第61話 フィアの考え
もしライヤーの言ってることが本当なら僕たちにはどうしようもない。攻撃が一切効かない障壁なんてどう突破していいのかと悩むところだ。
「ほならそろそろ覚悟を決めて貰おうか」
「くっ、そんなの信じない! 武芸・雷装槌!」
鉄槌に電撃をまとわせてエクレアがライアーに迫る。
「はぁあぁあああぁ!」
そして鉄槌で殴る殴る殴る! だけどライアーは涼しい顔で全く動じていない。
「僕だって! 水魔法・水ノ鞭!」
伸びた水の鞭でライアーを打つ――だけどやはりライアーには通じていない。
「無駄やと言ったやろ? いい加減諦めるこったな。ほな行くで」
ライアーが構えを取る。また何か技か魔法を使う気か!
――バチッ!
「――チッ!」
その時、ライアーが大きく飛び退いた。今攻撃に移ろうとしていた筈なのに確かに退いた。
でも、どうして? それに今――
「キュピ~!」
するとスイムがライアーに向けて飛び出した。
「待ってスイム危ない!」
駄目だスイムは戦える力なんて!
「スピッ!」
思わず声を張り上げた僕だけど、鳴き声を上げたスイムから液体が飛び出ていきライアーに向けて飛んでいった。
何だろう? 妙にドロッとしてそうな――
そしてライアーはまたも後ろに飛び退いた。今度は間違いない。そしてスイムの撃った液体が地面に掛かると同時に何と液体が燃え上がった。
「スイムこれって?」
「スピィ~!」
スイムが湯気を吹きながらプルプル震えていた。怒ってるのかも。それにしても燃える液体なんていつの間にそんな技を覚えていたのだろう。
「凄いわスイム。こんな力があったのね」
「可愛いだけじゃないのね」
「スピィ~♪」
エクレアとフィアに褒められてスイムが喜んでいる。
だけど、今のはやっぱりおかしい。ライアーは間違いなくスイムの攻撃を避けた。
そして僕とエクレアの攻撃の時もだ。最初は自分で言っていたように僕たちの攻撃が効いてないようだった。
だけど途中で明らかに怯んだ。そこには当然理由がある筈だ。
「二人共ちょっと聞いて欲しい!」
自分だけで考えていても答えは見いだせない。だけど三人で考えれば。僕はかいつまんでこれまでのことをフィアとエクレアにも説明した。
「何や三人でこそこそしとるようやけど、わいがそんなのいつまで待ってると思うなや武芸・雷撃拳!」
ライアーが雷の拳で地面を殴る。電撃が伸びて来る! するとまたもスイムが前に飛び出して電撃を一身に受け止めた。
「やったわけったいな魔物倒したで!」
「スイム!」
ライアーが勝ったかのように声を上げる。僕も思わず声を上げた。だけど僕の目に映るスイムは――
「スピィ~?」
だけどスイムは平然としていた。何かあったの~? と言わんばかりの様子だよ。
「ど、どうなってるのや!」
「残念だったわね。そしてこっちの準備も整ったわ! いくわよ爆魔法・獄炎嵐昇天舞!」
フィアが魔法を行使した。だけど、何も起こらない。
「――何やそれ? 何もあらへんがな」
「くっ、しまった魔力が足りないわ! これまでの魔法で必要な魔力が――くそ! 巨大な爆炎で相手を飲み込む最終手段だったのに!」
フィアが膝から崩れ悔しそうに地面を殴りつけた。ライアーの口元が大きく歪む。
「それは残念やったなぁ。ま、どっちにしろわいには利かへんで。そしてもう一つ絶望的なお知らせや。実はわいもその魔法――使えるんや。当然より強力なもんがな! 行くで! 爆魔法・獄炎嵐昇天舞!」
そして意気揚々とライアーが魔法を行使! その直後大爆発が――起きなかった。そう何も起きなかったんだ。
「な、なんやて? どないなっとんねん!」
「はは、あはは! 本当見事に引っかかってくれたわね」
そしてフィアが立ち上がりしてやったりと笑顔を見せた。うん、やっぱりフィアは賢いね。これであいつの力がどんなものか掴めたよ――




