第62話 明かされたライアーの紋章の力
ライアーの顔に動揺が生まれた。そしてフィアは彼の力が何か確信している。
「今私が言った魔法は真っ赤な嘘。そんな魔法は存在しないのよ」
「存在、しないやて?」
フィアが告げた真実にライアーの眉がピクリと反応した。
「そうよ。そして私はネロとエクレアにもそれを伝えておいた。だからあんたの言ってることが嘘だとわかり魔法も発動しなかった。この事から導き出される答えは一つ!」
指をビシッと突きつけフィアが言い放つ。
「あんたの魔法は嘘を真実に変える力よ。ただし条件付きでね」
僕の話を聞いたフィアの答えがそれだった。そう考えれば辻褄があうこともあった。
なぜならライアーは僕たちが見せた魔法以外については自ら事細かくどんな魔法か説明していたからだ。
冷静に考えて見れば何故わざわざそんなことをと思うけど、そこでフィアが導き出したのが奴の能力の条件――それは嘘が通用した時のみの真実化だ。
つまり僕たちがライアーの嘘を僅かでも信じたからこそ、恐らく本当かもしれないと思った程度でも、その力は発揮されるのだろう。
「なるほどなぁ……」
「もう観念することだね。それにお前の力にはもう一つ欠点がある。それはスイムのように人の嘘が通じない相手には効果が及ばない」
僕はフィアに追随するようにライアーに言った。ライアーは真剣な顔でこっちを見ている。
「くくっ、はっはっは。なるほどなぁ。やるやないか。褒めたるわ。確かにわいの紋章『正直な詐欺師』の力は大体そんなところや」
え? あっさり認めた?
「認めたってことは観念したのね」
「スピィ」
エクレアが鉄槌を構えながらライアーに向けて言った。スイムも力強く鳴いている。
「観念? 馬鹿を言わんといてや――」
そう口にしたかと思えばライアーが腰に吊るした袋から黒い玉を取り出した。
「いくで!」
そして玉を僕たちに向けて投げつける。何だ? 一体何のつもり?
「逃げないでえぇのか? それは魔法の爆弾やで!」
「は? あんた馬鹿? その能力はもう見切って――」
「確かにわいの力は嘘を本当に変える。せやけど、それが魔法の爆弾じゃないと本当にいい切れるんか?」
「え?」
それを聞いた時、皆の顔が強張った。これは――まずい!
「水魔法・水の盾!」
とっさに水で盾を生み出し玉は盾にぶつかりそして爆発した。
「ハハッ、よう防いだもんやな」
ライアーが笑い出す。いまのは危なかった。
「まさか、本当に爆弾? それともこれは奴の力の影響なの?」
「わ、わからないけどごめん。私ちょっと本当かもと思っちゃった」
「それは僕もだよ。嘘だと思いきれなかった」
「そ、それは――」
フィアも罰が悪そうな顔を見せる。きっとフィアも僕たちと同じ気持ちなのだろう。
「はは、まだまだいくで」
ライヤーは今度は大量の赤い石を取り出して握りしめた。
「これは大爆発を引き起こす危険な魔石や。お前たちだって知っておるやろ? 魔石の中には厄介な効果が宿った特殊な物もあることをや」
それは――確かに聞いたことはある。そういった危険なタイプは事前にギルドが教えてくれるわけだけど。
「これがその魔石や! この魔石にはこのあたり一帯を吹き飛ばすほどの威力やで。さっきの魔法の爆弾とは大違い、せやけど。これはもしかしたら嘘かもなぁ。せやけど本当だったら――どないする?」
ニヤッと笑みを深めてライアが頭上に魔石を放り投げた。これが本当だったらとんでもない爆発が――
「答えは一つよ! 爆魔法・鳳戦爆火!」
フィアが魔法を唱えると空中で爆発が発生した。しかも爆発した場所から更に小さな火球がばら撒かれ魔石に当たると連鎖的に爆発が起きる。
これによって魔石は地上に落ちること無く空中で処理された。
「これで問題ないわね。嘘だろうと本当だろうと全て破壊すればいいんだから」
「チッ!」
フィアが言い放つとライアーが悔しそうに舌打ちした。そしてそこに隙が生まれた。このチャンスを逃さない!
「水魔法・重水弾!」
「し、しもうた!」
魔法が発生しライアーに向けて直進そしてまともに命中した!
「これは、やったわね!」
「スピィ!」
エクレアとスイムが興奮気味に叫んだ。これで決着がついたか!