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第71話 ガイの忠告

「グゥウゥウ!」


 酸によって畑は壊滅しガルは顔を抑えながらうめき声を上げていた。鍬も手放しているね。


 全身が焼け爛れていて見る影もない。かなりの大ダメージを与えたのは確かだ。


「ネロ! 終わったのね」

「うん。畑も消え去ったよ」

「――そいつが生きていても消えるのか」


 ガイが言った。どうやらガイはこの男が死んだら畑が消えると思っていたようだけど、僕の酸性雨の効果なのかそれともガルが畑を維持できる状態ではないからなのか、既に畑はただの地面に戻っていた。


「で、ネロそいつどうするんだ?」

「え? どうするって?」

「チッ――」


 聞かれて返答に困る僕を見て、ガイが舌打ちし倒れているガルに近づいていった。


 その手には剣がしっかり握りしめられている。


「ガイどうするつもり?」

「首を刎ねる。こんな奴野放しに出来ねぇだろうが」


 そう言いながらガイが手に持った剣を振り上げた。僕は思わず声を上げる。


「ま、待ってそいつにもう戦う力はないよ!」

「――予想はしていたがやっぱりテメェは甘ちゃんだな」


 剣を振り上げたままガイが顔だけを僕に向けて言った。苦虫を噛み潰したような顔つきで更に言葉を続ける。


「大体妙な力を持った連中だ。始末しておくにこしたことはねぇだろうが」


 ガイが言った。言ってることはわからなくもないし僕は甘い――そうかもしれないけど……。


「ガイ。その連中は処刑リストを持っていた。黒い紋章もそうだけど組織立って動いている可能性もあるんだ。それなら生きたままギルドに引き渡した方がいいと思うんだよ。情報も必要だし」

「…………クソが。おい! 何か縛る物あるか!」


 良かったガイが思いとどまってくれた。一緒に来ていた冒険者が縄を持ってやってきてそれで縛り始める。


 ガイの言うこともわかる。だけどこいつらの情報が必要になるかもしれないのも事実、いやそれも確かに言い訳かも知れないし甘いのかも、しれないけどね――


「これでもう動けねぇだろう。言っておくがお前の言うことにも多少は! 少しは! 何となく! 一理あるかもしれねぇと思っただけだからな! それにお前が甘いのも確かだ。その甘さが命取りになるってことも覚えとけコラッ!」


 詰め寄ってきたガイに諭されてしまったよ。凄く機嫌が悪そうにも見える。


「――ま。その甘さに俺は救われたのかも知れねぇけどな」


 あれ? 背中を見せたガイがまた何かボソッと呟いたような?


「何か言った?」

「い、言ってねぇよクソが!」


 結局怒られたよ……。


「本当にガイは素直じゃありませんね」

「スピィ~」

「あはは。あなた達も大変よね」


 ため息を吐くセレナにエクレアも苦笑いだった。そんなセレナはスイムを撫でてくれていた。スイムは癒やしだね。


「――実は一つ気になる点があるんだよね。ガルは仲間がまだいるような事言っていたんだ」

「そうね。それにまだ町で人が暴れてる原因が掴めていないし――」

「た、大変だーーーー! マスターがギルドマスターが、ギャァアァアアア!」


 その時だ、冒険者と思われる男性が叫びながらやってきて、直後バチッバチッ! という音と共に吹っ飛んでいった。


「フゥ、フゥ、フゥ、ウ、ウガアアアアアアァアアァアアア!」


 建物の陰から見覚えのある豪傑が姿を見せた。それはサンダース――でも明らかに様子がおかしい。


 以前から迫力があったけど、今の形相はどこか怪物じみている。


「ちょ。パパどうしたの!?」

「駄目だ! 今のマスターは普通じゃない! 完全に乱心している!」


 やられた冒険者とは別の男たちが強張った顔で叫んだ。


 これってマスターも暴徒と同じ状態になったということ?


「マスターだけじゃねえ! 来るぞ! 正気を失った冒険者達が!」


 更に別の誰かが忠告するとほぼ同時に四方八方から血走った目をした冒険者がぞろぞろと姿を見せた。折角ガルを倒したばかりだというのに休む暇もなしだよ――

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