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第94話 酒場での失態

「キングラビットの香辛焼きとジャイアントボアの山賊焼き、ハピールの串焼きも後百二十本程追加で飲み物にぶどうジュースを」

「あ、あぁわかった……」


 セレナの追加注文を受けて店長が肩を落として戻っていったよ。

 

 顔が凄く引きつっていたし、今日の食事代はサービスなんて言わなきゃ良かったって後悔してそう……。


「うふふ。これだけ食べてもタダなんてお酒は持っていかれてしまいましたが結果的に得しましたね♪」

「う、うんそうだね。ちょっと悪い気もするけど……」


 フィアが苦笑気味に答えていた。ちょっとというか何だか気の毒にも思えてきた。


「でも本当その体のどこに入るのかな?」


 エクレアが不思議そうにしていた。セレナは小柄だし確かに不思議だよね。


「きっと胸よ! セレナってばこう見えて脱ぐと凄いし!」


 フィアが突然セレナの体型について触れた。そういう話はなんというか聞いていい物か悩んでしまう。


 うん。とりあえずスイムを撫でよう。


「スピィ~♪」


 スイムもリンゴを食べながら喜んでプルプルしている。はぁ癒される。


「……そういえばエクレアもいい物持ってるわね」

「え? ど、どうしたの突然? そんな見られると恥ずかしいってば」

「くっ、これが持つべきものの圧力なのね! どうせ私は控えめよ!」

「フィア、もしかして呑みすぎた?」

 

 エクレアがフィアに落ち着いてと宥めている。二人共、お酒も呑んでいるからね。僕は呑んでないけど。


「ちょっとネロ! あんたもやっぱりそういうのが好きなの!」


 何かフィアが僕に話を振ってきた!


「ぶどうジュースをお持ちしました」

「ありがとうございます♪」


 店員が飲み物をセレナに渡していた。彼女は食べるのに夢中でこっちの様子が見えてないみたいだ。


「どうなのネロ!」


 そしてフィアがぐいっと顔を近づけてくる。うぅ、質問が質問だけにどっちを向いていいかわからないよ~。


「えっと、そ、そういうのって?」

「恍けるんじゃないわよ! おっぱいよエクレアやセレナみたいに大きいのが好みなのかってこと!」


 うぅ、わかっていたけどそういう話なんだね。


「その、僕は大きさとか気にはしてないよ~」

「本当に? ならスイムが平べったくてもネロは愛せる!」

「スピッ!?」


 スイムが反応して驚いてるよ! なんとなく自分に飛び火したってわかってるのだと思う。


 え? でもスイムが平べったく? えっと。


「も、勿論スイムはスイムだもの! 平たいスイムでも僕は大事にするよ!」

「スピィ~♪」

 

 スイムがテーブルにのった僕の腕にすり寄ってきた。嬉しそうで何よりだよ。


「――おいネロ! 何あんたそのヌルい反応!」


 その時、テーブルをドンッと強く叩きつける音がして僕に怒りの声が飛んできた。


 見ると目の座ったセレナがこっちを睨むようにして見ていた。

 

 えっとこれって?


「ヒック。大体あんたもいい加減はっきりさせなさいよ。一体どっちが好きなのか!」


 セレナの様子が明らかにおかしい! これってまさか!?


「も! 申し訳ありませんお客様! 先程間違えてぶどう酒をお持ちしてしまって!」


 すると店員が駆け寄ってきて頭を下げながらセレナがこうなった原因を告げてきた。


 あぁやっぱりセレナ、お酒を呑んじゃったんだ――うぅ、まずいセレナはとっても酒癖が悪いんだよ……。

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