第67話 処刑リスト
ライアーを倒した後は当然ライアーを拘束した。ロープは近くから見つけてきた。
ライアーは嘘を信じると本当になるという力があるので口も猿轡を噛ませたよ。
「後は一応荷物もチェックしておかないと――」
ライアーの服や袋を確認する。袋は見た目よりも多くの物が入る魔導具だった。
戦ってる時に見せてきた魔石っぽいものや玉があったけど、他に気になるものとして砕けた人形が一つあった。
「これって身代わり人形じゃ……」
「身代わり人形?」
フィアのつぶやきが気になった。僕は初めて聞いた代物だったからだ。
「ダンジョンでたまに手に入る人形で、持っていると使用者がやられそうになった時にどんな攻撃からでも一度だけ身代わりに攻撃を受けてくれるの。その代わり役目を終わったら見ての通り砕けるんだけどね」
「あ、そうか。もしかしたら僕が重水弾を当てた時――」
正直あの魔法がどうして通じなかったのか疑問に思っていたんだけどこれで得心が言ったよ。
「やっぱり本物の道具も混ぜていたんだね。抜け目ない相手だったよ」
「スピィ~……」
「そういえばスイムも危なかったよね」
エクレアがスイムを撫でながら言った。確かにスイムはライアーの電撃を受けている。
実はあれも不思議な点の一つだ。単純にスイムが純粋で相手の嘘に騙されないから通じなかったのかなと思ったけど、ライアーはスイムに電撃が通じなかったことに随分と驚いていた。
考えてみると理解は出来る。ライアーの言っていた攻撃の通じないといった嘘はスイムには通じない。言葉だけの説明でしかなかったからだ。
だけどライアーが見せた電撃は一見すると本物だった。それはスイムだって理解出来たはずでそれならスイムにも影響が出てもおかしくなかった。
だからライアーは驚いていたんだろうね。もっともただの憶測だけど。
他には何かあるかな? と袋の中を弄ってみる。この手の袋は通常持ってる人間が出したいものを念じるだけで出せるんだけど、それがわからない場合は適当に中を漁るしか無い。
「あれ? これって?」
「紙束?」
「スピィ~?」
そう袋からは何かが記された髪の束が出てきた。人相書きと一緒で上に文字。これって――
「処刑リスト……」
フィアが細い声で呟いた。緊張感の感じられる声だった。確かに上に処刑リストと書かれている。これはつまり彼らがこのリストの人物を処刑する為にやってきたことを意味する。
「ちょ、ちょっと待ってこれって! パパじゃない!」
「それだけじゃないよ。信じられないけどエクレアの名前もある」
「スピィ!」
紙を一枚一枚捲っていくとサンダースとエクレアの事が記された紙もあった。エクレアに関しては情報がなかったのか人相書きはなかったけどサンダースの娘という情報が書かれていた。
「…………」
そんな中、フィアが三枚の紙に真剣な目を向けていた。
「どうしたの?」
「これ――」
フィアが見せてくれた紙にはガイとセレナ、そしてフィアの情報が記載されていた。つまり――
「勇者パーティーが狙われている!」
「うん…………不味いよ。きっと今頃ガイも……」
「それなら急いで探さないと!」
「え?」
思わず声を上げるとフィアが目を点にさせた。
「探してくれるの?」
「当たり前じゃないか。ガイとは元々パーティーを組んでたんだし」
「スピィ~」
フィアの問いかけの意味はちょっとわからなかった。ガイやセイラが危険かもしれないんだしそれならぼやぼやしてられない。
「……ネロはガイのこと恨んだりしてないの?」
「へ? 何で?」
「だって追放したし」
「それは、仕方ないよ。当時の僕は確かに戦いの役には立たなかったしね。だからってそんなことで恨んだりしないよ」
むしろそう思われていたことが意外だ。
「フフッ、そうだよ。ネロってこういう男なの。ま、だからこそ私もパーティーを組みたいと思ったんだけどね」
「スピィ~♪」
エクレアとスイムがそう言って僕を評価してくれた。何だかこそばゆいな~――




