第89話 いざ! ノーランドへ
ギルドではフルールが対応してくれて、丁度良くノーランドへお酒を運んで欲しいという依頼が来てる事を知った。
本来酒を運ぶ予定だった商人が腰を痛めて動くに動けない状態らしいね。
「ただ馬車は貸してくれるらしいけど手綱を握れる人が必要ね」
「あ、それなら馬車無しで問題ないです!」
「え?」
最初はフルールが驚いていたけどスイムを掲げたら合点がいった顔を見せた。
「そっかスイムちゃんがいるものね。それならヨロシクね」
「スピィ~♪」
スイムも張り切ってるね。さて僕たちはその足で依頼人の下へ向かいお酒を樽ごとスイムに収納してもらった。
そしていよいよ皆でノーランドへ出発だ。
「それにしても樽ごとこの体の中に入っちゃうなんて凄いわねスイムは」
「スピィ~♪」
フィアがスイムの頭を撫でながら褒めていた。確かにスイムのおかげで助かってるよ。
「でも油断は禁物ね。お酒の匂いにつられてやってくる魔物がいるみたいだし」
「確かそれでいつも護衛を雇ってたんだよね」
フィアが警戒するよう教えてくれた。それにエクレアが反応する。確かにフルールも注意するよう言っていた。
「でも樽はスイムの中だからその心配いらないかも」
「スピィ~」
僕の肩に飛び移ってきたスイムを撫でながら三人に声を掛けた。スイムは、任せて~、と言わんばかりにプルプル震えていた。
「確かにスイムの中なら匂いは関係ないわね」
フィアが納得したように頷いた。
「う~んそれなら思ったより簡単に済むかもだねネロ!」
エクレアもフィアの意見に同調したのか僕に意見を聞いてきたよ。う~ん確かにそういう意味ではスイムのおかげで危険度は減るかもだけどね。
「だめですよ。そういう油断が危険を呼び込むことだってあるのですから」
だけどここでセレナが苦言を呈した。
「そこはセレナの言う通りかもね」
「私もちょっと浮かれすぎたかも……」
「ははっ。確かにスイムの力には助けられるけど冒険者である以上、気は抜けないよね」
セレナのおかげで弛緩した気持ちが引き締まった。やっぱりセレナみたいなしっかり物なタイプがいると違うね。
僕たちは改めて気を引き締めてノーランドへ向かう事にした。
とは言え何もなければそれに越したことはないんだけど――
「キシャァアアァアア!」
甘かった。道中で突如巨大なミミズ二匹が姿を見せたんだ。ミミズと言っても頭の部分が丸ごとくちみたいになっていて僕なんか軽く一飲みされそうな程だ。
「こいつロンブリゴンよ。あの巨大な口で呑み込もうとしてくるわ」
フィアが現れた魔物について教えてくれた。僕はこいつに出会ったことはないな。
「本来ならビックモスキートに気をつけるとこなんだけど、逆に厄介なのが寄って来ましたね」
酒樽を運んでる時に厄介なのは巨大な蚊といった様相の魔物だった。生き血を吸う魔物だけどアルコールにも興味を示す、というより酒を呑んだ人の血が特に好物なので酒の匂いを感じると飲酒した人がやってきたと思い込んでやってくる。
だけど、結果的に出てきたのはこのミミズのような、て!
「大変よ空からビックモスキートもやってきたわ!」
「スピィ!?」
フィアが緊迫感の篭った声を上げる。
指で示した方から確かにビックモスキートが三匹近づいてきていた。つまり合計五匹の魔物を相手しないといけないのか――