第90話 道中の戦闘
地上にはロンブリゴンそして空からはビックモスキートが三匹やってきた。
地空で挟撃された形でこれは結構危険かもしれない。
「私にお任せ! 爆魔法・爆裂破!」
フィアがすぐさま魔法を行使。ロンプリゴンが現れた地点が爆発した。
「スピィ~!」
スイムが僕の肩につかまって飛ばされないよう一生懸命こらえていた。それぐらいの爆風が僕たちを呑み込んだ。
相変わらずフィアの魔法は威力が凄い。ビチャビチャという音がしてロンプリゴンの肉片が辺りに撒き散らされた。
「ちょ、フィアいきなりムチャし過ぎです!」
「でも倒したじゃない」
セレナが頭を抱えていた。地面には大きな窪みが出来ている。だけど良かった周囲の木々への影響は少ない。
「それより空の相手はお願い!」
フィアが叫んだ。彼女の魔法は空からの相手には弱い。
「生魔法・活力減退!」
セレナの魔法でビックモスキートの一匹がフラフラになり落っこちた。セレナの魔法は味方を支援するのが多く思えるけど、敵対する相手に効果が及ぶのもある。
今の魔法がまさにそれで相手の体力を強制的に落とす。
「ハァアアァアア!」
エクレアが落ちたビックモスキートに近づき鉄槌で殴ってとどめを刺した。
これで一匹は倒したけど残り二匹いる。
「後は僕が! 水魔法・水槍連射!」
魔法で水の槍をビックモスキートに向けて放った。だけど直進的な槍は空中の相手を上手く捉えられない。
ビックモスキートは蛇行しながら槍を避け空中から僕に近づいてきた。どうやら獲物として捕捉されたようだ。
「やらせないよ! 水魔法・水ノ鎖!」
魔法を切り替え水で出来た鎖を杖から伸ばした。これもひらりと魔物が躱したけど槍と違って鎖は動きが柔軟だ。
僕は鎖を操り軌道を変えて残り二匹のビックモスキートに巻き付けた。
「「!?」」
槍には反応できたビックモスキートも鎖の動きには対応できず縛られた事で驚きを隠せないようだ。
そのまま地面に引きずり落とすと、何とか逃れようとジタバタもがくビックモスキートの姿。
「スピィ!」
するとスイムが地面でもがくビックモスキートに水を射出。着弾すると同時に燃え上がった。
あのライアー戦で見せた燃える水攻撃だ。ビックモスキートは為す術もなく燃え尽くされ消し炭になった。
「ありがとうスイム」
「スピィ~♪」
なでてあげると嬉しそうにすり寄ってきたよ。スイムも本当強くなったよね。
「これで全部倒したね」
「そうね。でもまさかこんな形で襲われるなんてセレナの言う通り油断大敵だね」
僕が魔物を倒したことを確認するとエクレアも頬をポリポリ描きながら言った。
うん。確かにいつ何がおきるかわからないし――あれ? 何だろう違和感が。
「ちょっとおかしくない?」
「え? 何がネロ?」
僕が違和感を口にすると少し後ろにいたフィアが反問してきた。妙に思えたのはロンブリゴンの事で、最初のフィアの魔法で爆散したかと思ったけど――
「キシャァアアァア!」
その時だフィアの足元がボコッと盛り上がりロンブリゴンが地面から飛び出してきた。
やっぱりか! 何か飛び散った肉片の量に違和感を覚えたけど一匹地面の中に隠れて爆発から逃れていたんだ!
「そんなまだ一匹」
「しつこいのよ!」
だけどロンブリゴンがフィアに飛びかかる寸前エクレアが横から鉄槌で殴りつけた。武芸で雷を付与していたようで殴られたロンブリゴンは電撃を浴びながら横に飛ばされていく。
そして地面に倒れピクピクと暫く痙攣した後すっかり動かなくなった。
ふぅ、これで今度こそ撃退できたね――
「あ、ありがとうエクレア~~!」
「大丈夫大丈夫。仲間だし助け合わないとね!」
フィアがエクレアに飛びついてお礼を言っていた。エクレアも笑顔で答えていたね。
「スピィ~♪」
「うん。フィアが無事で良かったよね」
スイムが安心したように鳴いた。僕も二人が無事で良かったと思う。
とは言えこの先だって何がおきるかわからないから気をつけないとね!