの作法・マナーの歴史の語り合い、


 ヴェルネッサさんも楽しそうで何よりでした。



 そして、やはり気になるのは、アレ。


 何やら異様に大人し過ぎるのですよ。


 信用とは普段からの積み重ね。


 どんなに猫をかぶっていても、油断は禁物。


 何となくアレが追い詰められた猫のように思えてきましたが、


 引っ掻かれて大怪我せぬよう、用心せねば。




 そして、ヴェルネッサさんから密かに伝えられたもうひとつの来訪理由、


 メネルカとエルサニアの、親善大使相互派遣制度に関する密使。


 メネルカ魔導国は、その強大過ぎる秘匿魔法の数々から、


 今までは特定の国との必要以上の交流を避けてきたのだそうです。


 いわゆるバランスブレイカーという事なのでしょうね。



 現女王フィルミオラ様の願いは、閉塞と停滞の状態にあるメネルカの現状を、もう少しだけ風通し良くしたい、だとか。


 もちろん危険な秘匿魔法の流出は絶対に避けながら、ですね。


 それでツァイシャ女王様の様な信頼の置ける方と穏やかに事を進めたい、と。



 うむ、国家間の行く末に関わる重大事、ヴェルネッサさんが派遣された理由も納得です。


 本当はアレがもっとしっかりしてくれてさえいれば、というフィルミオラ様とヴェルネッサさんの無念の気持ち、痛い程分かりますよ。


 まあ、俺にできる事なら何でも言ってくださいね、とヴェルネッサさんに言ってあげるくらいしか出来んのですがね。



 そんな感じで、ツァイシャ女王様の元へ向かう事となりました。


 微妙な立場となったアレの運命やいかに。



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